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131話 解放の快楽(エロい意味じゃないです)


 6-16.解放の快楽(エロい意味じゃないです)



 俺は溜め込んでいた力を解放した。


 流れゆく物をせき止め、それを内封した俺の体は限界を迎えていた。限界に達し、特定の場所で解放された洪水は、溜め込まれたストレスをも解放するかの様に勢いよく流れていく。その水圧は凄まじい程で俺自身も体に力を加えて流れの手助けをして、さらに水圧は増した。


 全ての水を解き放った俺は、溜め込む為に耐えていた精神力にやっとの安息が訪れた。まるで春が訪れたかの様に晴れわたる空、草花の間を飛び交う蝶の幻覚まで見えた気分だった。溜め込んだ力が解放され終えた自身に快楽を感じたのか、それを伝えるかの様にブルリッと全身が震えて口からは吐息が出た。


 ・・・ジャー・・・





 王城で開催されたパーティーに訪れた参加者達には休憩場所として、それぞれ専用の部屋が用意されている。その部屋は王城内にあり、貴族や王族が有意義に宿泊が出来るように最新の設備が備えられている。つまりは超高級ホテル並の豪華な部屋だ。


 乙女ゲームで中ボスだった雷神風神に襲われ激戦を繰り広げた後、俺達は急いで今居る部屋へと逃げて来ました。今頃、変わり果てた庭園を見てしまった騎士達は呆然としているのだろう。あんなにも綺麗な庭園だったので仕方がない、犯人は暗殺者達だよ。


 この部屋は、日ノ国の護衛達に用意された部屋で団体専用に広く設計された部屋だった。もちろん、こちらも最新の設備が整えられていて俺が欲した設備もあった。


 俺はスザクやセイリュウさんの許可をもらう前に、その場所へと飛び込んだ。無駄に豪勢な扉を急いで開け、大理石の床にひかれている何かの魔物の皮を踏みしめながら目当ての場所を目指す。


 ずっと願っていた物がある場所まで辿り着き、閉ざされたフタを勢いよく開け、邪魔なドレスを床にある毛皮の上にカツラごと放り込んだ。下着を降ろして座る事無く立ったまま、体に溜め込まれていた水分を放出した。この時、やっと救われた気分を俺は味わい安心感が体中を巡ったのだ。


 いや~、本当に漏れるかと思った。お漏らしミネルになってしまうのかと思ったよ。


 今回、耐えた記録は人生の中で最高記録をたたき出したに違いない。授業中に味わった苦痛よりも遥かに上回っていたのだから絶対に新記録だ。もしかしたらギネス記録をも抜いてしまったのではなかろうか、そんな挑戦がギネスにあればだけど。




 俺は耐え抜いた激戦を終え、部屋にあったソファーにグデ~と身を任せた。


 「すまなかったな、ミネル君。お詫びに、たくさん食べてくれ」


 セイリュウさんが俺の為に団子やどら焼きを乗せたお盆を俺の前に置いてくれた。うむ、苦しゅうないぞ、あつ~い緑茶も用意せい。


 いや~、日ノ国の和菓子、最高だな!あれから何度か日ノ国へ行こうとチェレンジしたんだよ、無理だったけどな。この王都ランブレスタにも日ノ国の出店はあったけど、たっけーんだよ、値段が!心も超庶民な俺にとっては出来るだけ安く済ませたいと思ってしまう。


 それに船に乗るのも違う国へ行くのにも書類とか許可書とか意味分かんないのが沢山いるんだと。・・・密航?バレたらヤバいらしいのでセイリュウさんに二度としないようにと注意されちゃったから無理。


 セイリュウさんとスザク、他にも何人かの忍び仲間がこの王都へ護衛として来ているらしい。ランブレスタ国王の誕生祭へ姫巫女さんが招待され、護衛として殿様に依頼されたみたい。


 残念ながら、シグマさんは来ていないんだって。久しぶりに会いたかったけど仕方がない。


 その護衛対象である姫巫女さんは今、パーティー会場に他の護衛と一緒に居るみたい。なんでも姫巫女さんはスザクと同い年で、魔道具で撮った写真を見せてもらったけど幼女LOVEな人なら鼻血が出そうになるくらい可愛いっすよ。これで〝~なのじゃ〟が語尾だと、破壊力がハンパないと思うのじゃ。



 「今回の暗殺計画、確かにランブレスタ王国の陛下から俺も伺っていた。しかし証拠となる物が何も無かったゆえ、実は半信半疑であったのだがな」


 俺は串団子をモチモチと食べながらセイリュウさんに今回の計画されている暗殺について知っているのかを尋ねてみた。ついでにロイドさんから聞いた詳しい暗殺計画も説明。ずんだ餅も美味しいが、やっぱりみたらし団子が俺は一番好きだな。


