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102話 ※騎士団長※ Prt.2


 5-15.※騎士団長※ Prt.2



 ※ ※ ※ 攻略キャラの父親 騎士団長 ??? 視点 ※ ※ ※



 ランブレスタ王国は、我等の祖先達が代々騎士として長い歴史で守護してきた大切な国だ。


 私も、国王である親友も、宰相の友人も、伯爵家で旧市街を治める友人も、その伯爵位の友人を護衛する弟弟子(おとうとでし)も、この国を愛している。


 貴族学園で生徒会を共にした友人達と、このランブレスタ王国をより平和に導こうと約束した。決意をし、誓い合った。



 そんな愛する国で、恐ろしい疫病が発生してしまった。



 疫病の恐ろしさは理解している。数十年前にも他国で村1つが滅びたと歴史に刻まれている。死者多数、生き残った者も数年後には亡くなったと・・・


 そんな恐怖の対象が、このランブレスタ王国で起きてしまった。


 原因となる疫病の正体はスザナ病と分かった。治療法や対処方もゼスルス先生が知っている。なのに、そうだというのに___



 __備蓄した薬では半分も助けられない



 ゼスルス先生が仰った、信じられない言葉を思い出す。


 ダメだ。そんな事、認めない。守らなければならない市民達が死ぬ?それも半数以上が?・・・そんな事、この国を守護する騎士として認める訳にいかなかった。


 敵が魔物ならば剣で切り殺せる。恐怖が盗賊だとしても剣で切り伏せられる。


 だが、今回の人々を苦しめている原因は・・疫病。私の剣術では、どうしようと倒せない敵だった。私では苦しむ者達を助ける事ができない。救う事ができない。


 私は自分の手を力のかぎり握りしめた。悔しさの余り、血が滲むほど。



 「____団長!___団長っ!!」


 私は自分を呼ぶ声に気が付いた。どうやら現実を受け止めきれず、呆然としていたようだ。声を掛けながら私の元へ走って来たのは、私の優秀な補佐役である副団長だった。


 「団長、悪い知らせです。どうかお聞き下さい」


 ・・・これ以上に悪い知らせなんてあるのだろうか?国民の半数以上も失うのだぞ?


 「・・・報告を」


 「はっ。先ほど我が隊員より〝貴族街での感染者を確認した〟との報告が____」


 「何だとっ!?」


 私は副団長の報告を遮り、大声を出して止めてしまった。大事な報告を遮るなんて、今までした事は無かったというのに。私のその行為に副団長も驚いた顔をしている。


 「すまない、続きを」


 私は自分の失態に謝罪した。落ち着け、〝おそらくは王都中に〟という報告を受け、その可能性は考えられたはずだ。


 「は、はい。〝貴族街での感染者を確認〟との報告があり、王城に居られる陛下が急ぎ会議を開く為に相談役などを招集なさいました。騎士団は、そのまま救助に専念する様ようにとの事です」


 「分かった、報告ご苦労。引き続き救助にあたれ」


 「はっ」



 王都の貴族街には、私の愛する嫁と息子がいる。本当は今すぐ、妻と息子に会いに行きたい。だが・・だが、それは許されない事だ。騎士団の長である私が離れる訳にはいかない。頼む、感染していないでくれ。


 私と副団長は騎士達を指示する為に外へ向かおうとした。すると、ゼスルス先生に呼び止められた。


 「副団長様、団長様、お2人共お待ちを。この疫病は〝空気感染〟ではなく〝接触感染〟です。隊員の皆様にその事と、治療院からのマスクと手袋をお配り下さい」


 「分かりました。助かります」


 ゼスルス先生の言葉に副団長が礼をし、去って行った。


 「騎士団長様はどうか、これを」


 そして、次にゼスルス先生は私に一枚の紙を手渡してきた。


 「この紙には今回の治療薬に必要な素材を書き込んでおきました。どうにか、より多く集めて頂けると助かります」


 「了解しました、王都中からかき集めて参ります。近くの町や村からも集めましょう」


 私はゼスルス先生から必要な素材が書かれた紙を受け取り、礼をした。


 「入手でき次第、この治療院へお持ち下さい。治療薬の生成は特殊なもので、今の王都では私くらいしか作れないかと」


 「了解です。では、失礼します」


 王城には優秀な薬剤師が何人も研究の為に滞在しているのだが、その者達でも無理なのだろうか?しかし、今は確かめられない緊急事態。ゼスルス先生にお任せしよう。


 ゼスルス先生から受け取った紙を持って、私は外に出た。そして_____




 ___治療院から外へ出た私が見たものは、あの日『大聖堂消滅事件』で見た〝光りを纏う者〟だった。



 純白の特殊な服を着ており、ゆっくりとコチラへと歩いてくる光りの者。私だけでは無い、治療院へ入れず外に居た者達も気付き、その姿に驚愕して言葉を失っている。


 頭を覆う白いベールで顔は見れない。だが、その者の黒く長い髪が歩くと同時に揺れているのが見えた。なので、おそらくは女性。・・いや、身長から考えて少女というのが正しいだろう。


 隣には執事服を着た男。この執事、どこか見覚えが・・・



 そうだ、思い出した。王城で開催されたパーティ―で警備をしていた時に見掛けた覚えがある。あの執事は侯爵令嬢アンジェラ様の専属執事だったはず。確か名前は・・・セバスと呼ばれていたと記憶している。


 城へ入場する者達の顔と名前は出来るかぎり覚えなければならない。なので、その記憶は間違い無いと思うのだが。


 そうすると、隣に居る光りを纏う人物は侯爵令嬢のアンジェラ=K=モンテネムル様か?いつもとは色は違うが、確かにあの独特な服装は・・・


 私達はその光景に誰しもが息を呑んだ。そして、光りを纏う者の隣にいた執事の男が前に出て、声を張り上げて話し始めた。



 「これより『聖女』アンジェラ=K=モンテネムル様が皆様をお救い下さいます!どうぞ、そのままで!!」



 ・・・今・・今、あの執事はなんと言った?


 すくい・・・〝救い〟だと?救われるというのか、この疫病によって苦しむ者達を。嘆き悲しむ者達を。


 その言葉に、治療院の周りに居た者達の止まっていた時間が動き出した。そして少しずつ騒ぎ出す、聖女様に救いを求めて。



 もし、もしも本当にそれが可能だというのであれば、どうか、どうかこの国の者達を___



   ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※




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