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6話

約束の時間の10分前に到着。此処最近、クラスメイト達は何故か武装して歩くのが基本になっていた。それは大輝も同じであった。理由は知らん。


「あ、良かった」


 そして、騎士団の詰め所前では田上が待っていた。


「どうした?大輝と魔物の据物斬りに行かんのか?」

「行くけど、ちょっとお願いがあるの」


 お願い?田上が俺にお願いをするとは中々珍しい事だ。


「内容に依る。言ってみろ」

「うん。私でも扱える銃を一丁欲しいんだけど……」


 駄目かな?と若干の上目遣いで見てくる。残念ながら俺に対してはその攻撃は効かん!木下ならば俺は多分死んでいたがなぁ!当たり前だよなぁ?


「銃なんてものは基本的に誰でも扱える。

 日本では銃刀法の関係上所持資格は非常に厳しいが、自衛隊に入隊した18歳が1ヶ月と経たずに小銃を撃つんだ。逆に剣や槍と言った武器の方が使うものを選ぶ。

 お前はどんな目的でどういう銃が欲しいのだ?」

「えっと、護身用?」

「大きさは?」

「あんまり大きいのはちょっと。

 そうだなー自衛隊の人とかが持ってるマシンガンくらいの大きさ?」


 フルサイズのショットガンでも行けるか?いや、護身用ってことだから其処までデカくない方が良いな。そうだなぁ……フランキのPA3で良いか?装弾数は護身用なら5発ぐらいで十分だな。


「本来ならば最短でも一週間、最長でも死ぬまで銃はトレーニングしなけりゃいかん。

 コイツはフランキのPA3ってショットガンだ。使い方は簡単。トリガーの前にあるこのスイッチでセーフティ、オンとオフ。オンでトリガーが引けない。オフで撃てる。撃つ直前までトリガーに指をかけるな」


 装弾数は5発+1発だ。


「予備弾は15発渡す。多分、そんなに要らないだろうがな。

 明日は銃の撃ち方を教えてやる」

「うん!ありがとう!」

「それと、銃を撃つなら周りを見ろよ。ソイツは槍の間合いで撃て。確りと相手に銃を向けて引き金を引け。そうすればペレットの一発ぐらいなら当たるはずだ」


 気を付けろよと念を押していると木下があのぉ~……と声を掛けてきた。時計を見れば約束の時間から五分ほど過ぎていた。


「ああ、悪い。待たせたな」

「あ、い、いえ、わ、私もこそお待たせして……」

「構わん。女は男を待たせてこそと言うだろうが。気にするな」


 いやぁ~本当に木下可愛い。天使だろ。申し訳なさげにしてる木下ヤバい。天使。可愛すぎ。罪だわ~ヤベェ。


「Oh~!皆さんお揃いデスネ。私遅れましたカ?」


 其処にジャンヌもやって来る。


「当たり前だ。9時に集合と言ったろうが。

 今後時間に遅れたら置いていくからな」

「「えぇ!?」」


 田上と木下が素っ頓狂な声を上げていた。何だ?


「と、言うかジャンヌ」

「ハイ」

「何故その恰好なんだ?朝食の時は普通だったろうが」


 現在のジャンヌは例によって鎧姿。騎士団達ですら詰め所では鎧を脱いでいるのにも関わらず、コイツは胸甲を付けてマントまで羽織っている。バケツヘルムは腰に吊っているが、それでも完全武装だ。


「カッコいいでショウ?」

「……お前がそれで良いなら俺は何も言わん」


 手入れはしているのか昨日の煤けた汚れは一切なくピカピカに輝いていた。ダンジョンに潜ったりする時は煤で汚させたほうが良いのか?実際の軍隊だと金具等は光の反射で位置がバレるとかでブラックテープ巻いたり、煤等であえて汚したりしているらしいが。

 まぁ、良いか。位置がバレた所で殺すだけだ。


「それじゃあ、先ず騎士団長に学院なる場所への紹介状を貰いに行く」


 詰め所の扉を開けると中は少しバタバタしていた。


「騎士団長に要件があって来た」

「えっと、ミナミ様ですね?

