124話 攻略キャラ M
6-9.攻略キャラ M
『ランブレスタ国王陛下の誕生祭』
名前そのまんまで、今の国王様が生まれた日を国民達みんなでお祝いしてあげよう的なお祭り。
この王都ランブレスタの全域で賑わい、他国からもお祭りを楽しみに大勢やって来る。そのせいで犯罪発生率も跳ね上がってしまうんだけどな。つまり、その日から騎士団や衛兵隊の皆様は忙し過ぎて眠る暇も無い。
王城で開催されるパーティー。小夜さんの実体験を聞いて、凄いという事は分かっている。〝凄い〟というか〝すんごい〟。これぐれも、これぐれも!食事に目を奪われて、誰かにぶつかる等の厄介事は無いように!と注意され続けて俺の耳はタコだらけ。そこまで言われたら、逆に期待されてる?と思う今日この頃。
王家から招待された者だけが、王都ランブレスタの王城で開催されるパーティーに参加できる。俺は貴族では無いが、この国で一番偉い国王様から招待状を頂いてしまった。行かなければ物理的な制裁が小夜さんから行なわれるので、パーティーには絶対参加となっている。
その誕生祭の前日の夜、『前夜祭』が王城で開催される。この前夜祭は、平民の国民達が祝うお祭りよりも1日早く行なわれ、貴族だけが参加する国王様を祝うパーティーとなっている。要は、庶民達よりも貴族達の方が先に祝うべきだという謎のプライド。
そして、俺は貴族ではないがその前夜祭に出席しようと思っている。
届いた招待状には国王様の誕生日パーティーに是非来てね☆と書いてあったので、その前夜祭のパーティーに出席すればもういいのでは?と思う。国王様とパッと会い、ちょっと話して、サッと帰ろう。
ただ、帰る前に見ておきたい物があるんだよな。日付が変わる0時をもって国王様が誕生した日となるのだが、その0時を迎えた瞬間に大きな花火が王都の空に打ち上げるんだ。
この花火は毎年のもので、乙女ゲームではその打ち上げ花火が告白の場面となっていた。攻略キャラがヒロインに告白した瞬間、空に大きな花火がいくつも打ち上がる。花火の光に照らされる攻略キャラの顔に、それはもうプレイヤーの女性達が発狂したであろう重要イベントだった。
は?俺?何言ってんの?告白なんてされる訳ないじゃん。ヒロイン役だけど、男だし。男だし!←ここ重要テストに出ます。
今回、その誕生祭の前夜祭で聖女アンジェラの暗殺計画がされている。これは乙女ゲームでは発生してない出来事であり、つまりはゲームと違う物語。つまり、何も知らない状態でのイベント発生がされるという事。正直、困った。
今回の主犯であるゲンブは、あれでも暗殺組織『朧』で上忍だった男だ。実力は、もちろんある。
それに、ゲンブ1人だけとは限らない。魔王軍の誰かと手を組んで攻めてくる可能性だってあるんだ。ゲームのイベントじゃないから、詳しい暗殺計画の内容も、俺がどう動けば良いのかも、まったく分からない状況。
とりあえず、ヴァンさんが知っているという事は王家も把握している事だろう。お城の守護騎士さん達に頑張って頂きましょう。もしかしたら、その暗殺計画について陛下から小夜さんに知らせがあったのかもしれない。
あっ、そういえば聖剣の事も忘れたらダメだな。
そして今日、いよいよ誕生祭の前夜祭が開催される日となってしまった。
俺は、モンテネムル家の本邸へとレギオールと一緒にやって来ました。
・・・マーサさんに女装させてもらう為に。
〝女装させてもらう為〟って言い方は少しヘコむ。〝女装させられに〟と言ったら小夜さんに怒られそうだし、〝変装させてもらう為〟という言葉は俺が積極的に女装をするみたいで嫌だな。
到着した俺とレギオは、セバスさんが客間に案内してくれた。小夜さんとマーサさんは今、居ないらしい。どうやら2人は、王妃様からお茶会の招待を受けて王城に居るんだと。貴族の令嬢ってのも大変だよなぁ。
あれ、俺の女装メイクはどうすんの?と、〝もしかして中止かな?〟と期待していたが、セバスさんもメイク術をマスターしていると言われた。「お嬢様の専属執事ですから当然です」らしい。しょぼーん
まぁ、せっかく来たんだし高級お菓子を堪能しますか。そして心の準備ができ次第、特注品で作られたという薄いピンク色のふわふわドレスを着せられ、メイクが施されるのを我慢します。
しかし、さすがは公爵にまでなった家だ。お菓子も飲み物も食べ放題飲み放題、なんて素晴らしいんだ。時間無制限というのが嬉しい。ゆっくり食べられるし、こっそりマジックバックに入れたとしてもバレないし、バレたとしても怒られないから。これなら、俺の心が準備されるのも速いだろう。
ただ、1つだけ。たった1つだけ、問題点が起きてしまった。
「お前達は、アンジェラ姉様の愛人か?」
俺とレギオを見下しながら言う少年。なんでお前が俺等と一緒の部屋に居るんじゃい?
