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114話 ※レギオ※ Prt.4


 5-27.※レギオ※ Prt.4



 ※ ※ ※ 攻略キャラ レギオール=J=ミクシオロン 視点 ※ ※ ※



 僕は貴族学園の中等部にある屋上へと来ていた。


 この屋上から下校の時間となり家へと帰って行く生徒達を見下ろしていた。空も夕暮れへと色を変えていき、このまま茜色になれば此処からの景色はさぞ綺麗なのだろうと思った。


 この屋上には初めて来たけど、なかなか見事な景色じゃないか。でも今日、僕はこの場所に来た理由は風景を眺めにでは無い。僕はこの時間、この場所に、あの女を呼び出したんだ。


 〝放課後、屋上へ来てくれないかな?偽者聖女さん〟


 そう書いた手紙を彼女の机に入れておいた。誰からの手紙かは書いてはいない。放課後までに僕だと判明して欲しくなかったからね。


 『偽者聖女』


 僕は手紙にそう書いた。


 ミネルは確実に『聖女』なのだと分かった。それならば、アンジェラも『聖女』なのか?二人の聖女が存在するというのは可能なのか?


 僕はそう疑問に思い、書物の保管室で聖女について書かれたあらゆる本を調べた。やはり、どの本にも歴史上、聖女が二人いた記録なんて残されていなかった。


 しかも、聖女について書かれたある古い書物には『光』や『神聖』などの言葉が記されている。


 アンジェラは確かに光属性が使える。しかし、主軸は闇。だから、光が使えたとしてもかなり弱い。


 聖女なのに光属性が苦手?それは・・・本当に聖女なのだろうか?


 だからこそ僕は、アンジェラへの手紙に『偽者聖女』と書いておいた。







 「お待たせして申し訳ありませんわ、レギオール様」


 放課後の屋上で待つ事、数十分。侯爵令嬢であるアンジェラ=K=モンテネムルがやって来た。そして微笑みながら僕に話しかける。


 さすがは優秀な護衛であるグレイソンだね。彼女以外、誰もこの屋上へは来なかった。実に素晴らしい腕前だよ。


 「呼び出して悪いね、アンジェラ嬢。君と少し話したい事があってね」


 僕の言葉に、ニコリと微笑みながら彼女は僕が送った手紙を取り出した。


 「お話とは、この手紙に書かれた〝偽者聖女〟という内容についてでしょうか?」


 「その前に、その話し方を止めてくれないかな?寒気がするのだけど」


 この女が普段、猫を被っている事は知っている。彼女が1人の時に風の精霊達を使って盗聴した事があったからね。


 アンジェラが〝ふぅ〟とため息をついた。そして、再び僕を見た時は笑顔が消えていた。



 「レギオール、なぜ私が〝偽者〟だと思ったのかしら?詳しく聞かせて下さる?」


 やはり、これがアンジェラの本性か。


 僕も大概だと思われるかもしれないが、彼女も同じ10歳だとは信じられない。幼さがまるでない知性的な瞳と、完成された雰囲気がそう語っている。


 これが10歳の子供だとは到底思えないね、僕には。やはり君は恐ろしいよ。


 「僕のスキルは知っているよね?そのスキルのおかげで先日、精霊達が僕に興味深い事を教えてくれたんだ」


 「・・・何をです?」


 「驚いた事に君では無い、ある人物が『聖女』なのだとね」


 「・・・っ!?」


 僕の言葉に、珍しく驚く姿を隠さないアンジェラ。


 本当は精霊達では無く、遥か上位の存在である〝大精霊様〟から教えて頂いた事なんだけどさ。そこまで教える気は無いよ。


 「だから君に聞きたいんだけど、本当に君は聖女としての____っ!?」


 僕が話している途中で、アンジェラの瞳が赤く輝きだした。僕は驚きと共に警戒をする。


 「レギオール・・・詳しく聞かせなさい。精霊達が教えた、その人物とは誰?」


 「・・・僕が言うと思うかい?」


 「ええ、無理やりにでも言わせるから。痛い思いをする前に教えた方が賢明よ」


 「何を言っているんだい?君はこの場所が何処か分かっていないのかな?貴族学園の校内で、許可なく戦闘をしたら____」


 「・・・≪サイレント・ブルーム≫」


 アンジェラが突然、魔法を使用した。


 僕達が居た空間が、まるで白と黒の世界に塗りつぶされたように変化した。足元には先程までは無かった黒い花が咲いている。これは結界か幻影?・・・いや、違う。隠蔽魔法か。


