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134/187

134話 ※アンジェラ※ Prt.5

※注意※

この話にはガッツリと「残酷な描写あり」があります

苦手な方はご注意ください m(_ _)m



 6-19.※アンジェラ※ Prt.5



 ※ ※ ※ 悪役令嬢 アンジェラ=K=モンテネムル 視点 ※ ※ ※



 何故か周りの騒ぎが静かに聞こえ、自分自身の呼吸の音が大きく聞こえる。


 誰かが私に話し掛けている気がするけど、何を言っているのか聞こえない。ただ私は呆然と血だらけで床に倒れる父親を見ていた。


 父様の傍に、ある女性が近付き泣き叫びました・・・私の母様だ。


 悪役令嬢の母親なのに、その性格はとても優しく、父様と私の気まずくなった間を取り成そうといつも頑張っていた母様。その母様が、もう動かなくなった父様に泣きながら呼び掛けている。



 「・・ちっ、作戦失敗。全員、戦闘態勢に入れ」


 私にとって不思議なくらい静かな空間に、やっと声が戻ってきた。そして王城を守る衛兵や騎士団に武器を向けられている一団から男の声が聞こえた。



 父親の近くで蹲っていた私は、ゆっくりと立ち上がる。


 「・・・【闇の盟約の元・我が呼び声に答えよ ≪ジェスバン=ダークナイト≫】」


 私の周りから黒い霧が充満し、召還の言葉を口にする。私の瞳は赤く輝き、逃げ遅れていた周りの貴族達が恐怖の余り固まった。私の事を守るよう騎士団長から頼まれた部下も、私の姿を見て足が震えて動けなくなっている。


 【私の可愛いアンジー、お呼びかな?】


 「・・・ええ。さっそくで悪いけど、ジェスバン。本気で人を殺すわ、力を貸しなさい」


 私の影から地上へ、ゆっくりと昇り出現したのは闇の大精霊であるジェスバン=ダークナイト。これで私の闇魔法の威力は数十倍へと跳ね上がる。容易く人を殺せるくらいに。




 ___アンジェラ様、貴女様にこれから不幸な出来事が訪れます




 フッと思い出す、あの時の姫巫女の言葉。


 何が〝貴女様に不幸が〟よ。私ではなく〝私の周りに不幸が訪れる〟でしょ?やっぱり、たかが予言なんてこの程度ね。信用にも値しない物だったわ。




 「全員、薬を服用せよ。早々に聖女アンジェラを殺害し離脱する・・・行け」


 ふふっ、殺害ですって?そう、私を殺したいのね?でも、人様を殺す覚悟があるのならば自分達も殺される覚悟を持ちなさい。


 「・・・≪マーダー・スケルデッド≫」


 闇属性の上級消滅魔法。闇の大精霊ジェスバンの補助により魔力量は抑えられ、逆に威力は格段に跳ね上がる。


 私の右手から放たれたのは、大きな大きな頭蓋骨。黒い頭蓋骨が口を開き、闇の残留を残しながら敵へと突っ込んで行く。ほんの数秒間だけでも恐怖で動けなかったら、もう終わり。一瞬で頭蓋骨達に食い千切りられるわ。


 暗殺者の何人かは飛んでくる頭蓋骨に体を固めてしまい、その結果4体の下半身だけが残された体が血を吹きながら床に倒れた。綺麗な大理石だった床に赤い血が流れ、周りの者達からは悲鳴が聞こえる。さっさと逃げればいいものを、本当に邪魔だわ。



 ___でも決して我を忘れないで下さい



 無理ね。この暗殺者達が生きている、それ自体が私にとっては許せない事なのよ。お父様を殺したのに、お母様を悲しめたのに、それなのに生きているのは罪深い事だと知りなさい。でも安心なさって、せめてもの慈悲に苦しみも無く一瞬で殺して差し上げたわ。


 他の暗殺者も全員、楽に殺してあげる。だけど、あの指示を出している男だけは別。アレが恐らくはリーダーよね、この暗殺計画の。なら、たくさん、たくさん、苦しめてから殺してあげるわ。生きている事が辛くなるくらいに。


 それにこの男の声、前世で聞き覚えがあるわね。私の一押しだったスザきゅんの叔父でしょう?衛兵の格好に変装をしていて顔が鎧で見えないけど、間違いないと思うのよね。乙女ゲームではスザきゅんイベントの最終ボスで、スザきゅんにとっては父親の仇だった登場人物。でも、この世界では私の父親を奪った。本当に愚かだわ。


 ねぇ、たかがイベントの最終ボス如きが、ストーリーで魔王最高幹部だった悪役令嬢の私に敵うとでも思っているの?


