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105話 ※アンジェラ※ Prt.2

※注意※

この話には ほんのりと「残酷な描写あり」があります

苦手な方はご注意ください m(_ _)m


 5-18.※アンジェラ※ Prt.2



  ※ ※ ※ 悪役令嬢 アンジェラ=K=モンテネムル 視点 ※ ※ ※



 私は確実に害虫共を消し去る為に、ゆっくりと敵との距離を縮めていった。そうすると、彼等の声がはっきりと聞こえ、内容も分かってきた。


 「でも、病気、消された、オラ達、もう、何も、出来ない」


 「あのイカれた魔法陣も、このままずっと維持できる筈が無いでしょう?ならば、魔力が消耗し、あの忌々しい魔法陣が消え失せた所でもう一度____」


 病魔師と話していた死霊王が話しの途中で私が居る方へと振り向いた。おかしいわね、バレちゃったのかしら?



 「ソコに隠れているのは、どなたです?出てこないのであれば攻撃しますよ?」


 やっぱり、バレちゃったみたい。本当に残念だわ。確かゲーム情報では死霊王も私と同じで『闇』が主軸。なら、私の隠蔽魔法に何らかの違和感でも感じたのかしら?


 さてと。敵にバレたのなら意味がありませんので、隠蔽魔法を解く事に致しましょう。



 「まぁ。貴方のようなお馬鹿さんに私の隠蔽魔法が見破られてしまうだなんて、ひどく残念に思いますわ」


 空間が揺らめき、隠れていた私の姿が現実となる。そんな私を見た死霊王が目を見開いて驚きました。でも、いいのかしら?隙だらけよ?


 「なっ!?貴様が、何故_____」


 「・・・≪デス・デリート≫」


 私の右手から放たれた闇属性の攻性魔法。闇で形成された、その大きく黒い手がお馬鹿さんに襲い掛かる。


 「____くっ」


 「あ、あ、あああああああ、オラの、オラの腕、腕がぁあああああ」


 「ガ、ガダルぅうううう」


 だけど、標的だった死霊王には避けられてしまいました。少女の気持ちがこもっている物体を避けるだなんて、酷いと思いません?悪役令嬢である私の一番得意とした消滅魔法を差し上げたのに。


 私が放った魔法は、死霊王の後ろに居た病魔師に当たってしまいました。ざ~ん念、失敗失敗。


 「もう、避けないで下さる?せっかく貴方を痛みも苦しみも無く、消し去って差し上げようとしたのに。貴方のせいで後ろに居た___」


 「き、貴様ぁあああ!!何故だ!?貴様は王都に居るはずではないのか!?聖女アンジェラ!!」


 「女性の話は最後まで聞きなさいよ、無礼者」


 あら?そういえば私もさっき同じ事をしたかしら?まぁ、相手は女性では無いので私は無礼ではないわよ?


 それにしても・・・ふふっ、『聖女』ですって?


 笑わさないで頂きたいわ。この前の襲撃の日に、あれだけの闇属性で生成された攻性魔法をお返しして差し上げたのに、まだ私が聖女だと勘違いしていますの?本当にお馬鹿さんね。




 「よ、よくも、ガダルをぉぉおおおおお!!」


 私と死霊王が向かい合っていると、腕を消滅させていない方の病魔師が私に叫んできた。


 あら、嫌だわ。その病魔師の片割れが私に向かって、口の中から汚らしい息を吐いて攻撃してきました。なんて醜い攻撃かしら、見た目と同じね。


 「・・・≪ダークネス・ホール≫」


 この世界の闇属性には、相手からの攻撃を防ぐ防性魔法が少ない。


 でも、存在しない訳ではない。そして、この魔法は悪役令嬢アンジェラが扱える数少ない防御の為の魔法。


 私と敵との間に生まれたのは黒い渦。空間にポッカリと穴でも開いたかの様な現象。その穴は全てを吸い込み、全てを飲み込む。無くなってしまったモノが何処に行くかは知らない、別にどうでもいいし。


 病魔師の片割れが放った醜い攻撃を全て吸い込む黒い穴。相手の悔しそうな顔も見れて大満足です。死霊王も、この前みたいに馬鹿丸出しの闇属性による攻性魔法を放とうとしてこなかった。少しは理解したようね、悪役令嬢アンジェラには闇属性が効かない事を。


 乙女ゲームでは同じ魔王の幹部だったけど、『闇に耐性がある死霊王』と『闇を無効化させる悪役令嬢』では、その性能には大きな違いが出る。そこの病魔師も同じ幹部だったけど、彼等は『風』が主軸だったはず。そんな微風で私の黒を防げるのかしら?



 でも、この場面で一番の厄介なのは、認めるのは悔しいけど死霊王よ。彼の〝闇属性に耐性がある〟というのが本当に邪魔でしかない。私は全属性が使えるけど、魔王幹部である死霊王に私が苦手とする拙い光属性の攻性魔法は効果が無いに等しいから。


 なら、私がやれる事は一つだけね。


 「ジェスバン、次の一撃で決めますわよ。協力なさい」


 【うむ、良かろう】


 私の邪魔にならぬ様、闇に潜んでいたジェスバンが現われ返事をする。



 この場面で私にとって一番良い行動は、死霊王の闇耐性では防ぎようの無い高密度な消滅魔法で攻撃する事。



 ヒロインである聖女ミネルソフィ=ターシアに光属性の最大上級魔法があったように、そのライバル役だった悪役令嬢アンジェラ=K=モンテネムルにも闇属性の最大上級魔法があった。


