15話
2時間程して俺と木下のメイド服等が来た。
「うむ、コレだな」
姿見で体に合わせカツラを被って見てみると中々に似合っている。
「よし、着替えて後で合流だ」
「は、はい」
木下と別れて部屋に戻ると大輝と田上がヤッていた。何してんだコイツ等本当に?猿じゃねぇんだからよぉ……まぁ良いけどさ。
「ゆ、優、これはな?」
「どうせ治療してたらそのまま発展したんだろ?
血の付いた包帯とかタオルとかはちゃんと処置しておけよ?あと、ヤれば出来るって名言も忘れるな」
なお、田上は俺をクッソ睨んで来ているが相手にしない。つーか、怖くて触りたくない。
「優君は木下さんとキスはしたの?」
敢えてスルーしていると田上がシーツで体を隠しながらそんな事を尋ねてきた。
「していない」
できるわけ無いだろ、馬鹿か?
「なんで?木下さんの事好きなんでしょ?
木下さん、優君と大輝が城に行った時に私に何故自分が優君に好かれているのか分からないって言ってたわ。自分の能力が目当てでそう言ってるのかもって。話す時も目を見てくれないし、手も繋いでくれないって」
「はぁ?
お前は馬鹿なのか?木下だぞ?木下の手を繋ぐとか不敬過ぎるぞ、弁えろ。話す時も目を見て話すとか恐れ多いわ。キスなんかしたら俺は死ぬ」
女神のキスとか自分の命を犠牲に勝利した英雄にのみ贈られる最後の褒賞であり名誉だぞ?木下のキスとかの俺死ぬしかないじゃん。
「……優。君、大丈夫?」
「何がだ?」
俺は何時でも大丈夫だ。
「いや、木下さんと手を繋ぐのが不敬とか目を合わせるのも恐れ多いとか、キスしたら死ぬとか……」
「は?お前、木下はマジで女神だからな?」
「「え?」」
二人して俺をマジマジと見つめて来た。何だコイツ等?
「えっと、優はさ、木下さんを何時から好きだったの?」
「高校入学した時に偶々校門の所で木下を見付けて一目惚れしたな」
校門から校舎に続く並木道。木下は迷い込んで来た猫に威嚇されてビビっていた。ひょぇ!?とか今思い出しても悶絶級の可愛い悲鳴を上げていたのを思い出す。木下はそのまま大慌てで校舎に走って行き、猫はその後を追いかけようとした。
ふてぶてしい野良猫だった。俺は咄嗟にその猫の前に立ち塞がって頭を押さえてやったのだ。不服そうに鳴くが俺は猫の襟首というのか?彼処を掴んだまま校門の外に連れて行き放ってやった。
木下はマジで可愛い。死んでしまう。
それから、同じクラスになり様々な事があったが俺はずっと木下を見ていたな。ああ、俺はきっと幸せの絶頂に居るんだろう。
「それから最近に至るまでずっと片思いしてた訳?」
「ああ、そうだ。
見ているだけでも充分に俺は幸せだった。俺は木下のような女神をこの世で見た事はない。完璧な存在だ」
思い出しただけでも堪らんな……はぁ、木下マジ天使。いや、女神だわ。
「何と言うか、凄いストーカー気質ね」
「優の知らない一面を見た……」
「失礼な奴等だ全く」
「と言うかさっきから俺の見間違いじゃ無ければメイド服を着ているようにしか見えないんだけど?」
大輝は俺がカボチャパンツめいたスカートの下に穿く白い薄手のズボンを見ながら告げる。
「俺はメイド服を着ているつもりだったが?