心の準備が整いそうになり、女装・・・いや、変装をセバスさんが施そうとした時、扉がノックされた。そして、メイドさんの声で「マイクフロスト様がお越しになりました」という知らせが入った。
〝マイクフロスト〟。俺はその名前を聞いてビクッとなった。だって・・だって、その名前は____
そして、セバスさんが小声で何やら話していたようだったが、話している途中なのに扉が開いた。
その扉から現れたのは、水色の髪をして濃い青の瞳をした少年だった。セバスさんは頭を手で抑えて溜息をしている。
そして、ツカツカと部屋に入って来て、ドスとソファーに座りさっきの言葉を口にした。俺は〝は?〟状態だったのだが、レギオは目を細めて「ふふふっ」と笑いだした。でも、その目は笑っていない。
「なんで、そんな妄想が出来るんだろうね。まったく呆れるよ。〝愛人〟だって?君はその言葉の意味を分かっているのかい?」
「知っているに決まっているだろう。だが貴族という奴等は当然かの様に愛人が居るのだろう?だから、お前等は姉様の愛人なのかと聞いたんだ。さっさと答えろよ」
そういえばコイツってば、〝貴族〟という存在が大嫌いという設定だったな。母と自分を捨てたのが貴族の父親だったから。あ、ちょっと親近感が湧いた。
まだ子供だが、整った顔が将来ムカつく・・・失礼、女性にモテモテ確実な美形になるであろう事が分かる。実際、乙女ゲームでもそうだったし。今からでも太れば良いのに。
それにしてもコイツ、もうモンテネムル家にやって来ていたのか。
「そもそも、あのアンジェラに愛人だって?面白い事を言うよね。そんなの居る訳ないし、作れる筈もないよ。そんな事も分からないのかい?」
「分からないも何も、まだ会ってさえいないからな。俺の姉になる人物が、どんな人物なのかも知らない」
あり?って事はだ・・・彼は今日、この家に来たって事?
しかし、小夜さんに「こいつら愛人?」なんて聞いたら、人生にピリオドを打つ事になるから気を付けてね。若干、レギオの言葉も半殺し級だけど。
「その前に、まずは名乗ってから質問して欲しかったね。しかも許可無しに入室し、あいさつ無く座ったかと思うと「愛人か?」と暴言。君はどれだけ呆れる程の礼儀知らずな存在なのだろうね。いっそ哀れだよ」
「お前等の様な奴等に礼儀が必要なのか?そのピンク頭は恰好から見て平民だろう?そんな平民と仲良くしているお前にも礼儀なんてものが必要だとは思えない」
あんれー?〝貴族嫌い〟に〝平民嫌い〟も追加されちゃったのん?もしかして〝人間嫌い〟になってる?えー、本物のヒロインちゃんであるミネルソフィ=ターシアが居ないのに面倒が超面倒に進化?退化?しちゃってるよ、どうすんの。
「モンテネムル家の客として招待された者に対し、君は礼儀を行なわないと?君の存在がどれ程、このモンテネムル公爵家に泥を塗っている行為なのだと、その悪そうな頭では理解できないみたいだね?」
「お前は貴族の様だが、所詮は平民と戯れる脳無し野郎の戯言だ。俺に説教なんて、傲慢で無礼極まりない行為だと何故分からない?」
〝傲慢〟も〝無礼極まりない〟も君の事なんじゃ・・・あ!このケーキは、この前の超ウマ高級菓子店の新作じゃ~ん。ひゃっはぁー!
「ふふっ、どうやら君を引き取ったローダリス公爵様は判断を間違えたようだね。こんな出来損ないを養子として連れて来るなんてさ」
「・・・貴様、今の言葉を取り消さないと後悔するぞ?」
あ、セバスさん、紅茶のおかわりプリーズ。同じアップルティでよろしくー。
「あれ?怒ったのかい?本当の事を言っただけ、なんだけどね。出来損ないの君でも、つまらないプライドでもあるのかい?出来損ないの分際なのに、ふふっ」
「公爵位となった俺に、いい度胸だな。その愚かな頭を踏み潰してやろうか」
残念ながらマイク君よ、レギオも公爵位を継ぐ者っすよ。
二人の口喧嘩を、美味しいアップルティをズズズッと飲みながら眺めていた。そして、〝そういえば〟と思い出した事があったのでマイクフロスト君をガン見する。
んー・・・やっぱり彼の体に『鱗』は見当たらないねぇ。もしかしたら着ている服の中なら生えているかも?
そう、『鱗』。
あっ、別にマイク君が魚類と言っている訳じゃないッス。実はこのマイクフロスト君、『半竜人』なんですよ。乙女ゲームの設定では水竜と人間との間に生まれた子供となっていた。
ゲームでのマイク君は『竜化』というスキルが使えたのだけど、半竜人なので完璧な竜にはなれなかった。ぶっちゃけ半魚人に見えなくも・・・あ、でも顔は人間のイケメン顔で耳が魚類__じゃなくて龍族だったよ。
「ミネルも、この出来損ない君に何か言ってあげたらどうだい?」
おっと、乙女ゲームの事を思い出していたらレギオに何か頼まれた。ん~、何か言う、何か言う・・・
「俺の為に争わないで~(泣泣泣)」
はい、もちろんレギオに笑顔で頭を叩かれました。せっかくヒロインっぽいセリフを言ってみたのに。まぁ、俺もちょっと困惑していたからな。だって、ゲームとは性格が違いすぎるから、マイク君。
2018.5.6 楽しかったGなWも終わりますねぇ
投稿が遅くなり、すいませんでした
完結を目指して投稿していきます
|電柱|・ω・`)ノ