 でも、この世界に転生した時は知らなかった。私は、この乙女ゲームをクリアしていなかったから。


 この世界で、運良くこの変た__闇の大精霊ジェスバン=ダークナイトと契約できたから、その最大上級魔法知る事ができた。


 それで知ったのは、闇の最大魔法は2つ。『破壊』と『消滅』だけ。


 なのに・・それなのに、こんな私が聖女?本当に笑える話よね、今の状況。でも、この世界は〝私が望んだ通りに〟壊れちゃったみたい。そういえば、どうして私はあの時にあんな事を言っちゃたのかしら・・・



 __その乙女ゲームの世界を壊してあげるわ



 私が転生する前に出会った〝アイツ〟に言い放った、あの言葉。たぶん、色々と混乱していたし悲しかったのかしら?でも、乙女ゲームの設定を壊しててでも私は生きると望んだのよね。


 ふふっ、この世界ではこんな私が聖女様かぁ。冗談として言うのなら、破滅の聖女ってところかしら?




 「・・・【永久の混沌・逃げられぬ絶望・口遊む狂歌・暗きに怯え・血に恐れ・涙に嘆け・生きるを望む・愚かな者共・死は安らぎ・受け入れなさい ≪デス・ザ・クロスフィクション≫】」



 私を中心に、空に向けて巨大な黒い柱がそびえ立つ。その姿は、まるで墓石の様。


 この黒い空間に飲み込まれた者は、皆消える。術者である私とジェスバン以外、全て、何もかも消えてしまう。




 魔法効力が無くなった時、私が今立っている場所以外は大穴が空いていた。


 木も土も動物も、敵だった魔王軍の幹部達でさえ恐らく消滅した。たぶん、その魂さえも。敵に逃げられないように、わざわざ範囲指定を敵に合わすのではなく私自信を中心にして素早く起動させた。


 そして、この魔法に巻き込まれた精霊も・・・おそらく消えてしまったのでしょう。逃げてくれてたら嬉しいわ。こんな大惨事を行なった私は、この世界にいる精霊達に嫌われてしまったかしら?


 ごめんね。怖いわよね?酷いわよね?でも、これが私なの。変えるつもりは、無いわ。


 でも、こんな私でも闇の精霊達は私の傍にいてくれる。私の魔法 ≪ブラッディ・アイ≫で闇の精霊達だけは見る事ができるから分かる。だから、傍に居てくれる事がとても嬉しかった。


 呪文詠唱にもあった〝死は安らぎ〟という言葉。闇たちは、本当にそう信じているみたいだから。






 〝品川 小夜〟だった私は、仕事の都合上で他人に酷い行ないをする場合にはスイッチが切り替わる様になっていた。罪悪感ができるだけ感じないようにと、たぶん自己防衛が身に付いたのね。


 ≪ファンテストラ社≫に入社してからは本当に地獄だったわ。


 エリート志向の家庭に生まれ、親が望む私にならないといけなかった。〝期待されていた〟なんて優しいものでは無かったわ。あれは親が〝エリートである娘〟を造る作業だった。


 学生時代は、そんな親から受ける重圧の捌け口としてBL作品の創作に発散していたけど、さすがに社会人になってしまったらそんな暇は一切無くなっていたわ。


 同期に入社した人達は仲間なんかじゃない、競い合うライバルよ。相手を、より多く蹴落として上へ昇らなければならない。そんな醜い争いだった。



 入社して一年後くらいかしら、私は身近で〝死〟というモノを体感する事になった。


 同僚の自殺。


 日々のストレスに耐えられなくなった同僚がビルから飛び降りたの。会社の上司は〝弱者が逃げただけだ〟と笑っていたわ。


 本当は悲しんであげたかった。でも、ごめんね。それさえも許してもらえない程の仕事量が待っていたから、本当にごめんなさい。


 それからも日本だけではなく、他の国でも同社関係で働く自殺者が出た。それ程に厳しい世界。それはずっと前から、そしてこれからも変わらない。辞めたいと思う人は何人も居るけど、この会社に入社した者達のほとんどがエリート志向。プライドが辞職する事を拒んでしまう。


 ≪ファンテストラ社≫では自殺者がいて当たり前の様に扱われる。だから私は、他人の〝死〟を何も感じない様にスイッチを切り替える事を覚えたの。他人が死んで立ち止まる様な弱い女は簡単に蹴落とされてしまい、おしまいだから。



 そんな私が、この世界に転生したのは救いなのかしら?


 あの王都疫病事件で王都の人達がたくさん死んでしまうと思った時、泣く事ができたから。悲しいと思えると同時に、泣く事が出来た自分に安心もしてしまったわ。


 私にも人としての心が、まだ残されていた事に安心した。神様なんて好きでは無いけど、あの時の〝アイツ〟に今なら礼が言えるかしら?



 でも今回は、またあのスイッチに頼っちゃったわね。消滅魔法で生き物を消したのは初めてだった。やっぱり、この状態だと死を悲しいとは思えないわ。このスイッチは私には必要ね。私は弱い女にはなりたくないもの。



 「・・・・ぐくっ」


 あら、お馬鹿さん、まだ存在していたの?顔の部分である髑髏だけで生きているなんて、さすがは死霊王と呼ばれるだけはあるわね。しかも空を飛ぶ力まで、まだ残されているのですか。生命力はゴキブリ並ね。


 「・・・覚えて・・おれ」


 消えた・・逃げたわね。闇耐性の高い魔族を殺すのは、私にとって本当に厄介みたい。・・・また仕損じてしまったわ。



 さて、もう帰りましょうか。明日に備えて、色々と準備もしないと。



  ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




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