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181/187

181話 ※アレク※ Prt.3


 7-34.※アレク※ Prt.3



 ※ ※ ※ 攻略キャラ アレクシス=D=ベルセネス 視点 ※ ※ ※



 今日の出来事に疲れ、自分用のベットに倒れ込みます。


 バフッと受け止めてくれた布団に感謝して、今日の出来事を思い出す。


 まず、路地裏で出会った子供は誘拐犯では無かった。その後に登場した冒険者達から聞けば、あの子供は冒険者達の協力者だったらしく、ギルドの依頼で犯罪奴隷商の誘拐犯達を追っていたらしい。あの子供は信じられない程の風魔法による移動方を行なっていたので索敵能力に優れていたのかもしれません。あの現場に、最初に到着したのが、あの〝ミネル〟という子供だったのでしょう。


 自分と対峙した、あのローブ姿の子供は『ミネル』という名の少年だと判明しました。冒険者仲間にそう呼ばれ、フードを外した彼の姿はとても目立つピンク色の髪をしていましたね。


 ……鮮やかなピンクの髪。今回、騎士団の遠征に参加なされている奇跡の少女ソフィと同じ髪の色。そして、少年は聖女アンジェラ様の付き人だと言いました。


 それを知ったのは、今日の夕暮れ。空が茜色になる時刻に、自分と少年は不審人物による襲撃を受けました。犯人は無事に確保できましたが、すぐには騎士団詰所に連行しませんでした。少年が、凶器所持の襲撃者を聖女アンジェラ様に会わせると言いだしたからです。


 すぐに反対はしましたが自分は先程、少年に対して刃物を向けるという後ろめたい行為をしてしまったので少しだけならばと了承しました。その時に少年が、聖女アンジェラ様の付き人だと知りました。


 少年が案内したのは、確かに聖女アンジェラ様が御滞在なされている屋敷でした。その屋敷に到着すると、何故か警護していた騎士達が居らず、執事とメイドの2人だけが玄関で待機していました。


 屋敷に入れるのは少年と犯人の男だけ。自分は入る事を許されませんでした。そして騎士の先輩に呼び出され、今日の出来事についての守秘契約を結ばされる事になりました。


 項目については、今日出会った〝ミネル〟という少年に関する全ての事項を口外しない。誰にも教えず、内に秘めておく事。


 発行者の名前には信じられない名前が書かれてあります。ルドワール=J=ミクシオロン様。ランブレスタ王国の宰相様であるミクシオロン公爵家の御当主の名です。父上とは友人関係なので自分とも何度か話した覚えはありますが、国王陛下の補佐である宰相様の名前が書かれてある契約書には驚きました。


 自分は、もちろん了承する記入欄に名を書きます。この書類を拒否する行為は不可能な事です。


 聖女アンジェラ様の付き人だと言う『ミネル』という少年。そして、奇跡の少女ソフィ様。同じ背丈、同じ色の髪、そして顔立ちも何処か似ている様に感じました。


 ……もしや、あのミネルという少年は奇跡の少女ソフィ様のご家族ではないだろうか?


 彼にとってソフィ様は妹、又は姉、それか双子。可能性としては十分に考えられます。2人の容姿が酷似しているのは身内だからと考えれば納得できます。殿下には良い知らせなのですが、自分は守秘契約を結んだ身。例え相手が殿下であろうと報告する事は叶いません。残念です。






 あれから数日。自分は騎士団での仕事に毎日を忙しくしています。


 町の防衛強化、避難経路の確認と確保、保存食の管理。様々な仕事で毎日を忙しく動いています。今回の任務である魔物、又は魔族による襲撃に備える為なのですが、今の所この町は平和な日常そのもの。この日常が続く事が誰もの願いでした。


 しかし、今日の巡回でその願いは崩れます。



 (ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン)



