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011話 回復魔法


 1-11.回復魔法



 乙女ゲームではヒロインちゃんの幼少期、この町の孤児院で育つ。


 母親に捨てられ、孤児院の近くで倒れたヒロインは、この孤児院の先生に保護される。そして無事に成長して、10歳になった日に父親の関係者が迎えに来る。それまでは他の孤児達と共に、この場所で大切に育てられた。


 俺は今、その孤児院へ来ている。ここがゲームのストーリーでヒロインちゃんがお世話になっていた孤児院か。ちょっと感動。


 古さを感じるが、ちゃんとした木造作りで広い庭もあり綺麗にされている。隣には小さな教会もあり、子供達が掃除をしていた。


 その教会の神父とタジルは知り合いみたいだ。さっき、仲良く話していたから。



 「この部屋にるっそお兄ちゃんが寝てるの。絶対に安静にって言われたんだよ」


 そう言って男の子が部屋の扉を開けた。すると、中から苦しそうなうめき声が聞こえてきた。


 子供達の就寝部屋にしては綺麗だ。もっと散らかっていると思っていたけど、ちゃんと整理整頓を心掛けているようだ。俺とは大違い。


 そして、部屋にある二段ベットの下のベットで眠る、見覚えのある茶色の髪をした子が見えた。


 「見舞いに来たよ~、ルッソ君」


 俺の声に、ゆっくりと瞼を開けるルッソ君。やっぱり苦しそうだ。


 「・・・ぐっ・・・お前は・・あの時の」


 「あ~、苦しいなら動かない方が良いよ。寝て、寝て」


 ルッソ君の顔色は少し悪い。元気だった時の顔を見ているから、その体調の悪さが分かる。これは確かに、あの子達が心配して泣いちゃうのも納得だ。


 「じゃあ、タジルさん。邪魔なんで子供たちと外に出ていて下さい」


 俺は着いてきたタジルを子供たちと一緒に外に出した。何やらブーブー言っているが、知るか。


 そして部屋の扉を閉めて、光が入ってきている窓の方を見た。



 「じゃあ、光の精霊さん達。僕の場所まで集まってくれるかな」


 窓際で楽しそうに踊っている森に居た精霊達と、この町に居た光の精霊達を呼び集める。楽しそうにクルクル踊りながら来るのねん、可愛いけど。


 「・・・な・・にを・・?」


 他の人達を部屋から追い出し、何やら独り言をしているように見える俺に困惑するルッソ君。


 そういえば精霊達は普通の人には見えないんだったな。今の俺は1人で喋る怪しい子供・・・うわぁ、それは嫌だな。これからは気を付けよう。


 「これからボクがする事は内緒な?誰かに言ったら怒るよ」



 そして俺はヒロインちゃんが最も得意としていた魔法。光属性の十八番でもある『回復魔法』をルッソ君に使った。




 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




 「さすがは光属性使い。まだ子供のミネル君でも、あの重体の子供を完全に治すなんて素晴らしいな」


 俺の隣で歩くタジルがニヤニヤしながら俺に言う。今はタジル達の拠点の屋敷へ戻っている所だ。買いたい物も全部買えたからな。



 あの後、無事にルッソ君は完全復活。その姿を見て子供たちは泣いて喜んだ。光の女神様らかの加護は本当に凄いな。あんなに顔色の悪かったルッソ君が元通りに治ったからな。


 回復魔法は無事に起動した。そして、結果も大成功。魔力にも余裕がある。


 ゲームでは何回も何回も使っていたヒロインちゃんの回復魔法が、俺にも使えた。そして、その威力も確認できた。初級魔法だったのに、あんなに苦しんでいたルッソ君が歩けるほど元気になれたのだ。


 なら・・・ギルマスからの依頼、補助要員として受けてもいいか。後方で怪我人を治す程度ならば、敵と戦う訳でも無いし。それに、本当にタジルのトラウマイベントだったら・・・


 それにしても、あの〝ルッソ〟って名前、な~んか聞き覚えがあるんだよなぁ。確か、乙女ゲームのプレイ中に聞いた覚えがあるんだけど・・・思い出せない。


 それにルッソ君の弟というルード君。ルッソ君が元気になった事に泣いて喜んでたけど、その〝ルード〟って名前にもなんか聞き覚えがある。・・・・何だっけ?本当に思い出せん。



 「タジルさん、もしも先程の事を言い触らしたらボクは旅に出ますので探さないで下さい」


 「はっはっ、分かったよ。でも、ギルマスには知らせるからな?君が回復魔法が使える事」


 今回の大討伐なら、俺の回復魔法は役に立つだろうし良いけど。ギルマスが言い触らした場合も、俺は旅人になるからな。


 「・・・分かりました。でも、ギルマスだけですからね」


 「あと、黙っててあげるから〝ミネル〟って呼んでいいか?それと俺の事は〝タジル〟って呼び捨てにしてほしいな」


 「ん?なんでです?」


 「小さな子供から〝さん〟付けで呼ばれるのって、すっごい疎外感がするから」


 「えっと、はい、分かりました。よろしくです、タジル」


 「おう。よろしくな、ミネル」


 一緒に買い物をしたら仲が深まった。・・・これもヒロイン設定だろうか?好感度アップ?


 会話イベントをしたら好感度が上がるのは、乙女ゲームにとって当たり前の設定だからな。タジルってば攻略キャラだし、その可能性は高いかも。





 タジルのトラウマイベントまで、あと九日。


 他に準備できそうな物があるか考え中。まぁ蘇生魔法が使えたら一番良いけど、まだ無理だろうし。なら、せめて範囲回復魔法くらいは使えるようになりたい。


 あ、そういえば死霊王は呪いを掛けてくるんじゃなかったっけ?確か戦闘で、そんな状態異常になった気がする。



 俺は冒険者ギルドから頼まれた依頼を受けると決めた。ギルマスにも伝え、その日まで町を楽しみながら対策を練った。


 元気になったルッソ君や弟のルード君、そして孤児院に居る他の子供達とも一緒に遊んだ。一緒になって遊ぶ精霊達も楽しそうだったし、子供の頃に戻った感じがとても楽しかった。



 そして、あっという間に依頼の日がやってきた。




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