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180話 ※アレク※ Prt.2


 7-33.※アレク※ Prt.2



 ※ ※ ※ 攻略キャラ アレクシス=D=ベルセネス 視点 ※ ※ ※



 王都ランブレスタを出発してから2日目の夜、森近くの広場で野営する事が決まりました。


 全員が馬で移動していたとしても、目的の町まであと数日は掛かるでしょう。国が補整する石造りの道を進んだとしても完全に安全ではありませんから。弱い魔物は、魔除けの効果が付与されている守護石のおかげで大丈夫なのですが、強い魔物だと効果が薄れます。そして、一番気を付けなければならないのが魔族と人間です。


 魔族は当然なのですが、人間にも旅では注意が必要とされます。ランブレスタ王国でも治安が完全に良いとは言えません。盗賊や山賊、海賊に詐欺に裏奴隷商などの注意が必要です。王都でも無法地帯となっている貧民街と呼ばれる地区があり、今でも殺人が当たり前のように発生しているとの事です。


 今の国王で在らせられるユナイセル陛下は、とても良き王です。しかし、それでもこの広大なランブレスタ王国を完全に治めるのは不可能とされ、平穏な治安を完成させるのには500歳生きようが不可能とされています。


 行軍する我々は、旗や鎧が示すようにランブレスタ王国に所属する騎士団。ですから、滅多には盗賊などに襲われる事はありません。しかし、それでも絶対とは言えませんから周囲の警戒を怠らずにいる必要がありました。




 「よぉ、アレク。隣いいか?」


 今日の就寝に必要な天幕を張り終え、片手に夕食を持った友人が自分に話し掛けてきました。他の団員達も親しい友と共に食事をしている姿が周辺に見られます。


 食事は温かなスープに、柔らかなパン。それに何の魔物かは分かりませんが大量の肉が使われた炒め物です。野菜が少ないのが騎士団の食事の特徴でしょう。ほぼ、男性しか居ませんからね。


 「えぇ。構いませんよ、ロンツォ」


 「ありがとさん」


 彼の名前はロンツォ。この遠征に参加する騎士団では数少ない庶民出の者です。


 身分は平民となりますが、戦闘能力が優れ、必要な試験を通過した者は騎士団への入団が認められます。彼は誰にも等しく接する事から貴族出の者からは嫌われている様ですが、自分は彼の事を良き友だと思っています。


 貴族でも平民でも、この国の為に力を尽くす者を自分は大切な友人だと思っていますから。


 「…なぁ、アレク。お前は何を探っているんだ?」


 ロンツォが自分の隣に座り、夕食を一口食べた後に尋ねてきました。


 「……何の事です?」


 「はははっ、お前は本当に嘘が下手だな。騎士として上を目指すなら、もっと嘘が上手くならねぇとな」


 「………努力します。自分が何かを探っていると、そんなにも分かりやすかったですか?」


 「まぁな。ここまでの道中、お前ってば人の話を聞いている様で聞いていなかっただろう?それよりも周りの噂や聖女様が乗る馬車ばかりを気にしていたじゃねぇか。バレバレだ」


 そこまで分かりやすく態度に出ていたのかと思うと落ち込みます。これでも自分は隠していたつもりだったのですが……


 「……詳しくは言えませんが、ロンツォは〝奇跡の少女〟について何かご存知ですか?」


 「へぇ、アレクの興味は聖女アンジェラ様ではなく、同行しているソフィちゃんの方か。ふふっ…とうとうアレクも色付いたのか?」


 「違います」


 「はっはっはっ、だろうな」


 自分の否定した言葉に友人は声を出して笑いました。その友人も奇跡の少女については詳しく知らないそうです。


 少女は言葉少なく、周りをキョロキョロと眺め、たまに執事やメイドに注意を受けているくらいだとか。それだけの情報では、きっと殿下は不満になされるでしょう。ですが、出発前に父上である騎士団総隊長から少女の名前は『ソフィ』だという事は分かりました。これは大きな収穫です。







 次期に、目的地とされる町へと到着します。


 道中、聖女アンジェラ様と奇跡の少女ソフィとの面会を求めましたが、執事とメイドによって断られてしまいました。残念です。


 町に到着し、荷下ろしと拠点確保に忙しくなります。見習い騎士である自分は雑用として指示されていましたが、今回の行軍に疲れているであろう若い騎士や見習い騎士には早々に休憩を頂く事となりました。


 「おう、アレク。何だ、さっそく出掛けるのか?元気だなぁ、お前」


 「はい、少し町を拝見しようと思っています」


 騎士の先輩に声を掛けられ、俺は一礼してから騎士団の仮設本部から町の中央へと向かいます。本当の目的は町の拝見では無く、聖女様方がお泊りになる場所の把握と、できれば情報収集ですが。



 聖女様方がお泊りになる屋敷は、この町の高級地区に建てられた御屋敷。残念ながら騎士の護衛が多く、見習いの自分では入れては頂けませんでした。


 仕方なく、この町を歩き周ります。今回の遠征内容は、この町が魔物、もしくは魔族によって襲撃されるかもしれないという調査と町全体の防衛強化です。


 町の住民達は少し暗い雰囲気を感じました。おそらく恐れているのでしょう、この場所からも見える魔族領域にある山の山頂に集まるという黒い影に。


 町の商店街に到着した時、人々が集まっている箇所を発見しました。気になった自分は、人が集団となっている場所へと向かいます。


 その場所に到着した自分は、何やら変わったモノを見ました。それは、商店街の道のど真中に生えた大きな木。その大樹には見事な果実があり、それを取ろうと子供達が楽しそうに木の下で跳んだり登ったりしています。