どうだ?似合うだろう?」
カツラを被って一周してみせる。
「不覚にも美人に思えたのが悔しい」
「化粧したら完璧じゃないのよ……」
二人して目頭を押さえて項垂れた。今度、すね毛を剃ろう。
部屋を出て隣の木下の部屋に。部屋をノックするとドウゾと聞こえてきたので開けてみる。そこには確かに女神が居た。ここが地上の楽園、人類最後の桃源郷、修験者達が目指した極楽浄土……
「木下」
「は、はぃ!」
「俺は今冷静さを欠こうとしている」
「ええ!?」
「説明してくれ、詳しく」
「せ、説明?な、何を説明すれば……」
オロオロし始めた木下を見て俺は死にそうになった。スマフォを取り出してその姿を激写してから、毛布を一枚肩から掛ける。
「木下。済まないが木下はメイド服を着て訓練はしてはいけない」
「な、何で?に、似合わなかった?」
木下がシュンとしてしまった。思わず勃起した。
俺の鋼の精神力で押し倒そうとする本能を張り倒し、木下の肩を掴むだけに押し止めた。流石俺。
「その逆だ。
似合いすぎている。正直、そんな格好で訓練されたら気になって訓練に身が入らない」
今も少しずつ抱き寄せてしまってる辺り、その破壊力はお分かりいただけるだろう。
「先程、田上から俺が本当に木下の事を好きかどうか分からないと相談されたと聞いた。
目を合わせて話をしてくれない、手を繋いでくれない、キスもしてくれない。確かにそうだ。それに関しては事実だし、申し訳ないと思っている」
抱き締めそうになり、その手を離す。
「俺が今もこうして話しているのに目を合わせないのは、お前と目を合わせて話すと俺がお前の事を好き過ぎて冷静ではいられなくなるからだ。
俺かお前の手を握らないのは、お前の手を握ることで、俺がお前に対して余りに利己的な制限をかけないようにするためだ。お前にキスをしないのは、俺がお前を独占し過ぎないようにだ。
俺はお前の事が好きだし、お前の為なら世界を敵に回しても良いだろう。俺はお前の事が好きだ。お前と言う存在が居るから俺は今も頑張っている」
木下の目を見て告げると木下は顔を真っ赤にした。そして、目をキョロキョロと動かしてから吐息が漏れる様に告げた。
「ぁ、ありがとぅ……」
「ああ、それと申し訳無いが元の服装に戻ってくれ。
このままだと本気でお前を押し倒してしまう。それはお前の本意でも俺の本意でもない」
完全に勃起してしまったので急いで部屋を出てからトイレに向かう。そして2発ほど抜いてから部屋に戻る頃には木下は制服姿に戻っていた。
「済まないな。
そのメイド服は俺と二人だけの時に見せて欲しい。きっとその服を着た姿を他の男子が見たら言い寄ってくる筈だ。気を付けろ」
「そんな事は……」
無いですと言い掛けたが木下は恐縮した様に縮こまってしまった。可愛い。反則過ぎたろ、この可愛さ。どうしよう?
なんて事考えていたら誰かが扉をノックした。控え目なノックだ。メイド達ですらもう少し無遠慮だ。そして、必ず自分達がメイドである事を伝える。
右手にガバメントを召喚して扉に照準を合わせたまま左手で扉を軽く開ける。その瞬間、短剣が凄まじい勢いで普通に開けたら顔があるだろう場所目掛けて伸びたので左足で思いっ切り扉を蹴り飛ばして腕を挟み。そのまま銃を撃つ。5発ほど撃つと、短剣を握った手から力が抜けた。
木下を狙ったのか?木下を見ると既におっかなびっくりだったがクロスボウを持っている。俺は手に向かって一発撃ってから銃をベネリのM4自動式散弾銃に変える。海兵隊もM1014と言う名前で採用しているショットガンでコイツの凄い所はどんな種類の散弾でも何の調節もせずに発射可能な所にある。
殆どの自動式散弾銃はガスオペレーションシステムを搭載した所謂ガス圧式散弾銃だ。対してこれはイナーシャシステムと呼ばれる独自の反動利用式を搭載した物で会社や弾種に依って異なる炸薬量の弾をまぜこぜにしても何の不都合なく撃てるという物だ。
扉を開くと、腹と胸に弾を浴びたバカメイドと同じメイド服のメイドが倒れ、床に血溜まりが出来る。
「何だコイツは?」
ベネリを構えて外に出ようとしたが、木下が俺の左手を摑む。
「こ、コレ投げよぅ」
木下が取り出したのはスタングレネード。なる程な。俺は頷いて木下と共に壁に隠れると、木下が引張環を引いて安全レバーを外す。
そして、そのまま廊下に投げた。その数秒後凄まじい閃光と音がした。ベネリを構えて外に出ると数名のフレンチメイドが耳や目を押さえて蹲っていた。脇には剣やナイフが転がっていたので全員の頭に散弾を叩き込んでやった。木下の命を狙うとは良い度胸だなコラ!