 「・・・≪ブラッディ・ローズ≫」


 闇属性の束縛魔法。床が黒色に変色してゆき、その暗闇から茨が出現して残りの暗殺者共を縛り付けた。忍術で防ごうとしたみたいだけど、その程度の力で闇の大精霊に協力してもらった魔法を防げる訳がないでしょう。でも、数人には避けられてしまったみたい。そういえば、ゲンブのイベント関係で出現した敵って回避力に特化した者達が多かったわね。


 まぁ、いいわ。捕まえた者達から処分していきましょう。


 「・・・≪ダーク・スピア≫」


 狙う場所は暗殺者達の口。もし彼等が暗殺組織『朧』の組員ならば口の中に自爆用の仕掛けがされているはず。そういう説明が、攻略サイトにあった敵の紹介欄に載っていたわ。


 茨に縛られた無防備な者達の下から、黒い槍が出現し顔を貫いた。闇の大精霊の補助を受けているけど、さすがに同時発動はキツイわね。魔力をゴッソリ持っていかれたわ。


 黒い槍に貫かれ、敵の頭から流れる血が茨へと吸収されていく。そして茨から綺麗な黒いバラが咲いた。


 次々と敵を無残に殺していく私に、周りに居る騎士団や衛兵、それにこの国の貴族達や他国の者達が恐怖し震えているのが見えた。もし今、此処にあの騎士団長様が居れば違う結果になったでしょうけど・・・まさか、それも敵の作戦なのかしら。なら騎士団長様を連れて行った、あの部下はちょっと怪しいわね。



 「くそっ・・・【土遁・百器矢行】」


 指示を出していた男、顔は見えないけど声からゲンブであろう人物の周りに多数の矢が宙に浮いた状態で出現した。そして全ての矢が私へと向かけられ、放たれる。


 ・・・あら、その程度なの?


 「・・・≪ダークネス・ホール≫」


 私の周りに突然、黒い穴が空間に出来た。その黒い穴が全ての矢を吸い込む。矢による全ての攻撃が吸い込まれ、敵の驚きと悔しがっている姿が見れた。


 「ふふっ、土くれの分際で、私の闇に敵うとでもお思いですか?」


 「聖女が闇属性魔法を行使するとは聞いていたが、まさか大精霊をも召還する程とはな。聞いていた情報よりも厄介ではないか」


 あぁ、やっぱり。この声はゲンブで間違いなさそうね。


 〝聞いていた〟ねぇ・・・この人も、あの『死霊王』と名乗る人も本当にお馬鹿さん。こんなに闇を纏っている私が〝聖女〟ですって?そんな訳ないのに、笑えてしまうわ。



 「計画は失敗だ、全員退避」


 ゲンブの命令で、まだ生きていた暗殺者達が懐から結晶の様な物を取り出した。ゲンブの言葉からアレはおそらく逃走する為の道具。


 でも、そう簡単に逃がす訳ないでしょう。


 「・・・≪マーダーズ・レイン≫」


 天井に黒い靄が掛かり、黒く細い針が降り注ぐ。指定範囲は暗殺者達だったけど、敵を包囲していた騎士団達にも被害が出てしまう。でも、多少怪我くらいしても良いでしょう?今、この王城には秋斗君が居るのだから死ななければ別に構わないわ。


 あの結晶にどんな効果があるのかは知らない。でも、逃げる隙を与えなければ良い。逃げる暇が無い程に攻撃手段を増やすだけ。乙女ゲームでは主役の1人でもある悪役令嬢アンジェラの魔力をナメないで頂戴。