 「これは、どうなされたのですか?」


 近くに居た男性に尋ねます。まさか、この大樹が道にある事が日常とは考え難い。


 「ん?ああ、なんか子供が冒険者に絡まれていたらしいけど、その子供があの木を生やしたとか聞いたな。その冒険者はその木に絡まって、さっき衛兵さんに助けられて連れて行かれたぞ」


 「……そう、なんですか。その子供は保護されたのですか?」


 「いや、すんげぇ速さで逃げていったんだと。確かアッチだったかなぁ」


 「分かりました。情報、ありがとうございます」


 男性に礼を言い、その子供が心配になり後を追ってみます。冒険者に絡まれたら、怖くて逃げて当然です。恐怖で混乱していた可能性もあります。今も震えているのかと思うと心配になりました。


 子供があの大樹を成した、と先程の男性から聞きましたが、おそらくは魔道具によるものだと判断します。攻撃性の無い樹属性の魔道具ならば、子供が持っている可能性もあるのでしょう。



 その子供は、残念ながら見付かりませんでした。もしかしたら大通りを避けて、裏路地に逃げて迷い込んでいる可能性があります。もあしそうなら、その子供が心配です。暗く、人気が無い場所は犯罪率が格段に上がりますからその子供が巻き込まれるかもしれません。


 そう思い、自分は路地裏の奥へと進んでみました。空のビンや傷んだ木箱などが放置されている狭い通路を通り、少し広くなった場所が見えて来ました。その場所で、誰かが地面に座り込んでいる姿を発見します。もしかして例の子供なのではと思い、その場所へと向かいました。



 「そこの君、この様な場所で何をしているんだい?」


 狭い通路から広げた場所へと到着し、地面に座り込む人物に後ろから声を掛けます。


 「なっ!?」


 自分は、座り込む人物の周囲を見て驚愕しました。その人物の周りには、大人や子供が数人倒れていたのです。しかも、全員が縄で縛られた状態。この場所で唯一自由の身であり、気を失っていないのは座り込む人物だけ。その状況を理解し、目の前の人物に問いかけました。


 「これは………この状況は君の仕業かい?」


 「あの、いや___」


 「動くなっ!!」


 容疑者の人物が動こうとしたので止めに入る。状況からして、この人物が犯人なのは間違えがないので所持していた剣を引き抜きます。


 「なんという酷い事を……こんな小さな子供達まで拘束するとは。君を誘拐の現行犯として、この町にある騎士団詰所まで連行する。大人しく着いて来る事を願う」


 周りで地面に倒れている子供達を見て、自分は歯を喰いしばります。その子供の中には顔を殴られたであろう傷痕が残されていたからです。


 その人物は立ち上がり、動きを止めました。座り込んでいた人物が立ち上がった姿に、自分は少し動揺します。


 ……小さい。このような幼子が犯罪を……?


 犯人と思しき人物はとても背が低く、10歳にも満たない容姿でした。こんなにも幼い子供が犯罪を行なうとは信じたくはありませんが、状況からして考えられるのはこの子供が犯人であると証明されていました。


 今まで、騎士見習いとして何度か盗賊や山賊の拠点を襲撃した経験がありますが、その賊の中には幼い子供も居ました。なので、目の前の人物が小さな子供であろうと警戒は怠りません。


 自分の命令に、子供は言い訳を口にしていましたが、全て断絶します。すると、子供は自分に向けて魔法を放ってきました。


 「………≪フォレスト・ウィップ≫」


 本当に驚きました。詠唱の声は聞こえませんでしたが、最後の魔法名を口にしたのは聞こえました。地面に突如、太い蔓が出現して自分に巻き付こうとしましたが全て持っていた剣で斬り伏せます。


 この様な小さな子供が魔法を使用して成功させました。驚く事ですが、今は容疑者の確保を優先しましょう。


 「抵抗するか……残念だ」


 剣を構え、犯人であろう子供を睨みます。今の出来事で、この子供は公務妨害で完全に罪人となりました。


 例え子供であろうと、犯罪は犯罪。罪には罰を。神聖な裁決により罪に等しい罰がこの子に課せられるでしょう。抵抗すれば罪を重くするだけなので、できれば大人しく連行されてほしかったです。



 「容疑者の抵抗を確認。これより実力行使で容疑者の制圧を開始する」


 「俺だって自分に剣を向けてきた危険人物を確認したよ。これより安全確保の為に自己防衛を開始しちゃる」


 振り返る容疑者。頭から深く被るフードで顔は見えません。そして、自分は目の前の人物に最後通告を伝えます。


 「君を捕える。抵抗すれば容赦はしないし、罪を重ねるだけだぞ」


 「へぇ、そう。俺を捕まえたいのなら、いつでもどうぞ?……君なんかに出来れば、の話しだけど」



 子供の周りに風が集まるのと、自分が剣を構え走り出したのは同時でした。



  ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




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