4話
ジャンヌを先頭に俺達は騎士団長へと続く道を歩いていた。ジャンヌの奴、驚くべきことに武器は火炎放射器だ。M2火炎放射器と呼ばれる所謂アメリカ軍の使う火炎放射器を背負っていた。
バケツヘルムに鎧を纏い、盾と火炎放射器を持った頭の可笑しな騎士なのだ。
ジャンヌ・ダルクと言うよりも、ドン・キホーテだ。
「ところでミナミ」
「何だ?」
「ミナミはキノシタの事が好きなのですか?」
あ?何だコイツ?
「何故そう思う?」
「ミナミは常に誰に対しても壁を作り一歩引いている人に思いマシタ。しかし、キノシタにはその壁をヨッパラっています」
酔っ払う?壁を酔っ払う?
「壁を取っ払う、だ」
俺の指摘にジャンヌは暫く考え、それから笑いだした。
フランス語で何かブツブツいいながら笑うが、多分、自分の発言に受けているのだろう。
「俺が木下を好きだとして、それが何かあるのか?」
「別にアリマセン。
ワタシも誰かの為に戦うの良いデス!ジャンヌはフランスの為に戦いマシタ!ワタシもジャンヌの生まれ変わりデス。そう言うの探してマス」
どうしたら……そう言いながらバケツヘルムを抱え出した。お前の事なんかどうでも良いからさっさと案内して欲しい。
「取り敢えず、先に行かれては?」
女騎士ナイスぅ!
ソウデシタとジャンヌは歩き出し、結局更に1時間程歩いた所で騎士団長の場所まで移動出来た。騎士団長の周りにはクラスメイト達が集まっており、周囲を騎士達が警戒している。
「まるで保育園か幼稚園だな」
「ミナミ殿、どうされたのかな?」
「ああ、アンタに頼みがあるんだ」
「何かな?」
「この世界にクロスボウはあるのか?
あればいくつか貰いたい」
騎士団長は難しい顔をした。なんだ?
「クロスボウは、騎士殺しと呼ばれる武器でな」
「ああ、知ってるよ。
鎧を簡単に貫くし、誰でも簡単に扱える。この世界じゃそこに魔法でも上乗せして更に強いとかそう言う感じなんだろ?」
「う、うむ。だから」
俺は持ってるウィンチェスターを騎士団長の前に置く。
「コイツはウィンチェスターM2A1。
口径は7.62mmで使用する弾薬は7.62mm×33弾。有効射程距離は大凡0.6リーグ。で、装弾数は30発。その弾を一分間に大凡850から900発の速度で発射する。
これよりも強力で、命中率の高い武器や騎馬百騎なら優に薙ぎ倒せる。
もっと言えば……」
TAC-15を取り出す。最新鋭のクロスボウだ。獲物はないか?と探すと騎士の一人がゴブリンを見付けたらしくゴブリンを狩りたい者と呼ぶので手を挙げた。
「俺にやらさてくれ」
「お!優!」
「大輝か。こんな据え膳切りしても何の実力にも成らんぞ」
騎士の一人がゴブリンの棍棒を盾で受け、弾き飛ばしたので頭に大腿部目掛けて矢を放つ。左足から入った矢は貫通して右足を串刺しにして止まる。
「0.01リーグぐらいから撃っても貫通する」
「60ヤードか?」
今なら北朝鮮の気持ちが良くわかる。なんの前触れもなくヤード・ポンド法を使う奴等をメートル原器で殲滅してやりたい。
「兎も角、俺はクロスボウが欲しいのだ。この時代の」
「う、うむ。
その前にそのゴブリンにとどめを刺しては?」
足を封じられて這うように逃げていこうとするので、MP5Kに15発弾倉を差し込み装填。所謂HKスラップだ。
「こういう時は、こういった方が良いのか?」
大輝を見ながらスキニーホッパーズを構える。
「どこに行こうというのかね?」
そして、セレクターをフルオートに切り替えてトリガーを引く。タパパパパンと軽快な発砲音が森に響き渡たり、ゴブリンは絶命した。
撃ち切ったクルツを脇に捨て、ジャンヌを見た。
「燃やしてくれ」
「任せてくだサーイ」
離れてと叫ぶとボワッと炎の柱が飛んだと思うとアッという間にゴブリンを焼き尽くした。
燃え盛るゴブリンにクルツを投げ込むとジャンヌが油を注ぐ。序にTAC-15もだ。
俺が出した銃は俺の意志で消せる。しかし、それ以外では激しく損傷したりしたら消えるのかどうか不明なのだ。
「ふむ。クルツはプラスチックがドロドロになっても消えないか」
指を鳴らすとドロドロに溶けたクルツや熱で弦が焼け溶け、張りを失ったTAC-15は砂になって消えた。
「以上。
騎士を殺すためにクロスボウを欲しがるのでは無い」
「分かった。
我々は夕暮れまでここに居るが、君はどうするかね?」
「生き物を殺す感覚はもう掴んだ。
それと魔術学院に行きたい。紹介してくれ」
「分かった。
明日の朝にでも渡そう」
よし!これでスライムについて調べられるぞ!
