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012話 せんべぇ食べたい


 1-12.せんべぇ食べたい



   □ ■ □ ■ □ ■



 「俺には幸せになる権利なんて無ぇんだ。仲間を見捨てた俺には・・・な」


 「なんで?貴方の仲間は、貴方に生きて欲しかったのよ?なのに幸せに生きるのでは無く、苦しんで生きて欲しいと貴方の仲間達は思っていたの?」


 「アイツ等は・・・そんな事、思わない・・・」


 「でしょ?よく思い出して、タジル。大切だった仲間達の事を。貴方を助けた、優しかった仲間の事を」


 「・・・・・・・」


 「そして、考えてみて。自分達の命よりも、貴方を助けようとした。そんな仲間達がタジルの幸せを望まなかったと貴方は本当に、そう思うの?」



    _____  回想ムービー  ______



 「俺は・・・しかし・・・アイツ等を見捨てた俺には・・・」


 「タジル。タジル、こっち見て。貴方は十分苦しんだ。十年以上も苦しんだのよ?もう救われても良いでしょう?貴方は長い時間を〝悲しみ〟と〝後悔〟で苦しみ、それは罰となったわ」


 「そう・・なのだろうか・・・」


 「ええ。そうよ、タジル。貴方には幸せになる権利があるの。貴方の大切だった仲間達も、きっとそれを望んでいる」


 「・・・・・・」


 「だから・・・だから、もう苦しまないで?お願い、タジル」



 その後、二人は抱き合い、熱い口付けを交わした。



    □ ■ □ ■ □ ■




 はぁ~。


 俺はあの時、せんべぇをバリバリ食べながら会話ベントを見てたっけなぁ。久しぶりに食べたいなぁ、せんべぇ。


 やっぱり、せんべぇには海苔だよ海苔。あんな素晴らしい相性を発見した人は本当に凄いと俺は思うわけよ。ずっと食べ続ける事ができたもん。なんて画期的なアイディアだ。初めに発見した人は〝なんとか賞〟とか貰って良いと思う。


 まぁ、そのせいで晩御飯が食べられなくなってしまい、母さんに怒られたんだけどな。


 久しぶりに食べたいなぁ、せんべぇ。




 ポッコポッコと馬の蹄が、歩く音を奏でている。俺は、その馬達が引く馬車の中に居た。とうとう討伐隊が組まれ、依頼場所である東の村へと向かっているのです。


 乗り心地は悪くないよ?この乙女ゲームは日本製の物だから、それなりに技術力が発展してるし。でも自動車が存在しないのは、やはり設定上マズいから?まぁ、こんな西洋の昔みたいな時代に自動車なんてあったら違和感ハンパねぇわな。


 馬車の中では風景を眺める事しかする事がないので乙女ゲームの事を思い出していた。


 だけどさ、乙女ゲームに出てきた〝タジル〟と、今の〝タジル〟は性格が違い過ぎない?どっちかっていうとジルさんの方が乙女ゲームに出てきた〝タジル〟っぽい。


 今のタジルは、なんていうか・・・ホスト?そう、ホストみたいに軽い感じがする。ナンパをしている所は見た事ないが、なんというか・・・うん、ちゃらい。


 そんで、今そのホスト・タジルは俺の横で爆睡中。こいつ、本当に朝が弱いよなぁ。これからお前のトラウマイベントが発生しようとしているのに呑気なモノだ。


 まぁ、そんなタジルの呑気さを俺は守りに来た訳だけど。ほら、俺ってば一応ヒロイン役だし。攻略キャラのトラウマイベントなのだから、頑張るさ。


 俺はそう決意して、ローブを深く被り直した。




 馬車に乗り込んだ時、実は俺は目立っていた。


 魔物討伐へ行く馬車に、小さな子供が乗り込もうとしていたから当然だ。怖い顔の冒険者達がより怖くなり、鋭い目で睨んできた事も多々。ちびりそうになりました。


 でも、そんな怖い冒険者達の目から俺を守ってくれたのが、今も俺の隣で寝ているタジルだった。俺の頭をガシガシと撫でながら話した後、冒険者達に一睨み。そのタジルの睨みに、たじろぐ冒険者達。漫画風にセリフを付けるなら「くっ、なんて強い殺気だ!」とかかな?分かんないけど。


 ポッコンポッコンと歩く馬。ユラユラと揺れる小さな俺の体。ヒソヒソと話す冒険者達。


 何人かは今回の討伐依頼の為に、道具や武器などの相談をしているみたいだけどさ。俺の事をさっきから睨んでくる人達も居る。見るからに悪者風。


 そんな悪者の事が気になり、彼等がボソボソと小声で話している内容を風の精霊達に頼み聞かせてもらう。


 〝ガキがなんで居んだよ〟 〝邪魔〟 〝怪しいガキだ〟 〝さっさと帰れ〟


 などなど、悪口ばかり。まぁ、思った通りの言葉の羅列。聞くんじゃなかったなぁ、ヘコむ。


 彼等が、その言葉を言いながら俺へと迫ってこないのは俺の隣で寝ているタジルが怖いから。タジルは冒険者達の間では結構な有名人らしい。まぁ、乙女ゲームの重要人物であり、魔王の討伐隊にも選ばれたタジルだ。実力があって当たり前か。


 そして、やっと俺達は東の村『ソージア村』に辿り着いた。




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