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103話 神の癒し


 5-16.神の癒し



 どもー、ミネルっす!


 無事に大通りにあるという治療院へと到着しやした。


 このイベントの時、乙女ゲームの物語ではヒロインちゃんが居たのは大聖堂だった。だけどさ、今は誰かさんのせいで無くなってしまったんだ。無いもんは仕方がない。なので、今回の最初の目的地は王都で一番大きいという治療院。


 その治療院にセバスさんの案内で向かっている途中、俺は魔力の解放を行なった。すると、周りから光の精霊達が集まり、喜びを表すかのように光る。


 ゲームでは〝大聖堂は光に包まれ〟という物語だったが、その大聖堂が無いので代わりに俺が光る事にした。


 近くに居たセバスさんも驚いていたが、すぐに平常心を取り戻して案内を続けてくれる。そういえば、俺が電球状態になる事を事前に教えるのを忘れていた、ごめんさい。


 そして、もちろん光りまくっている俺は目立つ。治療院へ到着すると、皆が俺に注目する・・・んだけどさぁ・・・



 いや~、みなさんは今の俺の気持ちは分からないだろうね!


 これは乙女ゲームという世界で、男子と女子がキャッキャウフフ☆ピンク色の世界を広げる女性達が楽しくプレイするドキドキ恋愛ゲームなのですよ。


 もう一度言います、恋愛ゲームです。


 絶対にそうなのです。なのに_____



 「聖女様ぁ。お母さんが、僕のお母さんがぁ!!」


 「お救い下さい、聖女アンジェラ様。どうか、どうか私の夫を、どうかっ!」


 「苦しい・・苦しいよぉ・・・・お母さん・・助けて・・お願い・・お父さん・・・」







 ばいおれーーーーーーんすっ!!




 いやいやいや、ちょっと待てよ。マジでチビりそうです!なんっすかねぇ、この視界の暴力は。俺は来る世界を間違えたのではないだろうか。


 いつの間にかゲームを股に掛けて飛び越えてしまったみたいです。好みの男性と恋愛を楽しむ乙女ゲームから、年齢指定・グロ表現あり・残虐なゲームへと俺はやって来てしまったのか。誰か新しいパンツを俺にプレゼントして下さい。



 俺の前には苦しむ人・人・人・人の数。口から吐血している人も発見、ちょっと引きました。



 〝ラブ&ピース〟が好きなのに、いつの間にか〝ラブ&バイオレンス〟なこの状況。


 苦しむ母親を必死に揺する小さな子供。吐血したであろう男を救ってほしいと叫ぶ女性。夫婦に呼びかけられ助けを求める子供達。


 しかも、全員が涙を流して俺に救いを求める場面にぶち当たり、俺は今すぐにでも逃げ出してフェイに抱き着きモフモフしたくなりました。


 「アンジェラお嬢様、どうぞ」


 現実逃避を求める俺に、小声でセバスさんからの合図がきてしまった。


 よ、よし、がががががんばれ、俺!出来る、俺には出来る!為せば成る!



 自分を勇気付けてから、俺は空を見上げた。


 あの日、あの『大聖堂消滅事件』の時と同じく光の精霊達が王都の空を浮遊し、埋め尽くす光景となっている。数えようとは決して思えないくらいに、たくさん集まってくれた。まぁ、みんな動いているから数えるなんて本当に不可能なんだけど。


 今回は俺が呼んだ。ちゃんと自覚している。


 精霊の呼び集める方法が分からなかったから、とりあえず空に向かって「あーそーぼー」と呪文を唱えたらいっぱい来てくれた。超嬉しい、あれで無視されてたら俺のメンタルは減っていたと思う。


 みんな、喜んで来てくれた。ヤル気も満々だ、良かった。もちろん光属性だけではなく、全属性の精霊達が集まって・・・あ、ごめん、今の嘘。土の精霊達が居なかったッス(泣)。べ、別に嫌われてる訳では無いよ?たぶん、まだおやすみの時間なのだろう。



 さて、もちろん来てくれた光の精霊達に協力してもらいます。俺も頑張るからさ、一緒に頑張ろうな!準備はいいですか~?


 俺は両手を胸の前で組んだ。聖女の正しい祈りのポーズ。俺に似合うかは不明だけど、今はアンジェラの姿だし大丈夫かな。女の子が皆の為に祈る、まさに『聖女の祈り』だ。乙女ゲームでも、あの時ミネルソフィが大聖堂で祈りを捧げて神々から声を頂いていたっけ。


 ん?という事は、この世界には神様的な人物が本当に居るという事か。確かに設定上、創造神様がいるってゲームの説明書には書いてあった。・・・このゲーム世界に神様がいるのであれば、やっぱりサンタさん(本物)だっているのでは?