明日は木下と図書館デートだ!俺は女騎士に何故か付いてきたジャンヌと共に四時間掛けて戻る。
「あ、み、南君と……だれ?」
騎士団の事務所で女騎士と別れ、武器庫からクロスボウを貰って中庭に行く。中庭では木下が熱心に勉強をしていた。流石木下。俺達の足を引っ張らない様に勉強していたんだろう。真面目可愛い。隣で応援したい可愛い。好き過ぎぃ!
「ジャンヌデス!」
「クラスに居たろう、中二病のフランス人」
「お、覚えてます。
で、でも何で?」
知らんがな。
「それと、お前にこのクロスボウもやる。
少し改良して手榴弾を飛ばせる様にする」
持って来たクロスボウを見せる。弦を引くのは梃子の原理で引っ張るので木下でも行けるはずだ。
「引いてみてくれ」
「は、はい……」
クロスボウの先端にある輪っかに足を掛け、弦を引く機械を後端に引っ掛けて、弦を引っ張る。少し力が居るが、まぁ、行けるだろう。
木下にやって見ろと渡すと、引っ張るところで苦戦していた。なので、後ろから引っ張るのを手伝ってやる。
「もっと腰を入れて体全体で引け」
「ひゃぁ!?」
後ろから手を取るために密着する。合法的な!極めて合法的かつごうり的な指導!
「で、こう引くんだ」
グイッとやったら、俺の体に木下の柔らかい体が押し付けられる。いと柔らかし……勃起しちゃう。
「こっちで手榴弾を飛ばせ。
TACよりも有効射程は低いがより範囲の広い爆弾を飛ばせる」
「あ、そ、その事でお話が……」
木下は怖ず怖ずと一丁の銃を見せる。銃、正確にはシュトゥルムピストルだ。
「あ?何だこれ?」
「え、えっと、しゅ。しゅつるむ、ぴすとーる?って武器です」
木下がシュトゥルムピストルを消すと武器と爆薬を取り出してシュトゥルムピストルが載っているページを俺に見せた。必死になってシュトゥルムピストルを説明しようとする木下可愛い。
木下の個人授業めっちゃ受けたい。眼鏡の木下とか滅茶苦茶可愛いだろ。眼鏡木下好き。夜の個人授業も受けたい。
「銃は知っている。
ソイツはドイツ国防軍が作ったカンプピストルを発展改良した物だ。元々は信号拳銃として作られたが即席のグレネードランチャー閉じて前線で改良、それを上層部が正式に採用した筈だ」
「は、はぁ……そ、そうなんですか……」
そうなのだ……ああ、可愛い。好きぃ。めっちゃ好きぃ……愛してる。史華って呼びたい。
「そうじゃない。
何故、木下がそれを持っているんだ?」
「え、えっと、な、何か、これ欲しいなーって思ったら……」
出て来たらしい。他にもRPG-7とさパンツァーファウスト等も出て来た。史華、いやふみちゃんスゲェ!愛してるぅ!チュッチュしたい!
結婚してぇ……
「だ、だから、そ、その……せ、折角、そ、それを貰って来てもらって……」
む、無駄にしてしまってゴメンナサイ!と土下座せんばかりに頭を下げる木下。ふみちゃん。めっちゃ頭撫でたい。そんな事気にしなくていいよーふみちゃんは何も悪くないよーっていってあげたい。よし言おう!
「気にするな。
それが出たという事は、お前がそれだけ力を使いこなせて来たと言う証拠だろう?何も謝ることはない。むしろ誇れ」
良くやった、そう言って頭を撫でようとして脇からクソ厨二ハーフが俺のふみちゃんに抱き着きやがった。フランス語で何か言ってから凄いデース!と史華を押し倒した。
何コイツ?
「お、重いですジャンヌさん!」
そらそうよ。重さ20キロある火炎放射器背負った鎧だぞ?軽かったら怖いわ!
「さっさと退けジャンヌ。
木下が困ってるだろうが」
総重量100キロは超えているだろう。脇に押し退けて木下を立たせて服に付いた埃を払ってやる。
「では明日からは敵に付いての座学からやるぞ。
今日で基礎訓練は終了しよう」
良くやった。再度褒めてやり、解散と告げた。取り敢えず、風呂に行こう。