015話 ※タジル※ Prt.1
1-15.※タジル※ Prt.1
※ ※ ※ 攻略キャラ タジルマース 視点 ※ ※ ※
冒険者になって、もう3年か。早いものだな。
11歳の時、冒険者見習いとなり働いた。俺は孤児だったので金が無かったし、体力は他の人よりもあったから冒険者を目指すのが丁度良いと思ったのだ。
だが、ちゃんとした冒険者になるには15歳以上でないとダメだと言われた。しかし、俺の身体能力をギルマスが認めてくれて、貰える金は少なくなるが冒険者見習いとして働かせてもらった。
それから4年が経ち無事に15歳となった俺は、冒険者になれた。そして、すぐに昇格試験を受けた。報酬が良い依頼を受けるには昇格試験を受け、上のランクになる方が儲けが良いからだ。普通、直には昇格試験を受けられないが、冒険者見習いとして働いていた実績が認められて受けられた。これもギルマスが許可してくれたおかげだろう。
昇格試験では俺よりも先に冒険者となっていた孤児院の先輩達も居た。結果は全員が合格したが、俺だけは次の昇格試験にも挑めた。無事に合格を貰えた俺は、次々と昇格試験を受ける事にした。そのせいでタチの悪い冒険者共に目を付けられたが、別にどうでもいい。俺の方が強いからな。
それから1年、信頼できる仲間にも出会えた。ジルとクリスとトリアだ。クリスとトリアは同じ町の出身で幼馴染なのだと聞いた。まぁ、〝ただの幼馴染〟ではなさそうだがな。
そして俺等は、より稼ぎが良い王都を拠点とする事を決め、世話になったこの町を旅立った。
「死霊種の異常発生・・・ですか?」
王都で活動を始めて、若いが腕が立つという噂が広まり仕事を順調に熟していた。そんな俺等に、王都のギルドマスターから呼び出され、ある依頼を受けろと言われる。
この王都でも、腕のいい若い冒険者を妬む奴らがくさる程いる。だが、冒険者は実力主義。俺等は〝調子に乗ってんじゃねぇ!〟と叫びながら襲い掛かる奴らをボコボコにしては捨ててきた。人間だとしても容赦はしない、他から舐められないように全力でボコる。
そして、俺達は王都の冒険者ギルドのマスターから緊急依頼を言い渡される。
「ああ、どうもそうらしい。問題となっている村の名前はソージア村。その村近くに、お前等が世話になったと言っていた町がある。緊急招集もその町から発生しているし、お前達行って来い。これは緊急依頼だという事を忘れるなよ」
『緊急依頼』
対処が難しいと判断され、緊急に対応策が必要になりギルドから呼び出された冒険者は絶対に断れない依頼だ。何か悪い事が発生する前に対処できれば良いが、その緊急依頼で命を落とす冒険者も少なくはない。そんな依頼が発生する事態が俺達の世話になったあの町近くで起きているのか。
俺達はすぐにギルドマスターからの緊急依頼を了承し、世話になった町へ戻る事になった。無事に帰って来た時、町が無事だった事に安心して、さっそく冒険者ギルドに居るギルマスの顔を見に行った。久しぶりに会ったが、まったく変わらずのゴリ___大男で笑えたな。凄く懐かしく思えた。
次の日、冒険者ギルドでは緊急依頼の為に冒険者が多く集まっていた。しかし緊急依頼にある死霊種の討伐は、まだ行われないとの事。どうやら招集に了承した名のある冒険者が、まだ全員揃っていないらしい。
その事をギルマスの部屋で聞いていた時、そのギルマスから依頼を受けないかと言われた。
「そういや、ちょっと困った事があってよ。この町で裏奴隷を商売にする奴らが活動してるって情報が入ってんだよ。ちょいと頼まれてくれねぇか?そいつ等の捕縛に」
裏奴隷。その殆んどが誘拐された者で、奴隷の首輪を強制的に着けられ売られている。そんな犯罪者共が、この町に居ると思うと反吐が出る。世話になったギルマスからの頼みだし、俺等は了承した。
裏奴隷をする奴等はすぐに見つかった。こういう犯罪者は町の裏路地や夜道とかの暗い場所を好むからな。そんな場所でウロウロとしているアイツ等が、きっとそうだろう。
だが、ちゃんと犯行をしている場面を抑えないといけない。だから俺達はその5人を見張った。それぞれ別の場所から、アイツ等を囲む様に配置につく。
案の定、裏路地を通り抜けようとした子供達を誘拐する為に動いた。俺もすぐに動こうとしたが、上で見張っていた仲間の二人から待ったの指示を受ける。
何故だ?アイツ等は薄暗い路地に入って来た子供達に誘拐をはじめた。現行犯だろう。そう思い動こうとした時、屋根の上で見張っていたクリスから動くなという指示が来た。意味が分からない、現行犯だろうが。犯罪を行なっているのは明らかだ。
クリスの判断が遅れたせいで、奴らに逆らった子供が2人の男達に殴られた。俺は限界が来て隠れていた場所から飛び出そうとしたが、後ろから小さな足音が聞こえてきた。俺は急いで身を潜める。もしかして敵の仲間か?だからクリスは捕縛指示を出さなかったのか。
そして、この裏路地へと先程聞こえた足音の人物がやって来た。その人物は小さな男の子。髪がピンク色という、すごく目立つ子だった。確かに後ろから聞こえた足音は軽く、そして歩幅が狭かったので子供だとは思っていた。もしかして、誘拐されている子供達の仲間か?
