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146話 高身長への夢は諦めていません

2018.7.31

やっとネット回線が整いました 

しばらく投稿が出来なくて すいませんでした

また投稿を頑張っていきたいと思いますので よろしくお願いします <(_ _)>ペコッ


 7-1.高身長への夢は諦めていません



 夏の暑さを全身で感じながら、俺は大きく背伸びをする。


 朝だというのに涼しくはなく、太陽の日差しが夏らしい暑さで俺を攻撃してくる。朝くらいは手加減してほしいと切実に思う朝だった。


 孤児院の運営は伯爵様であるヴァンガイド=S=ラクシャスさんに任せている。そして最近、孤児達が増えて孤児院をもっと大きく広く改築する事が決まった。


 親が居ない孤児が増えているのには理由がある。俺が今、住んでいる王都ランブレスタの人口が急増しているのだ。



 その理由の一つは『聖女アンジェラ様の治療』


 一年前、突然聖女様による治療が休業するという日々が続いた。聖女アンジェラ様に良くない噂が貴族界で流れてしまったからだ。しかし、そのせいで大変な事にもなった。救いを求める病人や怪我人、教会関係の信者達もが王城近くに集まり、国王様へ悲願したのだ。〝どうか助けを、どうか治療を〟という声は増え続け、しまいには王家が聖女アンジェラ様を監禁して独占をしているのではという噂まで流れるしまつ。


 仕方なく国王は、急ぎの手紙をモンテネムル公爵を経由で俺に届けた。俺は国王様の手紙にあった〝給料UP〟の文字を心に刻み、聖女活動を復活させた。



 そして、人口の急増した理由はまだある。


 朝の空気を吸って一息、俺は空を見上げた。本当に大きくなったな『聖樹ユグドラシル』


 大きく改築した孤児院よりも遥かに高くなった聖樹。夜になると淡く光るから、とても綺麗……なんだけど、それがマズかった。幻想的な光景を見に観光客が集まりはじめ、観光スポットの1つにされてしまったのだ。元々この場所は路地裏の奥にあり、危険な人物達が居る場所だったので特に夜は危ない。


 しかし今では王都の観光地の1つとされ、国が安全を考えて騎士団の警備を配置して観光客の安全性を強化させた。デコボコだった道も改善され、もうこの場所を〝旧市街〟とは言えない綺麗な場所になりつつある。見事な観光スポットとなった聖樹を見に、他国から大勢集まって来ていた。




 何故、こんなにも聖樹ユグドラシルが大きくなってしまったのかというと、毎日の聖女活動によって〝真なる感謝〟が王都に溢れ、巨大化が続いているのだと樹の大精霊であるダイアナさんから教えてもらった。


 王都とういう場所には悪しき心が渦巻く場所だったらしいけど、聖樹がある孤児院の周囲が聖域と化してしまい、王都に渦巻いていた〝悪しき心〟よりも〝真なる感謝〟が大きく上回ったとか。【このまま伸び伸びと成長してほしいわぁ】とダイアナさんが聖樹を撫でながら微笑んでいた。




 聖女暗殺未遂事件が起きたあの前夜祭の日から、もうすぐ1年が経つ。俺は13歳となり、立派な男になった……と思いたい。止まってしまった身長は、そろそろ再開してくれても良いと思う。


 というか成長が止まるの早ぇよ。もっと努力しようぜ、身長さんよ。もっと熱くなれよ!積極的になれよ!お前ならやれば伸びるよ!物理的に!夢高々に!諦めんなよ、お願い!


 このままでは、またスザクに頭を撫でられるという絶望を味わう事になる。確かに乙女ゲームではヒロインちゃんの身長はスザクよりも低かったよ?でもさ、それは女のヒロインちゃんだったからで、男の俺には関係ない。ヒロインちゃんの設定だった小さくて可愛い要素は要らんのよ。





 「お~い、ミネル!今日も来てんぞ、手紙ぃ!」


 18歳となり、髪を少し伸ばし始めたフェイが俺を呼んだ。乙女ゲームに登場した攻略キャラのフェイレシルに少しずつ似てきたフェイが俺に封筒を渡しに来た。


 最近この封筒が俺の憂鬱。


 国王陛下からの手紙なのだが、封筒を開けなくても内容は分かっている。きっと、いつものように『早よ城に来いや、殺すぞ』という内容が書かれているだろう。あ、いや、本当に〝殺すぞ〟とは書かれてないし、言葉も綺麗だよ?なんていうか、そういう威圧が手紙から放たれている気がするんだ。ただの紙なのに。


 王族の召還状を断り続けても、俺が無事でいられるのは聖女活動のおかげ。今、聖女の治療が無くなれば王都ランブレスタは大混乱となってしまうからだ。聖女アンジェラ様の信者が増え過ぎているの怖いし。



 あと理由として、巨大となった聖樹を調査しに来た国の関係者が樹の大精霊様と出会い〝ミネル君を大事にしないと私、怒っちゃいます〟と言われたのもある。おかげで俺の事が調査隊に注目されそうになったけど、国王が治めてくれたみたいだ。これからは、ちゃんと〝国王様〟と言うようにしよう。うん、やっぱ時々でいいや。