 団長から話は聞いています」


 脇にいた騎士が鎧姿で俺の前に来る。何かあったようだ。


「騒々しいな。何かあったのか?」

「え、ええ。上級冒険者用のダンジョンから魔物が溢れ出して近くの村々を襲っているんだ。

 冒険者と地方騎士達が行う定期討伐が行われてい無かったようでね」

「そうか。それは大変そうだな。

 紹介状をくれ」


 手を差し出すと騎士が少し複雑そうな顔をしながら俺に紹介状と思われる騎士団のエンブレムの蝋封された手紙を出す。それを貰おうと握るが、手を離さない。


「何だ?」

「貴方は、今の話を聞いても何も思わないので?」


 何だ?手伝って欲しいのか?


「俺にも手伝え、と?」

「そうです」


 騎士がムキになった顔で頷く。手を離せ。


「俺達が召喚された理由を言ってみろ」

「冥王のダンジョンに潜り最深部にて冥王の残した復活の遺物を完全に破壊するためでしょう?」

「その行いとその上級者ダンジョンから溢れ出た魔物を殺すのと何の関係があるんだ?

 その上級者ダンジョンの定期討伐をしなかった尻拭いを何故、俺がしなければならない。それはそっちの仕事だろう?お前にはプライドというものがないのか?」


 まぁ、あるならこんな事を俺に頼みはしないだろうがね。


「それに。俺はスライムだのゴブリンだのと言った敵について何も知らない。だから、俺は敵について熟知し、あらゆる弱点と行動習性を理解してから安牌を取りつつ行動する」

「おいカイル!何してんだよ!」


 そこに騎士の同僚と思われる別の騎士がやって来た。


「気にするな。そこの騎士が俺に溢れ出てきた魔物を殺すのを手伝ってくれと頭を下げて来たのだ」

「それは失礼しました!

 カイル。その勇者様はゴブリンもスライムも全然狩っていないんだ。行き成り上級ダンジョンの魔物なんか狩れる訳無いだろうが!」


 む、この騎士はカイルと呼んだ騎士とのやり取りを聞いていたのか?騎士を見ると挑発するような目付きで俺を見ている。フン。その喧嘩買ってやっても良いが、俺は大輝じゃねぇ。そんなクソ下らん事で木下とのデートを不意にする程馬鹿じゃない。悪いが、俺は善人じゃないんでね。


「お前は良いことを言う。

 カイルといったか?もう少し頼む相手を考えろ。俺達はお前達よりも圧倒的に強いし、俺や木下ならばゴブリンが千二千集まろうがタダの雑魚だ。敵を薙ぐだけならば容易に出来るがそれだけではなかろう?

 生憎、俺は此方の世界の行軍や進軍に関する知識もなければその際に出会う敵やその敵との対処法なぞも知らん。

 剣の振り方を覚えた子供を戦争に持っていくか?」


 そういう事だ、とお前の挑発なんぞに乗るかと男を睨み返してからカイルの手から手紙を引っ手繰った。そして、そのまま外に出ようとして肝心なことを思い出す。


「その学院とか言う場所の場所を知らん。

 お前達でなくても良い。場所を知っている奴を寄越してくれ」

「あとで見習いの一人を貸してやる。

 もう少し外で待ってろ」


 騎士はそう言うとカイルを連れて別の入口から出て行ってしまった。やれやれ。なんて無礼な奴等だ。俺達はボランティアでも無ければ自分達から好んで来た訳でもないのに。全く。


「世界が世界なら人も人だな」


 詰め所から出るとジャンヌが木下に一方的に話しかけていた。木下はジャンヌに一方的に話しかけられてかなりしどろもどろになりつつ何とか答えていた。ジャンヌはそんな木下相手に次々と話掛けていく。まるでマシンガンだ。

 狼狽する木下マジプリティー。結婚したい。結婚しよ。


「止めろ。木下が困ってるだろう」


 まだ、もう暫く見ていたいと思ったが、デートも大事なので早々に切り上げさせる。


「紹介状を貰えマシタカ?」

「ああ。問題ない。

 それと、ドコゾの上級冒険者用ダンジョンで魔物が溢れているそうだ。何でも地方政府が定期討伐をサボっていたらしい。全く、第三世界レベルでこの世界は腐ってるな」


 信じられんと肩を竦めると、ジャンヌは全くデスと頷いていた。それから暫く待っていると安っぽい胸当てをした兵士が走ってきた。案内か?