あ、でも俺ってばレギオの家で・・・だ、大丈夫だ、ちゃんと懺悔をした。ミネルは良い子のままなので、いつか願いは叶う、為せば成る!・・・落ち着け、俺。そんな場合じゃなかった。








 今回、使用する魔法はもう決まっている。乙女ゲームの進行と同じ魔法。でも、ゲームとは違い場所が大聖堂ではないから、神の手助けがナッシングな状況です。だからこそ、光の精霊達に協力をお願いした。これで成功すると思う。


 さぁ、唱えようか。俺の、聖女の、ミネルソフィの____



 光属性の最大上級魔法  最後の1つ




 「・・・【捧げる祈りは・奇跡となり・心の願いは・成就する・深き常闇の夜は・朝の光に照らされる・流れる涙は・救いとなり・全ての皆に・大いなる守護を・聖なる祝福をもたらします ≪スピリチュアル・ガーデン≫】」




 乙女ゲームにあった聖女が使える最大上級魔法は3つ。


 最大回復魔法である『蘇生魔法』、それは〝神の救い〟。


 最大攻性魔法である『消滅魔法』、それは〝神の怒り〟。


 そして、今回使用した≪スピリチャアル・ガーデン≫は、絶対領域ともいえる最大防性魔法。


 それは〝神の加護〟であり、〝神の癒し〟でもある。


 悪しき者達からの攻撃を結界で守り、結界内に居る者達には癒しの祝福をもたらす。


 状態異常の無効化、ステータスの全能力値アップ、全免疫への加護、自動回復の祝福、3度までの魔法・物理の攻撃を共に無効化。



 つまり、この乙女ゲームで聖女ミネルソフィ=ターシアが扱える最大最強の支援魔法だ。



 乙女ゲームでは、この『王都疫病事件』で当時のミネルソフィは神の助けが無ければ使えなかった。俺は大聖堂が無いから神の助けは見込めない。だからこそ、愛する精霊達に協力してもらい無事に成功した。


 空に描かれていくのは光り輝く魔法陣。俺の魔法が成功した証拠だ、ありがとう精霊達。



 「おかぁ、さん。良かった、目が、目が覚めたんだね、お母さぁぁあああああん!!」


 「ああぁ、ああぁ、あな、た。神よ、神よ、ありがとうございます、ありが、とうぅ、ぅぅう」


 「・・お母さん・・お父さん・・もう、苦しくない、何でかな、すごく、楽になったよ」



 空から雪の様な白く小さな球体が降り注ぎ、人々の体へと吸い込まれて溶けていく。そして病に苦しめられていた者達が正常に戻り目を覚ましていく、まさに幻想的な光景。


 苦しんでいた愛する者の回復に、泣いて喜ぶ人達。全ての皆が無事を確かめるように抱き合っている。それは、まさに奇跡的な情景。



 無事に魔法が成功したのを確かめた後、俺は空を見上た。


 その空には〝王都の全てを囲んでいる〟光り輝く巨大な魔法陣があった。






 ・・・あんの~、光の精霊さん達や?なんっすか、これ?


 確かに頑張ろうって言ったよ?うん、確かに言った。俺も助かったし、皆を救えて超ハッピーっすよ?うん、すんごくハッピーでミラクルな感じだけどもさ。



 ・・・魔法効力の適性範囲、デカくね?



 な、ないわ~、この大きさはない。どれだけ巨大なんよ。何?ストレスでも溜まってたのか?でも、さすがにこの巨大な魔法陣は俺自身も恐ろしいわ。


 これは、さすがにやり過ぎ。この奇跡を行なった事が全て小夜さんの責任となり、全負担となってしまうのか。


 どう見てもこれは、以前の『大聖堂消滅事件』よりも遥かに大きい魔法陣だ。王都中に魔法の効力が発揮されているだろうから駆け周らなくても良くなったのは嬉しいし、助かったけどもさ。でも、これは・・・




   ___助かった? 良かった____



 ん?え、あ、あれ?なんか声が。それに、この声は何処かで・・・



   ___ミネル喜ぶ すごく嬉しい____



 あ、うん、喜んだッスよ。ありがとう。でもさ――



   ___またね ミネル____



 え!?ちょっと待っ――!?



   ___ばいばい_____



 ばいばーい・・・じゃなくてさ!もしもし?もしもーーーし!!


 応答セヨ。応答セヨ。こちら、ミネル。こちら、ミネル。お~い。



 ・・・・


 ・・・・・・・・・・何だったのん?今の??



 あ、でも今の声は〝あの時〟の声と同じだった。なら、もしかして――――




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