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019話 4年間のお別れ


 1-19.4年間のお別れ



 ・・・みんな。おれ・・おれ・・・もう、お婿さんに行けないかもしれません。



 あの死霊王との戦いから三日が経ちました。ナレーション様が言ってくれなかったので自分で言います。そして俺達は今、もうリナリクトの町に戻って来ていた。


 あれから大変だったんだ。うん、いろいろ・・・人様の服を剥ぎ取り、丸裸にして「やっぱ男だよな」とか言ってタジル変態団が頷いて納得していた。見れば分かるだろう!顔とか幼くとも男だと分かるだろうが!俺の何処が女に見えるよ!?



 あの村でも、帰って来たリナリクトの町でもトリアさんの質問攻めは大変だった。しかし、俺は気付いた。前は嘘がバレちゃうという事でバカ正直に答えてたけどさ、あれで良くね?


 そう!『黙秘権』!!


 この世界にもそんな法律があるのか知らんが、ちゃんと行使したぜ!


 「も、黙秘権を行使します!!!」


 質問を続けるタジル達に言ってやった。俺は言ってやったんだ!


 でもさ、その日から何故か俺はタジルの抱き枕となっちまった。約30日間の罰なんだとさ。男の抱き枕状態を30日・・・俺、耐えてみせるよ。みんな、応援してくれよな。でないと泣くぞ?




 冒険者達が討伐を終え、町へ帰ってきてから〝聖女〟について噂がされていた。


 あれだけ死霊王が大声で怒鳴っていたので、遠くに居た冒険者達にも聞こえてしまっていた。あの子供のローブは誰だと捜す冒険者が居たが、あのゴリさん__もとい、ギルマスが俺の事を黙ってくれていた。やばい、格好良い。ゴリラだけど、アンタ格好良いよ。


 でも、でもさ「ミネルは冒険者ギルドの医療係専門な」って言われたんだ。・・・もしかして、教会に連行されないようにギルドで俺を活用すのが理由か。教会での治療よりも安価に済むぜとか思ってないか?タジルの奴も「ミネルは俺専門だ!渡さねぇぞ!」とか叫んでるし・・・タジル専門って何ぞや?



 「それで?結局ミネルは聖女様なのか?」


 ブハーーーっ!!


 久々に会ったルッソから衝撃的な言葉を言われた。


 ・・・ルッソよ。今、無駄にした俺のジュース代を返せ。じゃなくて、何で知ってんの!?何が〝それで?〟なの!?



 タジル達が俺をいろいろと連れ回したせいで、久々に再開するルッソと一緒に露店のジュースを飲んでいた時だった。そのルッソの言葉で、俺は一口分のジュースを無駄になってしまう。ジュース代は今回の討伐依頼でギルマスから頂いた報酬なので、ルッソの分も俺が奢ってあげたんだけどな。俺ってば今、ちょっとした金持ち気分だからさ。


 しかし、何故だ?何故に俺が噂の聖女様だとルッソが知っている。噂の聖女様は正体不明の筈だし、ギルマス達とも契約して秘密にしてもらったのに。


 「げほっ、なんで、知って、げほっ」


 「いや、だってミネルがローブ着て討伐隊に行ったの俺知ってるし。討伐隊で子供はミネル一人だけだったって聞いたし。お前なんだろう?今、噂されている〝光の聖女様〟ってやつ」


 ・・・そうだった。「行ってくるから、しばらく遊べない」とかルッソやルード達に伝えてたわ、俺。


 「違う、違う。そもそもボク、男だし。聖女って、つまりは女って事だろう?じゃあ、ボクの訳がないじゃないか」


 「・・・まぁ、そうだよな。やっぱ、ミネルは男だもんな。残念」


 「ん?何が残念?」


 「・・・いや?何でもない。気にすんな」


 「そっか、あはは」


 とりあえず、無理やりアハハハと笑って誤魔化す事にした。ワタシハ聖女デハアリマセ~ン。


 聖女。漢字の通り普通は女性がなるものだ。男の俺ではないと誤魔化せるので、男として転生して本当に良かった。これで女性として転生していたら教会に監禁されていたかもしれないから。まぁ、ヒロインのミネルソフィは自分から教会に所属してたけど。


