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11話

 今後絶対に酒なんか飲まないと固く誓った。

 起きて周り見ると、隣には半裸の木下が寝ており、別のベットにはジャンヌとマルギウス教授も寝ていた。取り敢えず、上半身だけ起こしてる状態でも少しフラフラする。多分まだ酒が抜け切っていないのだろう。

 窓から外を見れば真っ暗だ。何時だ?腕時計を見ると夜中の3時。

 取り敢えず、水を用意しよう。ベッドから滑り落ちるようにして床に下り立つ。その後、四つん這いで扉まで歩いた所で背後に誰かが立つ。


「何してるんデスカ?」


 振り返れば目を擦っているジャンヌが立っていた。


「ジャンヌか。

 悪いが水を持って来てくれ」

「Non!ミナミの行動に付いてではアリマセン!

 何故安全策の行動デ、ベッドから降りるのデスカ!そこはフラ付いてフミカに覆い被さるのがお約束デス!」


 朝から頭が痛くなる事を言うんじゃない。杖代わりに三八式歩兵銃を取り出してそれを使い立ち上がる。


「恥ずかしながら帰って参りました」

「何のマンガデスカ?」

「漫画じゃない。

 兎に角、水を持って来てくれ」


 そのまま、ソファーに移動して座る。頭がフワフワする。暫くぼーっとしているとモゾモゾとベッドが動く。見ると木下がモソモソと起き上がろうとしていた。

 確かにあの後アホの様にワインと思しきものを飲んだ。木下も、マルギウス教授も、ジャンヌもだ。外人の血もあってかなかなか強い。


「おしっこ……」


 フラフラと立ち上がった木下はそう呟くと歩き出した。しかし、その足取りは俺以上に危うい。トイレまで連れて行くか。途中で怪我されても困る。木下が召喚された時に着ていたのだろうカーディガンを手に取って、そのまま木下に掛けてやる。


「ほら、風邪ひくぞ」

「ん〜……」


 木下は頷きフラフラと歩く。ソファーにぶつかりそうになったので、肩に手を回して連れ添ってやる事にした。


「トイレまでついて行ってやるから、真っすぐ歩け」

「ん~?南くんが居る?」

「ああ。

 ほら行くぞ」


 寝惚けと酔いで意識がはっきりしていないのか、何時もと違って俺を確りと見詰めていた。

 木下にここまで見詰められたのは初めてだろう。


「南君は」

「ああ」

「なんで私に親切にしてくれるの?」


 焦点があまり定まっていないボーッとした目で俺を見つめている。寝ぼけているのだろう。


「決まってる。お前の事が好きだからだ」

「はー……夢でも幸せ」

「そうか」


 扉を開けて廊下に出るとジャンヌがニマニマした顔で立っていた。手には水差しとコップ。


「何を笑っている」

「起きてる時に言えば良いのデス」

「黙れ。

 木下をトイレに連れて行ってくれ。俺は部屋に戻る」

「オマカセヲ」


 水差しからコップに水を注ぎ一息で全部飲む。暫く外を眺め、部屋に向かうことにした。満月でとてもきれいな眺めだ。俺達の世界とは違い、この世界の光量は多分殆ど無いだろう。街灯や店舗用のランタンは魔術によって賄われているが、それでも蛍光灯や電球よりも暗い。そんな訳でかなり多くの星を見る事ができるし、月もよりハッキリと輝いている。

 部屋に戻るが、誰も居ない……訂正。何か居る。

 M26を取り付けたM4を取り出し、部屋の中をフラッシュライトで照らす。すると、一人の少女がソファーに座っている。


「……誰だ?」


 格好はメイド服。だが、こんなメイドは見たこと無い。そもそも中学生位のメイドはいない。つまり、スパイか何かだ。と、言うかこの時間にこんな小さな子どもが俺たちの部屋に来ることは絶対に無い。