 「詠唱破棄なんて、とんでもない事をするね。伝説の英雄にでもなるつもりかい?」


 今、この女が使ったのは『無詠唱』。


 確かに、そんなスキルがあると書物で読んだ覚えがある。何百年も使える者が存在していないともね。本当に恐ろしい女だよ、君は。



 「これで教師やその他大勢にも・・そして、貴方の護衛にも邪魔されないわね。ゆっくりとお話しをしましょうか」


 「仕方がないね、僕も本気で相手になってあげるよ。後悔、しないでくれよ?君が悪いのだから」


 「私に勝てるとお思いで?」


 「君の闇なんて、僕の炎で照らしてあげるよ」


 「ふふっ。そんな小さな灯で、私の黒が晴れるかしら?」



 学園の屋上で彼女の漆黒と、僕の紅炎が静かにぶつかり合った。







 その後の事はあまり思い出したくはないが、僕は・・・負けた。


 同年代の子と戦って、初めての敗北だった。というかあり得ないよ、あの魔力量は。ミクシオロン家でも歴代最高とも言われた僕の魔力量よりも、少なくとも倍以上は保有していると思う。やはり学園で行なわれている魔法実技試験の成績は演技だったのか。


 悔しいが、僕の方が弱者だと決した。受け入れ難いが、受け入れざるを得ない。それが事実なのだから。


 敗北者の僕は、勝者である彼女に教えなければならない。大精霊様が聖女だと教えてくれた、精霊達がとても親しんでいる〝ある人物〟とは誰なのかを。・・・ごめんよ、ミネル。





 あれから、嫌だったけどアンジェラをミネルに紹介した。結果、ミネルが怒らずにいてくれて良かった。絶対に嫌われたくは無いからね。


 ミネルを僕の屋敷へ招待する為に、まずは仲の良い友達になる必要があった。長年の悲願、成功させてみせると決めたんだ。


 でも、それが僕にとって難題だった。



 __とても綺麗な置物を君の為に買ってきたんだ。見てご覧よ、ミネル。


 __ミネルの笑顔は可愛いよ。それにミネルの髪はとても綺麗だね。触っても良いかい?


 __今日も君に出会えて嬉しいよ。今度、一緒に歌劇場へ行かないか?僕とミネル、二人っきりで見に行きたいな。



 正直に言って、間違えていると分かっている。


 ミクシオロン家の書庫には〝友達を作る本〟なんて無いから、仕方なく〝恋人を作る方法〟を参考にしてしまったのは失敗だったかな。




 そう、僕は友達の作り方を知らない。


 僕にだって、おかしな行動をしていると分かっているさ。でも、どうすれば友達になれるのか分からないんだ。今まで僕の友達は精霊達だけだったからさ。正直、困ったよ。


 でも、そんな僕にミネルはちゃんと付き合ってくれている。この前も二人で一緒に、王都にある公園の池でボートに乗って遊んだ。・・・ミネルも僕も顔が赤くなってしまったが。とても恥ずかしい遊びだった。


 あの時はミネルにも怒られてしまった。でも___



 「ごめんよ、ミネル。そんなに怒らないでほしいな。僕が悪かったからさ」


 「すんげぇ恥ずかしかったんだからなっ!しかも、なんか女の人達には嬉しそうにガン見されるし!」


 「本当にごめんね。あ、ミネル見てごらん。美味しそうなクレープ屋さんがあるよ。奢ってあげるからさ___」


 「マジで!?やった!行こうぜ、レギオ♪♪」



 ・・・ミネルはお菓子類に弱い。いや、もしかしたら食べ物関係の全てが弱点なのかもしれない。それも高級になるほどミネルの喜びは増す。


 ならば、これからは高級なお菓子で釣ってみようか。食べ物で機嫌がすぐに良くなるとは面白い生き物だ。そんな単純なミネルが、とても可愛いと僕は思うよ。でも、悪い誰かに騙されないように気を付けた方がいいかな。


 さて、この調子でもっとミネルと仲良くなろう。そして友達になって・・・


 そういえば〝友達〟というのは、どの程度から〝友達〟というのだろう?



    ○ ● ○ ● ○ ● ○ ● ○




 僕はそれからも、ミネルとの友達昇格作戦を日々考え実行していた。だけど今日、僕にとってとても嬉しい出来事が起きた。


 母様の専属メイド長であるリンナからの報告で知らされた。それを聞き、確かめる為に急いで屋敷の庭園へと向かった。


 辿り着いた庭園で見たのは、綺麗な花壇を鑑賞している僕の母様だった。僕が覚えている限り、外へは一度も出なかった母様が、車椅子ではあったが外にお出になっていた。


 やって来た僕に気が付いた母様は、優しそうな顔で「おはよう、レギオちゃん」と話し掛けてくれた。



 ・・・母様、いつもお願いしていますが〝ちゃん〟付けは止めて下さい。


 僕はそんな事を思っていたのだが、それと同時に自然と涙が流れた。自分でも不思議で、僕は泣くつもりも無かったのに涙が止まらない。母様が外に居る事が、こんなにも嬉しいなんて。


 僕の小さな「おはようございます、母様」という言葉に、また母様は綺麗な笑顔を見せてくれた。その姿に僕の涙が止まる事は無かった。



  ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




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