 とりあえずルッソには、目的地の村で討伐作戦を行っているとフラリとやって来た女の子がズビ―っとズバーっとドッカーンとやらかしていったという擬音だらけの説明をして誤魔化した。





 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇





 「なぁ、ミネル。本当に、俺等と一緒に王都へ行かないのか?」


 30日間の罰、最終日。俺は、その日の夜もタジルに抱き着かれてベットにタジル専用枕として居た。男が男の抱き枕生活、30日。みんな、俺、耐えきったよ。さすがに、オデコにおやすみのチューをしてきた時は殴ったけど。俺は悪くない。


 この罰が終わる明日、タジル達は王都へ戻るらしい。でも俺の事が心配で、一緒に王都へ行こうと何度も誘われた。


 でも、俺は断った。


 「うん。今はまだ、この町に居たいからさ。でも10歳になる前には、この町を離れて王都に行くよ。その時にまた会おうよ」


 俺がこの町に残ってやりたい事がある。それは〝修行〟だ。


 やはり、この世界は乙女ゲームと同じイベントが起こる。それも今回のように俺は関わる可能性があると分かった。この世界の意思か、運命か、ゲームの強制力か、ただ俺の運が悪いだけなのかは分からない。俺の不注意のせいでは無いと信じている。


 そして、これからも巻き込まれるかもしれない。だからこその〝修行〟。


 ・・・別に滝に打たれたり、長距離を走って体力つけたり、剣を振って剣術を上げたり、熊と戦ったり、ゴリラと戦ったりはしねぇよ。疲れるじゃん。滝に打たれるとか痛そうだし寒そうだ。する訳が無い。


 俺の修業は、主に魔法の練習。


 主人公設定を有効活用して余りある魔力を使い、魔法の特訓を開始する予定。それならお菓子を食べたりジュースを飲んだり、それこそ寝転びながらでも修行?が可能だろう。そういう楽な修行を目指している。完全に修行を舐めていますが何か?


 結局、俺は上級の回復魔法は使えなかった。蘇生魔法はまだ無理でも、範囲だけでも覚えておきたい。できれば攻略キャラである騎士団長子息のトラウマイベントに巻き込まれる前には。



 「この屋敷は勝手に使っても良いからな?手紙も送るから返事書けよ?拾い食いとかしたらダメだからな?変な人には着いて行くなよ?分かったな?」


 お前は俺の母ちゃんか!?拾い食いなんかせんわ!


 心配してくれているのは、正直に言うと嬉しい。この乙女ゲームの世界に1人で来てしまったから。精霊達が寂しくないように一緒に居てくれてるけど、やっぱりそれでも人恋しさはあったから。


 「ミネルがくれた、このお守りも大事にする。お前からの初めてのプレゼントだしな」


 「そのお守りは結構頑張って作ったから大事にしてくれるのは嬉しい。効力も、それなりに凄いと自負してるから持ってて損はさせないよ」


 腐っても聖女の資質を持った俺だ。いや、腐ってる訳じゃ・・・でも男。とりあえず、そのお守りは闇耐性に少しは貢献できます。呪いや毒の耐性が上がるので装備して下さい。それでも魔王幹部の攻撃はさすがに防げなくてタジルが怪我しちゃったけど。


 「・・・時々思うんだが、ミネルって本当に6歳か?なんか言葉使いが子供っぽくない時あんぞ?」


 気のせい、気のせい、気にすんな。体は6歳だから事実よ?俺、嘘つかない。




 でもさ、終わったな。タジルのトラウマイベント


 俺、うまく出来ただろう?


 なぁ、神様


 ジルも、クリスも、トリアも


 みんな、ちゃんと生きてるぜ?


 タジルも、これから10年間、苦しまなくていい


 これで 良いんだよな?


 なぁ、神様。




 そして次の日、タジル達は王都に向けて出発した。次、会えるのは4年後だ。




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