 突如、鳴り響く鐘の音。この町中に響く鐘の音は、町の中央に建設された時計塔に設置された大鐘によるものと分かります。そして、その音は危険を知らせる警鐘の音でした。


 連続する鐘の音。回数は5回。その〝5〟の回数が表すのは____



   _____敵の襲撃。



 自分は仲間達と共に本部へと走ります。まずは状況を確認しなければならないからです。本部に到着した自分達は部隊長から警鐘を鳴らした理由を聞き、恐れていた事が始まったのだと知りました。そして、すぐに町の避難誘導へと向かいます。


 この町から見えていた魔族領域にある山頂。そこに集まっていた黒い影。その影が空に広がり、脅威を感じた事により町の避難が行なわれました。


 慌ただしく動く冒険者、避難場所に急ぐ住民、民達を誘導する騎士団。警鐘が鳴った事により、瞬く間に町が騒然となりました。


 あれから1時間は経ったでしょうか、まだ全ての住民が避難を終えていない状況が続いています。そんな時、男性の悲鳴が全員の動きを止めた。


 「う、うわぁぁあああ!!」


 男性が恐怖で顔を強張らせ見詰める先、その方向に指を向けて立ち止まっていました。彼が示している上空、それは青空を覆う程の大量の黒い物体が目に入りました。黒い物体、その姿が少しずつハッキリと見えるようになってきました。


 魔竜族。


 魔族に属する竜族。言語を理解し、武装の知恵もあるという。一番の脅威は、魔竜は群れで行動する事。


 青空が、どんどん黒へと染まる。その光景に避難していた人々は誰もが立ち止まり、空を見上げて恐怖で固まります。平穏とした日常に、突如襲われる悪意ある者からの脅威。それを目の当たりにした人々は震え、絶望へと包まれていきました。


 「いやだ…嫌だ、死にたくない!逃げろ、逃げろぉぉ!!」


 1人の男性が我に返り、前に居た人を退かして走り出しました。その男性の恐怖が広がり、誘発されて我先にと走り出す人が続出してしまいます。


 「落ち着いて!どうか落ち着いて避難を行なって下さい!走り出しては危険です!」


 混乱する状況をどうにかしようと、自分や仲間達は呼び止めますが無駄でした。


 状況は最悪です。家族や友人など、大切な者と離れてしまう者達が続々と現れます。誰かを呼ぶ声、怪我をして助けを呼ぶ声、子供の泣き声、全てが重なり悲鳴となり大混乱です。部隊長や先輩の騎士達が忙しく呼び掛け避難を誘導していますが、混乱した状況は収まりませんでした。


 騎士達にも混乱する者が出始め、状況の終息が不可能と思われた時です。何処から「ゴォォオオ」という異音が聞こえてきました。それは自分だけではなく、近くに居た騎士仲間や避難していた市民にも聞こえたらしく立ち止まる人がいます。


 そして、その音は空からだと分かり、自分は空を見上げました。


 「…な……なんだ、アレは…」


 近くに居た騎士の呟きが聞こえました。


 自分も、その彼と同意見です。聞こえた異音の原因。それは、自分達の上空を通り抜けて行く黒い何かでした。色が黒な為に魔竜族からの攻撃かと考えましたが、方向から有り得ないと判断します。その黒い何かは魔竜族が集まる方向へと向って行きました。


 次に聞こえたのは獣の悲鳴。それは魔竜族からの悲鳴でした。上空を通り抜けた黒い何かは、空に浮かぶ魔族達を襲い、撃墜していきました。


 その光景で、あの黒い何かは魔族達に放たれた攻撃だと判明します。誰による、何の攻撃だったのかを把握する為に周囲を見渡し、誰かが町の中央にある時計塔の頂上を指差しました。