 「でも、今回の襲撃で狙われたのはセイリュウさんとスザクだったんですけどねぇ」


 「確か〝計画の邪魔になる〟と風神は言っていたな。アイツにしては口が軽かったのが気になるが」


 確かに襲撃者の1人である風神が、そう言っていた。ロイドさんから聞いた暗殺対象にこの二人は入っていなかった。おそらくはパーティーが開催された直後に決まった事なのかもしれない。


 護衛を先に殺して、無防備になった姫巫女さんを楽に殺っちゃおうって計画になったのかな。でもセイリュウさんが言った通り、風神があんなにあっさりと教えてくれるなんて思わなかった、雷神じゃあるまいし。絶対に勝てると思ったのか、裏切った上司へのせめてもの礼儀だったのかは知らんが。何かの罠だったら嫌だなぁ。


 そういえば風神と雷神はあの時、何を飲んだのだろう?確かにゲームでステータスアップのアイテムはあったけど飲料系ではなかった筈だし、聖女の身体強化と同等の効果ってやっぱりズルいよな。


 飲料系といえば、せんべぇや団子に合うのはやっぱり緑茶だよねぇ。しかも、なんか味が濃くて高級感がするし良い茶葉をお使いになってくれたのであろう。美味い、もう一杯!


 あ、そういえばレギオの事、忘れてた。俺の事、探してるかな?それともお嬢さん達とのパーティーを楽しんでいるのかな?うーむ、このお茶と茶菓子が無くなったら探しにでも行きますかのう。



 「・・・ミネル、コレも、美味しいよ」


 俺と一緒にお菓子をバクバク食べている甘党のスザクなんだけど、やっぱり何度見ても俺より背が高い。この俺よりも!あのスザきゅんが!・・はぁ、ヘコむわぁ。


 「・・・ミネル、あーん」


 「スザクさんや?俺、別に一人で食べられるぞい?」


 さすがは攻略キャラな。この〝あ~ん〟なイベントを容易く発生させて行なうとは。これはもう決められた運命なのだと思ってしまう。つまりは強制イベント。でも、そのイベントは女の子にした方が良いぞ、スザク。ほら、正面のセイリュウさんが苦笑いをしているではないか。


 「・・・ミネル、両手、塞がってる、あーん」


 「・・・うっ」


 俺の両手にはせんべぇ数枚、串団子数個が握られている。スザクの言う通り、スザきゅんオススメの和菓子を受け取れない。・・・なに?手にある物を置けばだと?置いた瞬間に誰かに取られたらどうするんだバッキャロー。


 「・・・あーん」


 仕方がない、覚悟を決めろ。編集者、モザイクをかけてくれ。逆にバラ色の世界にしたら殴るからな。


 「あ、あーん」


 もぎゅもぎゅ。あ、ホントだ、すんげー美味い。特に白餡が良い感じ。


 「スザク様、お飲み物はどう致しますか?」


 室内には他の人も居たのだけど、この人はスザク達と一緒で護衛の忍さんだってさ。しかも、スザクイベントで牢屋に入れられていた人みたいで、俺の事も知ってた。この人にも女装がすぐにバレて少しヘコんだ。目が合った瞬間に「お久しぶりです、ミネル様」とか言われるんだもんよ。


 俺?俺は「あっ、お久しぶりですぅ」と笑顔で返しておいた。この人の事、覚えてねぇけど。


 「・・・俺、コーヒー」


 「こっ!?」


 こ、こコこ、コーヒーだとぉお!?スザクよ、今お主はコーヒーたる物をご所望したのか!?あの、苦さを口内に広げてしまう凶悪な飲み物を!あの飲んだ人物が大人と認められる儀式的な飲み物を!


 コーヒー。それは大人がお店で買ってでも飲みたくなるという、俺には信じられない液体。アレは飲み物なのか?と思ってしまう程に苦い。味と言い、色と言い、まるで泥みz___げふんげふん。


 「・・・ミネルは、なに飲む?」


 「お、俺もコ、コ、コ・・・こじゃれた緑茶でお願いします」


 あぁ、俺の臆病者!俺よりも年下のスザクがコーヒーを飲み大人へとなってしまったというのに、俺は、俺は・・・・・あれ?もしかして、あの液体が高身長への促進剤?ま、まさかな。


 スザクが平気でコーヒーを飲む姿を眺めながら、俺はこじゃれた(?)緑茶をズズズッと頂きました。あ~あ、背だけでなく舌までもスザクは俺より大人へとなってしまったのか。あの、可愛かった、スザきゅんが・・・うぅ。


 俺は落ち込んだ。凄く落ち込んだ。こうなれば、せんべぇのやけ食いをするしかない。セイリュウさん、おかわり大量に下さいな。・・・あり?何か忘れているような?


