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002話 森暮らしのミネルソフィ


 1-2.森暮らしのミネルソフィ



 あった。あったよ、俺のおチン○ン。前よりも小さくなっているのが泣きそうになったけど、とりあえず良かった。


 先程、俺の前に居た女性は、姉さんから強制プレイを命じられた〝あの乙女ゲーム〟での登場人物だ。ゲームの主人公であるヒロインちゃんの母親。キャラボイスも一緒だったし、この場面は乙女ゲームでヒロインちゃんが捨てられた始まりなのは間違いないと思う。


 さてさて、これからどうしたものか。混乱していた感情と勝手に動こうとした体は、今はちゃんと自由に動かせる。


 これは乙女ゲームの始まり。ゲームでは、ただのムービーとして流れた場面。そして俺は、あの乙女ゲームの世界に居るのだろう。しかもヒロイン役で。男なのに。


 こういうのネット小説で見た事あんな。異世界転生ってやつだろう?あははっ、本当にあんだな、こんな事。



 ・・・ん?ちょっと待て。〝転生〟?〝転生〟だと?え?俺、死んだのか?



 待て待て待て待て、俺。落ち着くんだ。記憶は・・・・死んだ記憶が無ぇな。最後の記憶は、普通に家で受験勉強してから寝た記憶だけ。


 んで気が付けば、いきなり女性に〝いらない〟と言われた。中学3年生の男子になんて事を言うのん?女性にそんな事を言われたピチピチ10代である男の純情を考えておくれ。 



 じゃなくて、えっ!?俺、死んだのか!?マジで!?



 とりあえず、ありきたりだが頬を引っ張ってみた。うん、痛い。残念ながら夢では無い。


 まぁ、俺が死んだかは後で考えよう。今、生きてるし。それよりも、だ。今の俺は母親に捨てられた子供。これからの生活についてを考えなくてはならない。


 この場所は町の中にある薄暗い路地裏の奥。ちょっと臭い。


 確かヒロインちゃんは、これから町を徘徊して孤児院のある教会前で泣き疲れて倒れる。そして保護されたんだよな?


 俺?しないよ、そんな事。


 そんな事したら、数年後に父親の関係者がヒロインちゃんを引き取りに来るから。そうなると乙女ゲームを進行する事になってしまう。誰が孤児院なんぞに行くものか。


 ヒロインちゃん役の俺が男である事からして、この乙女ゲームはもう最初っから狂っている。バグったゲームに乗る行為をすれば、どうなるかが怖い。


 そもそも、なんで俺がヒロイン役で男なのん?あ、別に女になりたい訳じゃないです。男にしてくれて、どうもありがとう神様!


 いや、待て。もし神様がいるんなら説明してもらえないですかね?この状況。とりあえず一発だけ殴るくらいなら許されると俺は思いますが、どうですか?




 おっと、考えがそれてしまった。違う違う、これからについてだよ。


 まずは落ち着いて考えよう。脱線せずに注意しながら。


 俺は自分の体を見た。確かゲーム設定では6歳・・・だったかな?髪は短いが見る事は出来る。やっぱり、ピンク色。このピンク、鮮やか過ぎて目立つよな?どっかに頭を隠せる布とか落ちてない?


 とりあえず、ボロボロのズボンにあったポケットに手を入れた。


 持ち物は・・・何も無いな。酷いッス、ヒロインちゃんのお母さん。無一文で我が子を路地裏に放置ですか?大魔王の姉さんから、マジでボコボコにされて下さい。


 えーと、此処は確か乙女ゲームでの始まりの町だったよな?名前は『リナリクト』だったかな。人口もそれなりに居て、平和な町という設定だったはず。


 だから母親は自分の子供を此処へ捨てたのか?誰か拾うだろうと?無一文で?生きて欲しいのか、死んで欲しいのかどっちなんだよ。


 ま、いいか。どっかに売られるよりかは、だいぶマシだ。確か、このゲームは奴隷制度とかもあったしな。それに俺は今、体は6歳だが、精神は15歳だからな。


 ・・・よし。体は子供!頭脳は思春期中学三年生!その名は名探t___



   ____大人な諸事情だ しばしお待ちを_____



 ・・・著作権的なセリフを言ってしまった。すんまそん。


 しかしだ、この状況でこのセリフを言うのは当たり前だと思う。この行為は、もはや礼儀に値すると言って良い。恐らくは日本人の約9割近くは俺と同じセリフを言ってしまうと確信している。


 さ~てさて、これからかぁ・・・・ぶっちゃけ俺がヒロイン役なら一人で生きていける気がする。なんたってゲームの主人公役だし。


 この乙女ゲームの最重要人物であるヒロインちゃんの名前は『ミネルソフィ=ターシア』。


 彼女は魔法の全属性が使え、しかも光属性が主軸。この世界では光属性と闇属性は凄く珍しい。まぁ、俗に言う主人公設定だな。


 でも、その設定が今の俺にとっては助けになる。試しに右手を前に出して唱えてみた。



 「・・・【光よ・照らせ ≪ライト≫】」



 俺の前には小さな光の球が数個現れて宙に浮いている。よし!


 とりあえず光魔法が使える事を確認した。これがあれば大丈夫だ。この乙女ゲームをやり込んだだけあって呪文とかも大丈夫そうだし。


 ・・・あ、ごめん。やっぱ嘘。上級魔法はちょっと記憶が怪しい。



 でも確認は完了した。そうとなれば、やる事は一つ。『森の中で平和に暮そう大作戦』だ!



 乙女ゲーム?俺の知った事じゃないね!俺はヒロイン役だが、男だから関係ねぇよ!だったらゲームとは全く関係が無い森の中で暮してやる。わっはっはっはっは!ざまぁみろ!


 俺は笑いながら町の出口である門の方へと走って行った。




 だけど、ここで最初の難問。この町って、それなりに大きいから壁に囲まれている。だから、どうやってあの門を通り抜けて外に出ようか考える。難問だ、門だけに。あ、はい、ごめんなさい。


 俺は、物陰に隠れてこっそり町の出口である立派な門を見る。やっぱり居るよな、門の見張りをしている門番さん。まぁ、治安の為には当たり前か。さて、あの門番の人達に気付かれずコッソリ出て行く必要がある。


 そこで注意しなければならないのが俺のこの髪!〝ピンク〟ってなんだよ。しかも、すんげー鮮やか。蛍光色に近いんじゃないか?と思うくらいに目立ちまくり。


 たとえ陽が沈み周りが暗くなろうとも目立つ髪では見付かってしまう。どうしたものか・・・


 ルパ○3世みたいに下水道からコッソリ?うん、絶対に嫌だ。



 考える事、数分。良い案が出ない俺にチャンスが訪れた。


 門を通ろうとした商人の馬車に、何やら問題が発生したみたいだ。どうやら馬が急に暴れ出し、荷が崩れたようだ。馬達を大人しくさせようとする門番達に隙ができる。


 今しかない。そう思った俺は門まで走っていき、通り抜ける事に成功した。門番が二人だけだったのが助かった。ありがとう、見知らぬ馬よ!今度、見かけたらニンジンでも贈呈しよう。



 俺は笑いながら両手を開き、町から離れて森の中へと走って行った。脱獄成功である!俺は自由だ!ではははは~!




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