 「お、おい…あそこに誰か居るぞ」


 男性が指差す方向を見ると、大きな時計塔の外壁の頂上に2人の人物が立っているのに気が付きました。その人物達は、我々騎士団がこの町まで護衛してきた少女達でした。


 黒の洋服で身を包んでいらっしゃるのはランブレスタ王国に属する公爵家の娘であり、聖女として陛下から任命されたアンジェラ=K=モンテネムル様。黒い日傘を持ち、風で揺れる長く綺麗な髪を片手で抑えています。


 そして、お隣に居るのは聖女アンジェラ様の黒とは対照的な白を着こなす、奇跡の少女として有名となったソフィ様。この町で出会った『ミネル』という少年と同じ色をしたピンク色の髪を白いリボンで整え、風で舞うスカートを恥ずかしそうに抑えていました。


 「……女神様だ」


 誰かの呟きが、静寂となったこの場に響きます。


 確かに、今の少女達の姿を見れば誰もが女神と錯覚するほどの御姿。青い上空を背にする御2人の姿は、自分にも神々しく視えました。






 それからの出来事は、まるで夢のような出来事が連続として発生しました。


 町全体を包み込む色鮮やかな結界。


 上空に出現した白と黒の巨大な魔法陣。


 そして、青空を覆い隠していた魔竜族の消失。


 それが瞬く間にして起こったのです。我々、騎士団もただ茫然と見守る事しかできませんでした。とりあえず落ち着いた市民達の避難を再開し、自分達は本部へと向かいました。


 そこで知らされたのは、町の脅威が去った事。聖女アンジェラ様と奇跡の少女ソフィ様、御二人によって退けられたそうです。


 騎士団の部隊には、魔法に長けた魔法兵が何人か配属されています。その者達は、あの現象に目を輝かしている者と恐れている者に分かれています。若い者ほど目を輝かせて憧れを表し、年長者になるほど恐れとして見ていました。確かに自分も、あの上空に出現した魔法陣の壮大さに尊敬もありましたが恐ろしくもありました。





 数日後、聖女様と奇跡の少女様は王都へとお戻りになる事が決定します。


 自分は見習い騎士なので、町に残るのではなく王都に帰省する事になりました。この町では見習い騎士として十分な訓練が行なえないからです。


 戻って来た王都では、大々的な祝祭が行なわれていた事には驚きました。


 なんと、聖女アンジェラ様に加え、奇跡の少女ソフィ様も〝聖女〟として任命されたそうです。


 前代未聞の2人の聖女様の出現。それを国民達は皆が喜び、称えました。聖女アンジェラ様は『黒の聖女』として、奇跡の少女ソフィ様を『白の聖女』として国王陛下が認めたそうです。



 そして、自分は王都に到着して、そのままある場所へと向かいます。


 「無事で何より。さぁアレク、何をしている。ここへ座れ」


 「御前、失礼いたします。殿下」


 エルナルド殿下の部屋へと挨拶に向かうと、すぐに殿下は自分を向かいのソファへと座らせました。


 「帰りを待っていたぞ。さぁ、彼女について聞こうか。さぁさぁ、何が分かった早く報告しろ」


 「エルナルド殿下、とりあえず落ち着いて下さい」


 少しずつ顔を前へ前へと進んでくるエルナルド殿下を手で制して、冷静になるように促がす。


 「ん……まぁ、そうだな。落ち着いて聞こうか。悪かった」


 「いえ……」


 殿下は冷静を取り戻し、向かいのソファに深く座り込む。そして、自分に真剣な表情を向けました。自分は、此度の出来事で知り得た、奇跡の少女についての報告を行ないます。


 「殿下の想い人、奇跡の少女についてを報告です。少女の名はソフィ。とても小柄で口数は少ないそうです。その容姿は、一番の特徴は髪の色ですね。殿下の仰った通り、とても目立つピンクの髪色をしておりました。お顔は美人と言うより、愛らしく可愛いに属するかと。年齢は不明。おそらく殿下より3~4歳くらい下かと思われます」