「学院まで案内して欲しいと言う勇者様方でしょうか?」

「ああ。お前が見習いか?」

「ええ。今、ダンジョンから魔物が溢れてて」


 ゴタゴタしてすいませんと頭を下げてきた。


「お前が謝ることじゃない。

 そもそも定期討伐なる物をしていないこの国の政府が悪いんだ。どうせ、税金巻き上げるだけ巻き上げてあとは賄賂だの私腹だのに費やしてるんだろう。俺達の世界にもそう言う腐っている国は有る」


 気にするなと言ってから案内してくれと本来の目的を促す。

 見習いを先頭に俺と木下、ジャンヌは三人並んで歩いていく。ここでの会話は無い。いや、ジャンヌは何か此方をチラチラ見ながら何か言いたそうだったが、睨み付けておいた。木下は相変わらず足下を中心に視線を下げて歩いており可愛い。

 木とかにぶつかりそうになって、危ないぞって手を引いてあげたい。あわよくば抱き締めてやりたい。しかし、足下見ながら歩きを熟達した木下に取っては気配を感じ取り回避すると言うニュータイプを獲得している。ニュータイプ可愛い。


「学院で何を学ぶのデスカ?」

「魔物の生態とか構造とかだな。

 スライムとかヤバいぞ」

「スライムデスカ?」


 昨日あった事をありのまま伝えるとジャンヌは首を傾げ、木下は興奮した様に俺を見た。


「す、スライムってあ、甘いんですか?」

「甘い。暑い日にあれを冷して飲めばかなり上手いだろう」

「な、何系の甘さですか?」


 もしかして木下は甘いもの好きか?


「不思議な甘さだ。

 果物とも、ジェラートとも……うむ」


 もう一度飲んでみたいな。


「よし。学院に居るらしい教授にスライムについて聞いてみるか」

「そ、そうですね!」


 暫く街を歩いていると城が見えてくる。この前も見た。


「此処が学院です」

「ふむ。案内ご苦労」


 見習いはではお気を付けてと一礼して去って行った。ここまで来るにも多くの冒険者と思しき武装した連中と擦れ違った。誰も彼もが我が物顔で大通りを歩き、装備や手柄を自慢せんと話していた。虚栄心やプライド等を優先しており、その実中身はないだろう。本当に強い奴ならそもそも昼間からこんな町中にいるわけ無かろう。


「じゃあ、行くか」


 門の前に暇そうに立っている門衛に騎士団長の手紙を渡す。門衛は面倒臭そうに俺を一瞥し、それから待ってろと告げると中には行って行った。

 俺達は門の前に放置である。

 10分程してから教師と思われるローズを着た女が先程の衛兵と共にやって来た。高慢ちきそうな眼鏡だ。


「貴方方が我が学院を見学したいと言う勇者様方ですね」

「ああ。

 魔物だかモンスターだかの生態とスライムについて聞きたい」

「スライム?」


 眼鏡は怪訝そうに俺を見る。


「何か問題でも?」

「いえ、なんな雑魚を勇者様方が気にするとは思わなくて」


 コイツは馬鹿なのか?思わず木下を見ると木下もこっちを見ていた。目と目が合う瞬間、俺達は恋に落ちたらいいのになぁー木下は目が合うと慌てて恥ずかしそうに目を伏せた。可愛い。

 女をもう一度見る。コイツは多分事務方だな。所謂教務課の職員とか大学の事務やる人達みたいな存在。


「何か?」

「いや?

 まぁ、事務員如きならばスライムの存在を軽視するのも致し方ないと思ってな」


 俺の言葉に事務員はムッとしたようで咳払いをして自己紹介をした。


「私、この学院の副学院長の「副学院長!?」


 思わず声を上げてしまった。有り得んだろ!スライムを雑魚とかあれが雑魚なら最早人間は無機物の石だぞ!


「ええ、そうです。私が副学院長のライオノーラ・イシュカンダルです」


 宇宙戦艦の目的地みてぇな名前だなおい。


「まぁ、良い。

 モンスターの生態とスライムに付いて詳しい人を案内して欲しい」

「ならばスライムを研究している者が居りますのでその者から魔物の生態もお聞き下さい」


 そう言うと副学院長は歩き出す。俺達もその後に続いて学院の中に入った。

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