俺はすぐに、その子を保護しようしたが止めた。この子が、もし誘拐犯達の仲間だったら?ただ子供というだけで誘拐されている子供達の仲間だと判断して良いのか?長い冒険者生活で子供が犯罪者集団の仲間だった事は何度もあった。この子も、もし奴等の仲間だったとしたらどうする。
俺の判断が迷っていると、その小さな子供は物陰に隠れて誘拐犯の奴等の様子をジッと覗いていた。
すると自分の影に手をついて闇魔法を放ったのだ。俺は驚きで動けなかった。こんな小さな子供が闇魔法を放つだと?あの希少な属性の?いや、それよりも魔法にはそれなりの精神力と集中力、それに知識も必要だというのに。こんな小さな子供が魔法を発動させるなんて信じられない。
男の子が使用した闇魔法で、裏奴隷商の仲間達であろう者達が黒い布によって縛られた。これで、この男の子が誘拐犯の仲間では無いと判断できた。良かった、こんな小さな子を犯罪者として捕えたくなかったからな。
男の子の保護をしようとした俺は、次に男の子が行なった行動に驚愕する。なんと、風魔法を使ったのだ。しかも器用に縛られていた子供達の縄を風で切っている。凄いな、この子。
そして、この男の子はまた魔法を使った。その魔法に俺は唖然とした。
男の子は光属性の魔法を行使したのだ。
おいおいおい、ちょっと待てよ。闇属性に光属性だと?属性の中でも希少種である、この2つが使えるのか?・・・面白いな。こんな小さな子供が、どれだけの才能を隠しているんだ?
俺は、とても面白いものを見つけた楽しさのまま、後ろから男の子に話しかけた。だが男の子はローブを買い物袋から取り出し、頭から被って逃走した。まぁ、無事に捕獲したけどな。よし、持って帰ろう。
嘘が直感で分かるトリアに協力してもらって、この子の事が少し分かった。俺と同じで孤児だった。名前は『ミネル』。この町で母親に捨てられて、今は森の中で1人で暮しているらしい。
それを聞いて俺は決めた。この子は拠点に持って帰__ではなく、俺達の拠点で保護する。これだけ魔法の才能に長けた子だ。危険な森に1人で暮らさせるなんて危ない。俺の仲間達も、俺の意見に賛同してくれた。
ミネルに出会って10日後、死霊種の討伐が実行される日となった。
腕に自信がある冒険者が集められたのだが、魔物の数が報告よりも多いとの事。討伐作戦では、冒険者側も少しずつ怪我人が増え始めていた。怪我人はミネルが居る後方部隊のテントへと運ばれていく。
今、俺等がいる東組では、変わった討伐作戦を繰り広げていた。
それは塩撒き。
ふざけているのかと思われるかもしれない。だが俺等は真面目に襲い来る魔物達に塩を撒く。この塩はミネルが大量にくれた物で、その塩に当たった魔物達は悶え苦しみ、そして弱体化していった。この塩は、そんな便利な道具として皆で撒いている。
初め、ミネルから貰った時は〝なんでこんな物を?〟と思った。ミネルが「試しに魔物に投げてみてよ」と頼まれたのでやってみたのだが。
すると驚く事に、死体はミイラの様になって動きが鈍くり干からびて、幽霊系統は消え失せる。動く鎧はボロボロの錆びた鎧となってバラバラと地面に散らばってしまった。凄い効果だ。
最初に行なった一握りの塩をゴーストへ撒き散らし、悲痛な叫びと共に消えた魔物に驚き、ポカーンとしていた。しかし、その後に急いでミネルから貰った大量の塩をアイテムボックスから全部出した。
そして、今は冒険者の東組一同で今は塩撒き大会。面白いくらいに魔物達が消えていく。弱体化した魔物は容易く剣で貫いて倒していった。ミネルから本当に便利な物を俺達は貰ったようだ。
だが、ここで悪い事態が起きた。調子に乗って魔物の方へと深追いした若い奴等が居た。俺と仲間達は急いで注意をしたが、聞こえていない様でどんどん魔物が居る奥へと進んで行く。急いで彼等の救助へ向かった俺達は、本隊と離れてしまった。
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