 「なるほど、年下だったのか……」


 「続けます。ソフィ様のお力は、噂に違わぬモノでした。ココより北東にある町、トロメンフィスにて奇跡を発現なされました。突如、襲撃してきた魔族達によって町は混乱へとなりましたが、聖女アンジェラ様と奇跡の少女ソフィ様によって退けられ、平和な日常へと戻りつつあります」


 「ある程度は報告書で知っている。だが、その場に居たアレクの口から聞きたい。町全体を包む防性魔法の起動と、魔族達を一瞬にして消滅させたという出来事は事実なのか?」


 「はい、殿下。全て事実です。町を守護した結界は、奇跡の少女ソフィ様によるものでしょう。少女の体から光が溢れ、全身が包まれたかと思うと虹色の球体が町全体を包み込みました。その結界は魔族達の攻撃を受けても微動だにせず、強固な結界だったと分かります」


 「やはりな!やはり彼女こそが光の女神に選ばれし真の聖女なのだ!あんな紛い物の聖女ではなく、彼女こそが―――」


 「殿下。しかし、その後に起こった魔族達を消滅させた驚異的な魔法は聖女アンジェラ様と奇跡の少女ソフィ様、御2人の力によるモノです。町を守ったアンジェラ様も十分、聖女としての資格があるかと思われます」


 「ふんっ、あの女が聖女?俺には、どちらかと言うと魔族に属する者としか思えんがな」


 「殿下!!」


 今の発言は、さすがに許されない。この部屋には自分と殿下しか居ないが、誰かに知られる事があれば大問題となる。なんたってアンジェラ様は聖女である共に、このランブレスタ王国の五大貴族の1つ、モンテネムル公爵家の御令嬢なのですから。


 自分に睨まれた殿下は、少しふて腐れて顔を横へと向けました。


 「……殿下はいったい何故、アンジェラ様の事を御認めにならないのです?修復作業が続く大聖堂で、アンジェラ様は病や怪我で苦しむ者達を癒しの力でお救い下さっていらっしゃるのですよ。なのに何故です?」


 「アレク、忘れるなよ。確かにあの女は全属性が扱える。聖女として誤認されるのも分かる。しかし、その力は光が主軸ではなく、闇だ」


 「確かにそうですが、光の力も体の欠損を復元するほどの威力ですよ。聖女としてのお力は十分、備われているかと」


 自分の苦言に、これ以上は何も言わないと溜息をされて用意されたお茶で喉を潤わす殿下。そして、一息つくとまた殿下が尋ねてきました。


 「それで?アレク、ソフィという少女は何処に住んでいるんだ?」


 「えっ………さぁ、存じません」


 「何をしているんだ。では、手紙を送れないではないか!」


 「殿下、確かソフィ様への手紙は陛下が御止めになったと伺ったのですが?」


 「知らん」


 いえいえ、確かに聞きましたよ。その愚痴を聞くのに、夜更けまで付き合ったではありませんか。


 「奇跡の少女は今、何処に居るか分かるか?」


 「確か聖女アンジェラ様の本邸に向かわれたと聞いています」


 「ちっ、あの女の場所か……アレク、今すぐにモンテネムル公爵邸に赴き、白の聖女ソフィの住まいを調べて来い」


 「殿下、ですが――――」


 「これは俺からの重要任務だ。任せたぞ、アレク」


 「……はい、了解しました」


 エルナルド殿下の悪い癖。たまに私用で王家の権力をお使いになる。王都見物の時も平然とお使いになり、警護の準備に手こずったのを覚えています。その時に比べたら、殿下自らが向かうのではないのでマシなのですが。



 結局、奇跡の少女改め、白の聖女ソフィ様の行方はモンテネムル家から消息が辿れず、こつ然と存在が消えてしまいました。つまり自分に任命された重要任務も失敗した事になり、エルナルド殿下の不満を一夜ずっと聞くはめになりました。




  ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※





第7章 終了です。

次からは第8章になります。

御読み頂いて ありがとうございます。m(_ _)m

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