 よって、下手に俺の意思を無視して無理やり城へと連行すれば大変な事となる。王家がそれを分かっているからこそ、この召還状に仮病を使い欠席しても無事でいられるのだ。


 まぁ、そのせいで毎日手紙が届くようになったけど。たぶん、この手紙攻撃は国王の細やかな嫌がらせなのだろう。そして最近、手紙の中に攻略キャラであるエルナルドの手紙も交じっているのには不思議に思っている。


 エルナルドの手紙の内容で、あの時の〝奇跡の少女〟の正体が孤児院に住む少年だと分かっていないみたいだ。あの前夜祭に現れた奇跡の少女宛てに手紙を送っているみたいだが、それが男の俺だという事は国王から教えらていないらしい。手紙の内容は〝会いたい。ぜひ会いたい〟と難しい言葉を使わず、ドストレートな内容が書かれていた。俺と会ってどうすんのよ、友達になりたいのか?




 1年前に開催された前夜祭の日。その数日後から、ある噂が王都で広がっていた。


 〝公爵家の御令嬢、アンジェラ=K=モンテネムル様は『聖女』では無いのでは?〟


 〝死者を蘇らせた『奇跡の少女』とは一体誰なのか?〟


 この2つの噂が王都のドコを歩こうとも聞こえていた。


 あの前夜祭の会場で残虐に人を殺した聖女アンジェラに恐怖した貴族達や、あの残虐な光景を目の当たりにした他国の者達によって広まったのだろう。ランブレスタ国王であるユナイセル陛下が急遽、箝口令を発したのだがダメだったみたいだ。さすがに目撃者が多過ぎたからな、仕方がない。


 小夜さんにとっては、これ幸いと俺を王家に提供しようと考えていたみたいだけど俺はもちろん断った。俺が断ったから小夜さんも素直に〝分かったわ〟と残念そうに従ってくれた。小夜さんは俺に借りが出来ちまったからな。俺の意思を尊重してくれたみたいだ。


 だが、それは王家にとってはとてもマズイ状況だったみたいで………



 ___ランブレスタ王家と教会が認めた聖女が偽物?


 ___〝死んだ者を生き返す〟という奇跡を起こした、あの少女こそが神々に祝福されし聖女ではないのか?


 ___その奇跡を起こした少女は一体、誰なのだ?


 ___あの日のアンジェラ様は恐ろしかった。相手が暗殺者であったとしても、あの様な殺し方をするとは……それが本当に心優しき聖女がする行為なのか?



 などなどなど、王城で行われる会議の際には毎回その話題が貴族達から問われ、困っている国王様。俺は応援する事しかできませぬ、頑張れ。


 だけど〝心優しき聖女様〟かぁ。ゲームでのヒロインちゃんはそうだったけど、俺は違うな。金大事、これ基本。金くれるなら犯罪者であろうと治療いたしますぞ……あれ?そういえばヒロインちゃんも〝罪深き者でも人間です、治療行為を禁止するなんて非人道的だと思います〟とか言ってたような。まいっか。




 1年前から噂された聖女アンジェラについてだが、今はもう殆んどされていない。


 復活した聖女活動のおかげだ。その治療により、アンジェラ様はやはり聖女という意見が増えた。そして〝奇跡の少女〟についての噂も市民達の間ではお伽噺の一つみたいになっていき、今では噂する人も少なくなった。


 続けている聖女活動なのだが、俺も今年で13歳。さすがに声変わりをしてきたみたいで、前のように女の子のような高い声が出せないでいる。活発な女の子という設定なら通りそうだが、へたをすれば性別が男だとバレてしまうだろう。


 そのフォローは、俺の聖女活動の補佐として任命されたミカルドさんに頼っている。俺は話さず頷いたり手を優雅に振ったりしているだけで、あとはミカルドさんが通訳してくれるのだ。それを怪しんでいる人が少なからず居るみたいだが、まだ変な噂はされていない。





 孤児院の自室で、届けられた手紙を読む事にする。陛下から届いた手紙の内容はやはり〝王城に来い〟という言葉を難しい言葉で3枚の紙を使いながら書かれていた。嫌がらせ、ここに極まれり。


 俺は溜息をしながら机の中から新しい紙とペン、封筒を取り出す。この手紙の返事を書く為だ。最初は無視しようと思っていたのだが、それが小夜さんにバレて本気で怒られた。王族の手紙を無視するなんて死にたいの?と説教されましたとも。


 書く返事は執事のセバスさんと、メイドのマーサさんから教わった失礼の無い断り言葉を使い回している。


 え~と、拝啓 夏の日差しが強くなる日々が続いておりますが___あ~、もう面倒臭い。今回の断る仮病は何にしようか……う~ん、筋肉痛は昨日使ったし、魚の小骨が喉に刺さって取れなくなったのは5回くらい使ったからなぁ。もうネタが少なくなってきたぞ、困った。


 ただ今年、13歳となった俺は国王様に会う事になってしまうかもしれない。季節が夏となり半袖の服を見て、そろそろあのイベントが発生してしまうと思いながら返事の手紙を書いていった。




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