メイド達の死亡を確認し、隣の部屋に声を掛ける。
「大輝!入るぞ!」
扉を開いて素早く中に入ると、大輝がメイドと鍔迫り合いをしていた。散弾を撃とう思ったが大輝や背後の田上に当たることを考慮して思わず引き金に掛かる指が緩む。
しかし、次の瞬間、木下が前に出てメイドに矢を放つ。矢はメイドの腕を掠めて壁に突き刺さったが、メイドはその攻撃に思わず力を緩めた。
大輝はその瞬間を見逃さず鍔迫り合いわ押し勝つ。俺はその離れた隙きを狙って側面から腹目掛けて発砲。小腸が部屋中に撒き散らされた。
「た、助かった……」
「良いから服を着ろ」
パンツすら穿いていない大輝に告げて、俺は腹を抑えて呻いているメイドを見る。
「やれやれ、あのクソメイドは俺たちを油断させて殺しに掛かって来たか」
「め、メイド長は、か、関係……無い……」
メイドはゴフッと血を吐きながら告げた。
「それこそ関係ない。お前達はあのクソメイドと同じ組織の人間だ。だから殺す。まぁ、俺が殺すわけでもなく国王にやって貰おう。
部下を躾ける事すら出来ん無能とそんな屑が率いた組織は潰して貰う」
「や、止めろ!メイド長が……ど、取れ程の思いで、こ、のメイド隊を、そ、組織したと……思っている!」
知るかよそんなもん。
「そんなものどうでも良い。
暗殺者の思いとか犬の糞レベルにどうでも良い」
メイドにとどめを刺してやろうかそれともまだ情報を引き出そうか考えていると、田上がいきなり治療をし始めた。え、何してんの此奴?馬鹿なの?アホなの?死ぬの?
慌てて田上の行動を止めさせた。
「何するのよ!?早くしないと死んじゃうわ!」
「お前こそ何してんだよ!?
此奴は俺達の命を狙った殺し屋だぞ!」
「だから何!目の前に死にそうな人が居たら助ける!私はそう決めたのよ!」
「なら、これで良いわね」
振り返るとバカメイドが立っており、手にしたハンドアックスで殺し屋の頭部に一撃を入れた。
銃をベネリからMP5Kに持ち替えてクソメイドの両足を撃つ。メイドはその場に跪く様に倒れるので空かさず両腕を撃った。そして、木下と田上を素早く俺の背後に回し大輝に二人をカバーしろと告げた。
「わ、私の指示ではない」
「らしいな。だが、俺はそんな事を信じない。
お前の仲間はあと何名居る?」
「わ、分から無い。この離反も知らないし、この騒ぎで初めて気が付いた」
言っている事は本当なのだろう。だが、そんな事は最早意味を為さない。不信は疑心を呼び我々召喚者は大いに懐疑する事になる。
そもそもの話、元の世界に帰るためとは言え、何故、我々だけが命を賭して、しかも背面からのナイフを刺される可能性も帯びながら戦わねば行けないのか、と。
「これは高度に政治的な問題に発展するぞ」
しばらくした後に武装した騎士と兵士が駆け付けて此処は彼等の預かりとなった。
俺は木下と離れる事は絶対にしないし、手荒な真似をするならば殺すとまで言うと向こうはすんなりと俺達が固まる事を許してくれた。
キチガイよりも狂気ってる主人公を目指したいこの頃
少女漫画の主人公を好きになる彼氏なんかが良いと思って最近は好きっていいなよ。を読んでる
めいちゃんには幸せになって貰いたい(貰いたい)




