表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
110/187

110話 古傷

※注意※

この話には やんわりと「残酷な描写あり」があります

苦手な方はご注意ください m(_ _)m


 5-23.古傷



 アンジェラの父ローダリス侯爵さんの指示で、傍で控えていた護衛の男が剣で斬ったのはメイドさんだった。その女性が、ゆっくりと倒れる。


 そして、悲鳴をあげる事なく床に倒れたメイドさんからは真っ赤な液体が流れ、床を赤に染めていく。その事態に俺は呆然とし、部屋も静まり返っていた。



 なに、え、なに、これ、ひと、ち、たおれて____



 「マーサ!!」


 隣に居た小夜さんが叫び、我に返る俺。ボーっとしている場合じゃねぇ!


 血を流し続ける女性の近くまで行く。剣で斬られた傷が、どれ程ひどいのか医者では無い俺には分からない。でも、胸が上下しているから死んではいない。


 「・・・【傷つき・哀れなる者に・奇跡の癒しを・神々からの・祝福です ≪シークレット・ブレスキュア≫】」


 光属性の上級回復魔法。もし間に合わなければ蘇生魔法も考えているが、今は光の精霊が少ない。そんな状況で蘇生魔法が成功するのか分からない。


 メイドさんから流れていた血は無事に止まり、傷は無くなった。恐る恐る、彼女の脈を測ろうとした時、斬られて床に倒れていた彼女が立ち上がった。


 うえぇ!?


 メイドさんは驚く俺に一礼し、侯爵さんに近付いていく。何?え、何!?ほんと何!?


 「どうだ、ミシェル。傷は」


 「はい、侯爵様。ご覧の通り、跡形もなく治りました。血が足りないのか、少しだけ気分は悪いです」


 「そうか、ご苦労。助かった」


 「勿体なきお言葉。侯爵様のお役に立ち、嬉しゅうございます」



 ・・・・・は?



 「えーと。どういう事、ですか??」


 「すいません、ミネル様。私はローダリス様の専属メイドで____」


 「『マーサ』よ?彼女の名前は『マーサ』。ね?そうでしょう、『マーサ』?」


 いや、小夜さん。さっき、侯爵様がおもいっきり〝ミシェル〟って呼んでたじゃん。


 「・・・はい。私の名前は『マーサ』です。この度は助けて頂き、ありがとうございました。そして、申し訳ありません。ミネル様を試させて頂きました」


 あ、『マーサ』で良いんだ。それで良いんだ、そうですか。でも、小夜さんは『ミシェル』という名前の何が気に食わんのかね?


 ん?〝試させて頂きました〟・・?それって、つまり・・・


 「お父様も無茶しますわね。マーサに〝もしも〟があったら私、怒りますわよ?近日中にお父様から私の専属メイドに引き入れるつもりですのに」


 「それは心配いらん。護衛を任せているコヤツの剣の腕は一流で、扉の前では治癒師を大勢待機させておる。もしもの時には、急ぎ馬車の手配もしておるので治療院まではすぐだしな」


 そ、そこまでして知りたかったの?なんかスイマセン。俺が証拠を見せる事を断ったから、ドえらい事になっちまったよ。


 え、つまりは俺のせいか?いやいやいや、俺は悪くねぇよな?



 「お父様。これで、ミネルの実力をお分かりになられたでしょう?それに、ミネルならばマーサの古傷も跡形なく消せると思いますわ」


 「あの古傷をか?そんな事が可能なのか?」


 ん?小夜さんの言葉に驚いている侯爵様とマーサ(ミシェル)さん。古傷?昔負った火傷とかそういうの?


 乙女ゲームでも、そんなイベントあったなぁ。顔に大火傷を負ったご婦人をミネルソフィが治療するイベント。しかも、ヒロインちゃんは治療の謝礼として大金をくれるとご婦人から言われたのに断ったんだよ。うん、ありえないよな。俺だったら喜んで懐に入れるッスよ。



 「ミネル君。もし、それが可能ならば頼みたい。料金は私が払う、君の言い値でもかまわない。だから是非ともお願いする」


 い、言い値でもかまわない、だと!?


 聞き間違いじゃ無いよな!?この場合「YOUの全財産を俺ッチにちょーだい!」と言ったらくれるのか!?・・・そんな事を言えば小夜さんに殺されそうだけど。言わないよ俺、いのちだいじに。


 「マーサ。ミネルに傷を見せてあげて」


 「はい、お嬢様」


 小夜さんに返事をしたマーサさんが、上着のボタンを外し始めた。


 お、おおう。目線が泳ぐ俺。み、みみ見て良いんだよな?そうなんだよな?大人のレディーが目の前でストリップショーを始めてしまったが、これは治療の為だ。やましい心を捨てるのだ俺よ!


 ・・・捨てられるか、ボケェ!俺は見た目10歳の子供だけど、中身は青春ど真ん中の15歳だったんですよ!?邪まな眼差しでガン見してまうわ!



 マーサさんが胸より上の箇所をはだけさせ、俺が見えるように服を開けた。


 彼女の首元には痛々しい古傷があり、まるで首を刃物付きの何かで縛られたような跡があった。





 ・・・そういえばさ、みんな知ってるぅ?ミネルソフィって右後ろの毛に癖毛があるんだよ。


 たまに、ちゃんとお手入れをしていないとピョコン!って毛が跳ねるんだよ。可愛いよなぁ。


 「ミネル、天井を見ても何も無いわよ?遠い目をしてないで現実に戻って来なさい」


 俺は乙女ゲームのピンク世界に旅立って、現実逃避を遂行した。なのに、小夜さんが無理やり俺を連れ戻した。


 古傷→傷跡→大怪我→怪我→毛が→癖毛がと見事な現実逃避が出来たというのに、ひどいよ小夜さん。



 「ミネル、マーサは元騎士団の隊員だったの。その時、任務で負った拷問の傷が今でも全身に残っているのよ」


 ご、ごごご、拷問っすか。それは、ひど・・・え、全身!?全身に拷問の跡!?にぎゃーーー!!また乙女ゲームの要素が吹っ飛ぶような単語がぁ!


 「どうにか治せないかしら?私からも、お願いするわ。どうか、マーサの体に刻まれ、残されている傷跡を治療してもらえないかしら」


 女性の体に、なんつ~モンがあんだよ。見てるだけで俺の首も痛くなってきた。


 よっしゃ、ヒロイン役である俺に任せんしゃい!似たようなイベントもあったし、大丈夫だと思う。


 ・・・あれ?それなら俺の実力を知るのに、さっきマーサさんが斬られなくても、この治療を見せれば良かったのではないのかね?




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