023話 嫌な予感
2-2.嫌な予感
楽しく森にピクニック。空気がうまい。
今日、俺は一人で森を歩いている。門番の人にはいつも通り〝薬草採取〟を理由にしている。
でも、本当は『精霊採取』です。さぁ!今日もたくさん精霊達と仲良くなって、屋敷にご招待いたしましょう!
いや~大量、大量♪
精霊のみんなと一緒に少し広げた草原でのんびりとしています。うん、パン屋のおばちゃんのサンドイッチ美味い。
この森には、もちろん魔物もいる。しかし、この場所は乙女ゲームでも序盤の森。凄く弱い。初級魔法の1・2発で倒せてしまう。
それにしても2年が経った訳だけど、未だに〝ルッソ〟と〝ルード〟のキャラ名についてが思い出せない。
絶対に、この乙女ゲームに登場してきたんだよ。すっげー聞き覚えがあるんだよ。でも思い出せない。何だっけかなぁ。
そんな事を思いながら、次は卵サンドをもしゃもしゃ食べる。卵の味付けが素晴らしい。焼き加減も良い具合で、ふっくらしている。
サンドイッチはハムとかカツとか肉類も美味いけど、卵が好きだなぁ。子供になったから味覚が変化しているのだろうか?
しまった!飲み物、水しかない。サンドイッチといったら紅茶だろうが!ああぁ~、俺のアホたれ。水の精霊が紅茶を出せるようになれば良いのになぁ。
そんな感じで、今日も〝ルッソ〟と〝ルード〟について俺は深く考えたのだが思い出せなかった。
ピクニックを楽しんだ俺。町への帰り道で、いつもと違う出来事が起きた。
「痛い、痛い。髪を引っ張んなよぉ」
急に風の精霊達が俺の髪を引っ張りだした。普段は幻影みたいに触れないのに、なんで精霊は俺に触れるんだ?
そんな事を思いながら、風の精霊達が指さす方へと歩いて行く。
微かに何か匂ってきた。今の俺には慣れてしまった匂い。
血の匂い
・・・おいおいおい、風の精霊さんよ。ちょっと待とうか君たち。ドコ行く気?
まさか、この匂いの元に行く気じゃねぇだろうな?また厄介事が起きそうな予感がプンプンするのだが。
俺の細やかな抵抗も、髪を引っ張る量が増えた事で失敗に終わる。
「やっぱりか・・・・・」
俺が見たのは、木に横たわる一人の男性。
とにかく黒い。真っ黒な服に真っ黒なフード。しかし地面に流れた血は、赤く土を染めていた。
お~い、精霊さんたちぃ?俺、この衣装知ってんだけど?乙女ゲームにも登場してきたんですけどぉ?
まぁ、今はそれよりも確認だ。俺は、今はもう慣れてしまった人の脈を測る事にする。
・・・弱いが、まだ生きている。
さっそく、お得意の回復魔法。さすがはヒロイン聖女様の実力。顔色が、かなり良くなった。
余裕ができたので、もう一度この横たわる男性を見てみよう。
顔のフードをどかす。よし!知らない顔だ。という事は乙女ゲームの登場人物ではない可能性も・・・いや、ダメだ。この人の職業からして、攻略キャラとの関わりがある可能性が高い。
どうしよう・・・・この人、暗殺業の人だよね?