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013話 ソージア村


 1-13.ソージア村



 へぇ~、な~んも無い。しょぼ___もとい、古風で静かな村だな。


 村へと辿り着いた冒険者達は荷降ろしをしている。子供の俺は邪魔にならないように村を探索中。でも遠くへは行かないようにしないと。一応、今この近くにある墓地では魔王の幹部である死霊王が居るハズだから。そして、その死霊王によって集められた闇の眷属共がウジャウジャ・・・うわ~、会いたくねぇ。


 でも、今は太陽が昇っているので大丈夫かな。アイツ等って、ほぼ夜に出現する魔物だったし。


 ん~、それにしても精霊があまり居ない。隠れてるのだろうか?村人も全く見当たらない。近くの墓地で魔物が大量発生すれば避難して当たり前か。


 俺はトボトボと村を歩き周ってみた。遠くで冒険者達の拠点を作る音が聞こえてくるけど、他の音といえば風に揺らされた木の葉くらいだ。うん、ちょっと怖い。この世界では死霊種のお化けとか普通にいるけど、本当に出てきそうだ。戻ろうかな。



 「おいガキ。邪魔だ、退け」


 タジル達が居る場所まで戻ろうとした時、後ろから歩いてくる冒険者に怒られてしまった。顔の怖い冒険者パーティだ。仲間の女性も筋肉もりもり。


 ん?でもさ、俺は彼等の邪魔になっていない。道は広いし、この人達がそのまま進んだとしても俺にぶつかる事はない。それに彼等は全員、ニヤついた顔。・・・もしかして難癖?


 「それは、すいませんでした。どうぞ?」


 まぁ一応、道の端に寄ってみた。こういう奴等とは関わらない方が良い。ローブを被っといて本当に良かった。こういう奴等に顔を覚えられたくないからな。


 「ったく、大事な討伐作戦にガキが着いて来るんじゃねぇよ。邪魔になるだけなんだからよ。さっさとママの所に帰ぇんな」


 「ホントだぜ。ギルマスも何考えてるんだか。こんなガキが居ても仕方ねぇんだからよ」


 俺が道の端に寄ったのに冒険者達は道を通らず、俺の前で話し始めた。あ~あ、絡まれちゃったよ。それにしても、なんていうか・・・テンプレ?こういう転生者がタチの悪い冒険者達に絡まれるのは本当に起こるんだなぁ。


 「おい、聞いてんのかよ。ガキ」


 冒険者達の一人が俺に近づいてきた。


 うわっ、臭っ!この人達、体も息も凄い臭い。鼻がおかしくなりそうだ。きっと装備についた汗や血だと思うけど、綺麗に洗っていないのか?



 「え?なんでボクがあなたの話なんかを聞かなくてはいけないのです?」


 彼等との距離を後退りしながら俺は言ってやった。言ってやったぞ!怖い冒険者なんか怖くないもんね、ばーかばーか。あっ、どーも、どーも。俺の勇気を見てくれた精霊のみなさん、拍手ありがとう。


 「あ”ぁ!?おい、くそガキ。てめぇ、大人をナメてんじゃ____」


 「俺の大事な子に、何をしているのかな?お前達は」


 俺が強気で逆らったのは、コレが理由。俺を迎えに来たタジルを見付けたからだ。でも、いつの間に俺はタジルの大事な子に?そんなに好感度を上げる選択肢なんてあったか?あ、名前の呼び捨てイベント?


 「あ・・タ、タジルさん・・・」


 「答えろよ。俺が大事にしているその子に、お前等は、いったい何を、しているんだ?」


 ありゃりゃ、大人なコイツ等が震えているぞ。タジルってば冒険者ギルドで、そんなに恐れられているのか。


 その後、粗暴な冒険者達は「すいませんでしたぁ!」という言葉を残し、何処かへと走り去った。うむ、ありきたり。笑える。本当、漫画みたいな逃げっぷりだったな。


 「ミネル、俺から離れるな。馬鹿な冒険者共のストレスの捌け口にされたくは無ぇだろ?」


 「うん、ごめん。ありがとう、タジル。助かったよ」


 俺を心配して捜しに来てくれたタジルに礼を言う。攻略キャラから「俺から離れるなよ」とか女の子が言われたら胸キュン言葉だろうに。男の俺が言われたこの場面では、違う趣味の女性達が喜びそうだけど。


 「じゃあ、行こうか。ギルマスが今回の作戦内容と班分けについて、拠点の広場で発表するらしいからな」


 「あ、うん。分かった」


 俺とタジルは一緒に拠点となった中央広場へと向う。でも、その前にタジル達に渡したい物があったんだ。


 「タジル。あのさ、タジル達に渡したい物があるんだ」


 「ん、なんだ?俺へのプレゼントか?嬉しいなぁ」


 「え~と、ちょっと待ってね」


 俺はゴソゴソとタジルから貰った、お古のマジックバックから〝ある物〟を取り出した。


 「はい、コレ。タジル達にプレゼント」


 「ん?何だコレ?」


 「俺が作ったお守りだよ。タジルと、クリスさんと、ジルさんと、トリアさんの分」


 「あぁ、お守りか。ミネルが俺の為に作ってくれたのか?俺の為に」


 「え~と、タジルや皆の為に作ったんだ。今回の討伐作戦で無事でいられますようにって。だから肌身離さず持っていてくれたら嬉しい」


 「分かった。ありがとな、ミネル」


 タジルがしゃがんで俺からお守りを受け取る。そして、頭をガシガシと撫でてきた。首がもげそうだし、頭のフードも外れそうになった。なので俺は右ストレートで奴の腹部に攻撃を放ったが、見事に避けられてしまった。


 くっ、さすがは攻略対象で速さが売りだったキャラクターだ。速すぎて見えなかった。続けて放った右足による跳び蹴りも余裕で笑いながら避けられる。


 そうやって、俺とタジルの攻防は拠点広場に到着するまで続いた。え?イ、イチャイチャなんかしてねぇよ!ふざけんな!違うからなっ!




 冒険者達を集め、ギルマスによる今回の説明や冒険者達を組に分けする発表などがされ、チームが次々と結成された。タジル達は、もちろん最前線の組だった。あの乙女ゲームで見た、タジルの回想ムービーでもそうだったから。


 俺は、その事を知って〝やっぱり〟と思った。やっぱり、この依頼はタジルのトラウマイベントだ。あのイベント通りに話が進んでいる。つまり、この討伐作戦でクリスさんとジルさんとトリアさんの命が・・・・


 乙女ゲームの内容を、ちゃんと思い出そう。確か、タジル達のチームは左側の討伐隊に所属される事になる。そして、本隊から離れた他のチームを助ける為に孤立してしまうんだ。


 そこに運悪く、魔王の幹部である死霊王が出現する。


 死霊王の攻撃にタジル達は苦戦。そして、ついに仲間達が重傷を負い、タジルは仲間が放った魔法によって吹き飛ばされて本隊近くで保護される。


 このイベントをどう壊すか、今日の夜に決まってしまうのか。




本当は〝せんべぇ〟ではなく〝せんべい〟だよな。

でもさぁ漢字にすると〝煎餅〟なんだよ。

・・・漢字、読めん (6 ̄  ̄)ポリポリ

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