 なんだっけ?と思い出そうとしていたら黒色の髪を思い出し、何故か頭の中で大量の真っ○クロ助が発生してしまった為に諦めた。


 「仕方なかったとはいえ、後程ランブレスタの国王陛下に説明と謝罪をしなければならないな。王城で戦いを行ない見事に整備された庭を、あのような無残な姿に変えてしまったのだから」


 「え?セイリュウさん、ランブレスタの国王さんにさっきの事をバラすんですか?無事に見つからず逃げられましたし、別にわざわざ話さなくても・・」


 「そうもいくまいよ。俺が話さなくても時期にバレるだろうからな。あの庭での戦いは日ノ国の関係者によるものだと、調査すればすぐに分かる。それならば速めに謝罪を行なった方が良い」


 えぇ、バレちゃうの?なんで?監視カメラ的なやつでもあったのかな?


 「あの周辺にある監視を目的とした撮影魔道具は全て壊されてあったと先程、部下から報告を受けている。だが、あの場所には俺達に関係する証拠物品が大量に残されてあるからな」


 「あぁ・・・」


 セイリュウさんの言葉で、俺は横に居るスザクを見た。もぎゅもぎゅと和菓子を食べていたスザクが俺の視線に気が付いて、コテンと首を傾げる。


 「・・・国王陛下に頼んで、放置された暗器を返して貰わねばなるまい」


 そうだった、あの時スザクってば敵に暗器を大量に投げつけてたわ。あの独特の武器は忍しか使えないし、その武器をランブレスタ王国で研究道具にでもされたら困るだろうしな。


 ちなみに、あんなにも大量の暗器をスザクがドコに持っていたのかというと、普通に小さなカバンに入ってたんだって。すっごく小さなカバンなんだけど、コレはマジックバックらしい。そうだよねぇ、ファンタジー世界だもんねぇ、気付けよ俺。という事は、回復薬を大量に持っていた風神もマジックバックから出していたのか。


 疑問だった事が無事に解消されたのだが、何やら自分の考えなさを実感してしまった。だから、さらにせんべぇを大量におかわりした。夜、こんなに食べてもヒロイン設定が太らない様にしてくれると信じて。


 ・・・あ、国王にバレるって・・・俺の事も?


 やっべ、セイリュウさんに俺の事は内緒にしてもらわないと。庭園の方は後で直すつもりだけど、壊れた壁や窓、あと庭園に置いてあった光の魔道具は直せないので弁償はしたくない。



    ____ミネル____



 ・・んあ?スザク、呼んだか?いや、でも女の子の声だったような・・・



    ____ねぇ ミネル____



 あ、この声って、いつか聞こえてた声の・・・



    ____会場へ 戻って_____



 ん?会場?それって、パーティー会場の事?



    ____早く 戻って_____



 ・・・ねぇ。君ってさぁ、光の大精霊セレーナ=アークライトなの?



    ____ふぇ_____



 ふえ?笛?ん?何?



    ____・・・・____



 あの~、セレーナさん?だよな?



    ____急いでね ミネル ばいばい____



 え?ちょ、ちょっと待って。あれ、答えは?当ってる?ねぇ、おーい。


 呼びかけるが、返事が返ってくる事は無かった。


 聞こえなくなっちゃったけど、当たってると思うんだ。樹の大精霊であるダイアナさんが、セレーナは精霊達を集めた日、俺に会いに来てるって言ってたし。今日も夜空には精霊達が沢山いて、あの幼そうな可愛い声は多分そうだと思う。


 もしそうなら、大精霊との契約がしたかったんだけどなぁ。光属性が主軸の俺には是非とも欲しい契約。でも、会ってさえもらえなかった。残念トホホ。


 まぁ、とにかく(たぶん)セレーナの声がパーティ会場に戻れと言っていたし戻りますかね。



 あ、そうだ思い出した。真っ○クロ助じゃなくて、小夜さんの事を忘れてたんだった。小夜さんなら暗殺になんて鼻で笑いそうだし、あの最強の騎士団長も傍にいるだろうから安心してた。忘れてた事がバレたら俺が殺されそうだ、気を付けよう。


 部屋から出てパーティー会場まで戻る途中、俺は暗殺対象である小夜さんの他にもエスコートをしてくれたレギオの事を会場に忘れていた事を思い出した。




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