 「全員、敵から離れて下さい!!」


 私の行ないを先読みしたのか、レギオールが大声で騎士団に言い放った。おそらくは彼なら周りに居る精霊達を見て、私が行なおうとする魔法範囲が分かったのでしょうね。本当、優秀だわ。さすがは攻略キャラね。


 何人かの騎士団員が針に刺され怪我をしてしまったみたいだけど、軽傷で良かったわ。暗殺者達も慌てて避けているみたいだけど無傷とまではいかなかった。


 「・・・【土遁・土鎌倉】」


 ゲンブが身を守ろうと土で屋根を作ったみたいだけど、馬鹿ね。それじゃあ動ける範囲が限られるでしょうに。


 「ジェスバン、今っ!」


 「・・・≪デスサイズ・リーパー≫」


 ゲンブの影から突然現れたジェスバンは、私から魔力を吸い出し黒く大きな鎌を作り出した。そしてゲンブへと一閃し、その鎌から放たれた黒い斬撃は土魔法で造り出された壁をも斬り裂いた。



 「ぐっ、ぁぁあああああ!!くそっ、足がぁ!!」


 壁と共に、ゲンブは片足を切断された。失った足から流れる血を防ごうと手で抑えている。その顔は足を失った痛みで歪んでいて、とても滑稽な姿だった。ついでに床に落とした、おそらくは逃走用の結晶もジェスバンに破壊してもらった。


 どう、痛い?痛いでしょう?もっと苦しんでよ、ねぇ?


 「これで貴方の回避力は意味を無さくなりましたね、良かったですわ。では、次は何処を失いましょうか?右手に左手。そして右耳に左耳。それに右目と左目を順に奪った後は、皮膚を少しずつ剥いで差し上げましょうか」


 片足を失ったゲンブを守ろうと部下達が彼を囲む。だが、その部下達も針に刺され目を失っている者さえいた。


 ふふっ・・・さぁ、たっぷり可愛がってあげましょう。自分から〝殺してくれ〟と頼むくらいに。




 ___きっと光が助けになりますから



 ・・笑わさないで頂戴。光ですって?闇が主軸の私に光なんて訪れるはずが無いわ。暗闇、混沌、絶望、それが私よ。




 「アンジェラ・・アンジェラ!もう、止しなよ。これ以上は本当にマズイ、この場所には目撃者が多数いるのだから!」


 レギオールが私の前に立ち塞がり、私を止めに入った。まったく、邪魔しないで頂けるかしら。


 「そこを退きなさい、レギオ。心配しなくとも、その者達を処分すれば止まりますわよ」


 私の不気味に輝く赤い瞳で睨まれたレギオールは少しだけ震えた。でも退かない。まだ子供でも攻略キャラなだけあって、素晴らしい根性だわ・・・今の私にとっては邪魔でしかないけど。


 「ダメだよ、アンジェラ。他の者達も君を見て怖がっている。これ以上はしない方が良いと僕は思うよ」


 周りに居た屈強な騎士団員でさえ震えている。しかも私に武器を構えだす者さえ居る。私よりも目の前の暗殺者達に武器を向けなさいよ、本当に馬鹿ね。


 「・・・そんなの関係ないわ。怖がられるのには慣れているもの、勝手に恐れてなさ____」


 「アンジェラ、ストップ!フリーズ!アンダースタンド!・・・あれ?アンダースタンドってどういう意味だっけ?」


 私とレギオールが言い争っていた時、ピンクの長い髪に薄ピンク色のドレスを着た女の子が遠くから私に叫んだ。


 生き残った暗殺者達は、紳士服を着た男性と子供に素早く取り押さえられてしまっている。


 「お、落ち着きましょう。そう、まずは冷静にですね。えっと、なんていうか、仲良く手と手を握り合い、血で血を洗い__じゃなかった間違い今の無し」


 必死に私を止めようとしている人物が私達の居る場所へと進み、レギオールの隣まで来てから私に立ち塞がった。ええ、知っているわ。この子は私と一緒で、この世界に来た転生者仲間。



 「・・・そこを退いて、ミネル」



 そして私が、あの時お願いしてしまった特典のせいでヒロインのミネルソフィ役となってしまった、宮沢 秋斗君だ。


 お願いだから、今だけは私の邪魔をしないで。


 お願い 秋斗君。


   ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




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