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021話 ※クリス※ Prt.2

2018.4.21 クリス視点を追加しました


 1-21.※クリス※ Prt.2



 ※ ※ ※ タジルの仲間 クリストファー 視点 ※ ※ ※



 「ミネル君かぁ。不思議な子でしたね」


 冒険者になって5年。俺とトリアは今年で20歳となります。


 冒険者の依頼を一緒にする仲間も2人増えました。まず1人が今年18歳になるタジルマース。俺達はタジルと呼んでいて、一番若いですがチームのリーダーをしてもらっています。理由は簡単で、一番強いからです。


 そして、もう1人の仲間がジルロイド。俺達はジルと呼んでいて、一番身長が高く、大きな大剣を背に装備しています。彼は意外にも料理が得意なんですよ。



 「ミネルは大丈夫だろうか。やっぱり王都に無理やりにでも連れて行った方が良かったんじゃあ・・・」


 王都への馬車の中、仲間のタジルが落ち着かないでいます。冒険者ギルドから頼まれた緊急依頼が無事に終わり、リナリクトの町を俺達の専用馬車で離れる事になりましたが、ずっとこの調子です。



 その理由は、俺達がリナリクトで出会った、とても特徴的なピンクの髪をした男の子。名前は『ミネル』というらしく、魔法の才能がズバ抜けている才能溢れる子です。


 性格は面白い子で、寝ているタジルの顔に落書き等をしていましたね。それも油性ペンで。


 あとは、たまに大人みたいな言葉で話す事もあり、不思議に思った時があります。・・・不思議といえば、よく何もない空間をジッと見る姿も見掛けました。そして急に拍手をしたりと、俺達は何をしたいのだろう?と思っていました。小さな子は不思議な事をするのですね、勉強になりました。



 そして今回の依頼で、そのミネル君について驚くべき事が発覚します。それは、討伐作戦が行われていた時に対峙した強敵からの言葉です。



 ___もうすでに〝聖女〟が生まれていたのか



 あの黒いローブを着た骸骨は、確かにそう言いました。


 『聖女』


 この国の王都では、魔王軍に対抗できる『聖女』と『勇者』という存在を血眼になって探しています。魔王軍の動きが活発になる前に、どうしても必要なのだとか。


 聖女は、皆を守り癒す存在。


 勇者は、皆を救い導く存在。


 その魔王を倒す為に必要な存在を、今か今かと待っている状況だと王都で聞いた覚えがあります。そして、その存在は今もどちらとも見付かっていないとも。


 あの強敵はミネル君の事を〝聖女〟と呼びました。そして、そのミネル君本人も___



 ___光の女神様から加護を頂き、光の精霊達に守られている聖女に?



 何故、聖女が光の女神様から加護を頂いていると知っているのです?


 何故、聖女が光の精霊達に守られていると分かるのです?


 それはまるで、自分自身が聖女だと言っているような言葉でした。もちろん、敵もミネル君も真実を言っていたかは不明です。しかし、あの雰囲気は嘘ではないと俺は思っています。なので、その事についてトリアのスキルを使い真実を知ろうとしましたが、ミネル君は頑なに黙ってしまい聞き出すのは不可能でした。


 なので私達は、依頼が達成した後で話し合う事になりました。




   ○ ● ○ ● ○ ●




 リナリクトの町にある小さな酒場。その場所で、俺達はお酒を飲みながら相談する事にしました。それぞれ注文した飲み物が届き、乾杯をした後に一気に飲み干す。それが冒険者にとって最初の酒への礼儀です。


 今、リナリクトの町には緊急依頼の為に集まった冒険者達が多く居ます。つまり、この酒場にも沢山の冒険者が仲間と共に酒を飲みながら談笑しています。これだけ騒いでいる場なのですから、俺達の会話は他の人には聞こえないと思いました。


 「はぁ~、美味い!給仕のお姉さ~ん!もう一杯くれぇ!」


 タジルの注文に遠くに居た給仕の女性が「はーい」と返事をして、調理場へと入って行きました。


 「それで、タジル。どうするのよ?ミネルちゃんの事」


 「そ~だなぁ、俺等は王都へ戻らなくちゃいけないから心配だ。是非、持って帰り___連れて帰りたい。後でもう一回、俺から聞いてみるかぁ」


 俺達が、いずれ王都の拠点へ戻らなくてはいけません。その事は、すでにミネル君へも伝えてあります。タジルはミネル君に、一緒に王都へと聞いてみたのですが断られてしまいました。


