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001話 俺は男だ

初投稿です

まずは目指せ100話

がんばります!


 1-1.俺は男だ




 「もう、お前なんていらないわ。顔も見たくもない」




 今、俺は混乱している。


 辺りは陽が沈む時間帯らしく、青空が少しずつ茜色へと変わり次第には暗くなるだろう。周りに人気はなく、居るのは俺と目の前の女性だけ。


 この場所は家と家との間を通り抜けた薄暗い場所。こんな場所に他の人が居るわけがない。


 そして唯一、俺以外にこの場所に居る目の女性。その人から突然言われた言葉。その言葉の意味から〝俺はいらない〟、つまりは捨てられるという事。



 でもさ、だから何だ?



 俺は気が付けば、この場面になっていた。俺は目の前のこの女性を知らない。他人の女性が俺を必要ないと言う。正直困った、本当にだから何?別に知らない女性に言われても、俺の頭の中は〝?〟だけ。ただ・・・この女性、どこかで見た憶えが・・・あっ!



 俺、〝宮沢 秋斗〟は記憶の中で、この場面の事を思い出した。



 その記憶が思い出された瞬間、記憶が混濁する。二つの人格が頭の中にあるような変な感じ。めちゃくちゃで制御が出来ない。


 すると、俺の体が勝手に動こうとした。もう一人の人格が母親に捨てられた事にショックを受け、体が勝手に泣きそうになった。口からも自然と大きな声で「嫌だ!捨てないで、母さん!」と叫びそうだった。本当に訳が分からない状態だが自分自身の体なので必死に抑える。


 〝この場面、俺知ってる〟


 勝手に動こうとする体をなんとか抑えながら、俺はそう思った。


 子供が母親に捨てられようとしているこの場面。そして目の前に居る、俺を冷たい目で見下している女性。それに先程、勝手に大泣きしそうになった時、〝捨てないで、母さん!〟と叫びそうになった、あのセルフ。俺は知ってる。



 姉さんが買った乙女ゲーム『愛する   ・・・なんだっけ?忘れたな。まぁいいや。


 とにかく、乙女ゲームで見た憶えがあるのだ。この場面、最初の始まりで流れたストーリーだ。あの乙女ゲームを起動させて、スタートボタンを押すとこの場面が動画(ムービー)として流れていた。


 姉さんが目の前の女性の事を、画面越しに「コレが私の母親だったらマジでボコるわ」とか言っていたのを覚えている。



 なんで姉さんの乙女ゲームを、男である俺が知ってるのか気になるよな?聞いてくれるよな!?というか聞いてくれ!別に姉さんがプレイしてたから内容を覚えてるとかじゃねぇんだよ!


 語るも涙、聞くも涙な出来事。それは、俺が中三の夏の日。中学最後の夏休み。冬休みは受験勉強で遊べないから、この夏休みこそが中学生最後の長期休暇で大切な日だった。


 そんな大切な夏休みの初日、俺がリビングでアイスを食べていた時に姉さんから命令が下された。


 「ちょっと、秋斗。あんた、このゲームの王子様以外を全部クリアしときなさい」


 そう俺に命令してきたのだ。俺にほうり投げられたゲームカセットを、なんとか無事に受け止めた。これで落とそうものなら、姉からは大魔王の___ではなく、正義の鉄槌が頭に振り下ろされるだろう。


 俺は肩を落としながら承諾した。なんで断らなかったの?と皆さんは思うよな。でも、それは無理。



 俺の姉さんは全国でも有名な空手家だったから逆らえないんだ!



 空手に関しては必死に取り組むのに、他の事となるとズボラになる姉さん。そんな姉さんが何故クリアを俺に命令してきたのかって言うと、全攻略キャラをクリアすると裏エンディングがそれぞれの男キャラに追加され、続けてプレイする事が可能になるからだ。


 姉さんは、この乙女ゲームの王道である王子様ルートの完全攻略を目指していた。あとは裏エンディングのみだったんだ。しかし、あのズボラな姉さんの性格から全男キャラを攻略してクリアするのは面倒で、する訳がない。



 そこで白羽の矢がたったのが、弟の俺な訳。



 やったよ?もちろんやったさ。姉さんの下僕である俺が逆らえる筈ないからな。俺の大事な中学最後の夏を犠牲にしたさ。・・・彼女もいなかったし。


 ネットで攻略情報を調べ尽くし、姉さんが買っていた攻略本を片手に乙女ゲームをプレイしましたともさ!


 でもさ、意外な事にこの乙女ゲーム、凄く面白かったんだわ。これって、ほぼRPGだったんだ。俺ってばハマっちった。


 風景の絵も綺麗で、登場人物は美男美女だらけ。主要キャラ全員、有名な声優人が採用され、魔法などのエフェクトも凄く作りこまれていた。


 レベルなんかもあって、俺は凄くこの乙女ゲームにハマっていった。攻略キャラとのイチャイチャ場面はAボタンを連打してたら終わってたし。ただ、時々ミスって選択肢を間違えた事もあったが。


 ・・・ちなみにクリアしても、姉様からお褒めの言葉はありませんでした。クスン




 あ、やっと感情と体が俺のいう事をきくようになった。自由に動く、良かった。


 何故か俺の体なのに勝手に動こうとしていたが、抑え込みながら考え事をしていると自由に動けるようになった。とりあえず左右の掌をグーパーグーパーしてみたが、ちゃんと自分の思い通りに動いてくれた。


 それに、いろいろ思い出していたら先程まで俺の前に居た女性が居なくなっている。確かコレってヒロインちゃんが母親に捨てられる場面だよなぁ。そっかぁ、捨てられちゃったかヒロインちゃん。可哀想に。



 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・ん?


 あれ?ちょっと待て。えーと?


 ヒロインちゃんが捨てられる場面→捨てられたのは俺→可哀想なこの乙女ゲームのヒロインちゃん=? 



    A.おれ?



 ・・・


 ・・・・・・・


 ええええええええええええぇ!?!?!?


俺の声は誰も居なくなった路地裏に響き、茜色となった空へと消えていった。


この後、俺は急いでズボンの中を覗きました。



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