010話 塩を購入
1-10.塩を購入
ジルさんお手製の朝御飯を食べ終え、俺は町を見て周りたいと言った。そしたら何故かタジルが付いて来る事に。なんで?
「まだ違法奴隷を行う危ない連中が居るかもしれないからな、注意は必要だろう?」
そうなんですか~。でも、本当は俺が逃げないように見張りとかじゃね?絶対にそうだろう。
そして、俺達は町の商店街に来た。朝は主婦の皆様が買い物・・・ではなく、お喋りに夢中みたい。こういう主婦のネットワーク情報は凄いけど、無駄話が大半なのだとか。うちの母さんが言っていたのを覚えている。
この商店街に来た俺の目的は、情報ではなく〝あるモノ〟を買いに来たのだ。
それは『塩』。
ぐふふ、攻略サイトを読みまくった俺を舐めてもらっては困る。今回のボスキャラは死霊王。アイツの弱点なんて、ちゃんと分かっているのですよ!
死霊王はヒロインちゃんが聖別した塩が弱点である。その事を知るのは、乙女ゲームのストーリー後半。しかも、死霊王が操る死霊種の魔物にも有効なんだ。塩で浄化されるなんて、もろに日本設定。さすがは日本製品のゲームだ。
そういえば敵の弱点を初めから知っているなんて、十分なチートじゃね?さすがは俺!乙女ゲームのプレイを姉さんに命じられ、王子以外の攻略キャラを無事にクリアした成果も無駄ではなかった!・・・でも、男のくせに乙女ゲームの上級攻略者って。プークスクスとか言った奴、いつか殴りに行くからな!
「人、増えたなぁ。ミネル君、気を付けなよ」
「はーい。でも、確かに冒険者の方が多いですね。これもギルマスが言っていた、その死霊種が増えてたの原因で討伐に集まった人達なんですか?」
無事に大量の塩を購入出来た。時間が余ったので、ブラブラと掘り出し物を探索中。もちろん隣にはタジルが居ます。・・別に好感度を上げようとかしてる訳じゃねぇからな!デートじゃ無ねぇぞ!
ん、お金?タジルからお小遣いを貰いましたが何か?塩もそのお金で買いましたが何か?
買った塩はタジルが持っていたマジックバックの中に入れてもらった。重いし俺が持てるわけない。
でも、すげーよなぁ〝マジックバック〟。ゲーム好きなら知ってるよな?この世界にもあんだよ、マジックバック。別名、異空間収納袋。分かりやすく言うと某たぬきロボットの四次元ポケットだ。それが実物として、この世界には流通している。すんげー高価だけどな。
どんだけ入れても重さも形も変わらないって、どうなってんの?あっ、生き物は無理なんだって。あと、値段によって入る量も違うらしい。まぁ、そりゃそうか。これ、魔道具だし。
「冒険者ギルドからの緊急招集は強制だからな。断る事は出来ない決まりだし、全員が討伐に向かうと考えて良いはずだ」
せっかくあげたお金が大量の塩となってしまい、先程から微妙な顔をしているタジルが教えてくれた。
そういえばゲームにもあったな『緊急依頼』。確かに強制だった気がする。なんか、その依頼だけ赤文字で表示されてたし、左上に〝重要〟という文字もあった。他とは報酬も良かったんだよな。
ん?そういえばギルマスから頼まれた俺への依頼、報酬の話を詳しくされていないぞ?おいおい、まさか少額とか言わないよな?こんな小さな子供を協力させようといて、コイン数枚とか許さんぞ、絶対に!
・・・まだ、受けるかはギルマスに言ってないけどな。ま、まぁタジルの仲間達が死んでしまうイベントだから・・・うん、助けたい、とは、思ってる・・・けど・・・
今の俺は自分のレベルが分からない。つまり光魔法がどの程度、使いこなせるのかが分からないという状況。蘇生魔法は絶対に使えないだろうけどな、あの魔法は最大の上級魔法だし。
その後、今回のイベントで何か塩以外に役立ちそうな物がないか、財布を連れて商店街を見て周った。財布に買ってもらったソフトクリームも美味しかったです。
「あれ?あの子達って・・・・」
商店街をウロウロしていたら、遠くの空き地の草むらで何かを探している子供達を見つけた。最初は遠目でだが、何かを必死になり探している姿が見えて気になった。そしてよく見ると、あの子たちは昨日会った孤児院の子供達だった。
孤児院の子達が空き地で何をしているのか気になった俺は、子供達が居る場所へ行ってみた。
「おはよう、また会ったね。みんなで何をしているの?」
俺は子供達に話し掛けてみる。近くに来て分かったが、何か泣きながら草を千切っている子も居た。これって、どういう状況なんだ?昨日、服が汚れまくっていたから罰として庭掃除の草むしりをしているとか?
「あ・・・君は確か昨日、ベンチに座ってた・・・・」
「うん、そう。それで、どうしたの?泣いてる子もいるようだけど」
俺がそう尋ねたら、三人の子供達が大声で泣き出した。急いで他の子供達があやしている。
え?え?何?俺が何かしちゃったの!?俺のせい!?
俺が混乱して慌てていると、1人の男の子が泣きながら教えてくれた。
「る、るっそお兄ちゃんが・・・ずっと・・・ずっと苦しんでるの・・・」
「るっそお兄ちゃん?それって、もしかして昨日、君達の先頭を歩いていた茶色の髪をした子?」
そういえば今日は居ないな、あの子。昨日はこの子達と一緒に行動して、一番前に居てリーダーみたいな子だったのに。
「・・・うん。実は昨日ね、君と別れた後に怖い大人達に誘拐されそうになったんだ。それで、お兄ちゃんが僕達を助けようとしてくれて・・・」
「うん、それで?」
「・・・その時、悪い人達から殴られて怪我をしたの。その怪我のせいで、昨日からずっと、ずっと、るっそお兄ちゃんは苦しそうに、ベットで寝てるの・・・ぐすっ」
ああ~、なるほど。そういえば昨日、確かに2人の男からフルボッコにされてたな。そりゃあ、子供のあの子では重症にもなるか。・・・心配だな。
「それで僕達、みんなで薬草を集めようとしてたんだ。町の外は危ないから出ちゃダメって先生が言うから、町の中でだけど」
そう言って子供達が手に持っていた草を見せてくれた。タジルがそれを見て、いくつかはただの雑草だと言い子供達を泣かした。コロァ。
それでも、中にはちゃんと薬草もあった。初心者の俺が見てもよく分からなかったが、冒険者であるタジルが言うには効力は低いが薬草らしい。
あの茶髪の子・・・ルッソ君か。昨日からずっと苦しんでいるって聞いたし、可哀想だ。その暴力を受け、血を出す現場も見ちゃったし。
・・・怪我、か。もしかしたら、俺の力が役に立つんじゃないか?