 「それで、どうします?ミネル君が『聖女』かもしれないという事について」


 「・・・・」


 あの緊急依頼が終わった後、この町では〝ある噂〟が広まっていました。


  『光の聖女様が現われた』


 発信源は間違いなく、今回の緊急依頼で招集した冒険者達。あの時、敵だったローブ姿の骸骨が話した言葉を沢山の冒険者が聞いてしまい噂となりました。


 その〝聖女〟がミネル君だとはバレてはいません。その日、ミネル君はずっとフードを深く被っていましたから。ですが、その噂はもう町中に広まっています。そして、その〝聖女〟の噂を聞いて教会総本部が動く可能性だってあります。


 「ギルド長は秘密にするみたいですね。ミネル君の回復魔法は強力でしたので手元に置きたいのだと思います」


 教会総本部が動いたとしても、あのギルドマスターなら知らぬ存ぜぬを貫けるでしょう。意外にも権力者の一人ですから。


 「・・・・あのオッサンらしいな」


 はっ、と何か不満気に言うタジルは、再度注文して女性店員が持って来てくれたお酒を一気に飲み干しました。


 「俺達はどうしますか?もしも、ミネル君が本当に『聖女』なのだとしたら、国民の義務として王国へ___っ!?」


 俺が話している途中、タジルが一瞬で取り出したナイフを俺の喉元で止めていました。やはり早いですね。そして、やはり怒りますか。分かってはいましたが。


 「クリス、死にたいのか?」


 「・・・・すみません、先程の言葉は撤回します」


 タジルの目を見て、本気では無いと分かりました。彼は、仲間だと思った人物には甘いですからね。しかし、今のは俺が悪いです。すぐに両手を挙げて謝罪しました。


 タジルは、ミネル君と出会って変わりましたね。


 今までのタジルは、此処まで執着心に捕らわれた事なんてありませんでした。一番気に入っていた武器さえも、孤児院の為にと売り払うような人です。そんな彼がミネル君と出会い、初めから保護欲が全開でしたからね。


 あの子と出会って、タジルの何かが変わったのですが。さて、それが良かったのか悪かったのか。



 「ミネルの事は極秘とする。これはリーダーとしての命令だ」


 「分かりました」 「・・・ああ」 「了解よ」



   ○ ● ○ ● ○ ●



 結局ミネル君はタジルの説得には応じず、俺達に着いて来る事なくリナリクトの町に残りました。さすがに森で暮らそうとしているのは皆で大反対をしたので、俺達がリナリクトに持っている拠点を貸す事にしました。あの屋敷の管理を任せる事が、その宿泊費としてです。


 町に残ることを決めたミネル君をタジルは心配して、いつまでも連れて行きたがっていましたが、ミネル君の気持ちを尊重する気持ちで我慢しています。まぁ、町から離れた今、保護欲が再発していますが。


 「ミネル君は4年後に王都へ来ると言っていましたから、大人しく待ちましょう」


 「そう、なんだが・・・心配だ」


 「ミネル君は、しっかりとした子だと思いますよ。なので大丈夫です。冒険者ギルドのマスターも気に掛けてくれるでしょう。それに、この辺りに居る魔物も弱いですから安全です」


 「4年・・・4年かぁ・・・」


 「まぁ、今回の依頼では魔物達が集まるという非常事態が発生しましたが、それは稀です。その討伐作戦で最前戦にまでトコトコ歩いて来るミネル君を心配に思う気持ちは分かりますけどね」


 「だぁあああ、全然〝しっかり〟してねえじゃねぇか!引き返せ、ジル!やっぱりミネルを王都へ連れて帰ろう!」


 「落ち着いて下さい、タジル。ミネル君の気持ちを尊重するのでしょう?」


 「ぐっ・・・」


 「俺達、冒険者にとって4年なんてすぐですよ。それまでは、4年後の成長したミネル君を楽しみに待たれては如何です?」


 俺の言葉に、どうにか納得してくれたタジル。「ちょっと寝るわ」と言って寝始めました。やれやれ。


 どうやらタジルは、ミネル君を弟のように思っているみたいです。タジルも元々孤児ですから、母親に捨てられたミネル君の事を思う気持ちは分かりますけどね。



 ミネル君・・・か。あの子は確かに男の子でした。皆で確かめましたから間違いありません。


 なら、なぜ聖〝女〟なのです?


 正直、それは分かりません。しかし、少しの期間でしたが一緒に居て良い子だとは分かりました。人が傷付き苦しんでいたら助けに来る、とても優しい子だと。今は、それが分かっていれば良いのかもしれませんね。


 4年後、また会える事を楽しみにしてします。ミネル君。



   ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




第一部 終わりっす

まだまだ 続きます

よろしくお願いします m(_ _)m

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