 つまり、敵だ。

 M26のトリガーに指を掛けて左手でストレートボルトを握る。そして狙いを定めた所で、少女はソファーから立ち上がった。


「初めまして勇者様」

「誰か」

「私は所謂冥王軍残党」


 トリガーを絞った瞬間、少女は消える。


「話に聞いた通り、問答無用ですね」


 ショットガンが当たらない。よし、逃げよう。先程までの酔いが消え去った。M26からM4に換えて部屋の中にばら撒く。しかし、全ての弾丸を躱される。そこは問題無い。相手を牽制しながら扉を破り廊下に転がる。

 それからどうせ当たらないのならとアメリカン180に275発弾倉を取り付けた物を取り出してばら撒く。深夜だというのに近所迷惑だろう。


「南何やってんだ!」


 後ろからクラスメイトが俺の肩を掴む。


「見ればわかるだろう!」

「あ、時間切れ。

 じゃあね、また」


 女はそう言うとフッと消え去った。何だコリャ……

 銃を構えたまま周囲を見るが本当に消え去った様だ。


「お、おい、どうしたんだよ南……」

「どうしたもこうしたも、今、敵が居たろう。メイド服を着た少女の」

「はぁ?」


 良いから銃を仕舞えと取り上げられ、それから武装した騎士や魔術師達が押し掛けて大騒ぎ。俺は事情聴取と言う事で別室で話をする事になる。


「結果から言えばこの城に敵の侵入は無かった。

 勇者ミナミの精神に敵、即ち冥王軍残党の幹部が攻撃を仕掛けてきた訳だ」


 翌朝、騎士団長が食堂に現れて昨晩の事件とその顛末について話してくれた。


「洗脳とか?」


 クラスメイトの誰かが告げた。


「いや、幻覚を見せる魔術みたいなものだ。

 昨晩は満月で魔力がそこら中に満ち足りていた為に勇者ミナミは敵にかどわかされたりのだ。

 勇者様方は魔力の無い世界から来たということで、特に魔力適正の低い方にはその対抗する術が無いし耐性もない。

 今後は魔術師達とも協力してこの城の魔術防御を高めていくが、皆さんも是非とも積極的に魔術に興味を持って貰いたい」


 因みに魔術は英語をやりながら数学をする感じなので男子や頭の悪い奴等には殊更人気が無い。斯くいう俺も魔術よりも銃が出せたのでそっちに傾倒していたりする。

 俺はふと視線を感じて視線が来る方を見ると那須川が俺を見つめていた。何だ?まだ大輝を狙っているのか?まぁ、奴は魔術の適性が高かったからこういう場面では誰よりもデカイ顔ができる。

 さらに言えば奴は大輝狙いの一人だから俺に付け入れば後はどうにでもなると言う算段なのだろう。


「ッチ……」


 席に座って対面の木下を見ると完全に死んでいる。二日酔いだ。

 ジャンヌはケロッとした顔で座っており、マルギウス教授も少し眠たそうだが然程堪えた様子はない。田上は目が覚めたがまだ本調子ではないとかでそのまま給養。

 大輝は眠そうな顔でテーブルに座っていた。


「取り敢えず、今日の活動は無しだな。

 全員確りと休養取ろう」


 大輝が木下を見ながら告げる。


「そうだな。

 木下はすぐに帰って水飲んで寝ていろ。安静にしろ。ジャンヌは木下に着いてやれ」

「ぁい………」

「任せアレ!」


 ジャンヌはビシッと敬礼をしてから木下を支えるように立ち上がった。俺は大輝を見る。大輝も大概眠そうで、欠伸を噛み殺していた。


「教授」

「はい」

「今日の所は何もないので帰ってくださって結構です。

 明日、昨日の目的である魔物の生態等を聞きに行きたいのですが、よろしいでしょうか?」


 目がショボショボしているマルギウス教授に尋ねると、マルギウス教授もはいそれでお願いしますと頷いた。近くに居るメイドにマルギウス教授を確りと家にまで送り届けて欲しいと告げるとメイドはお任せ下さいと一礼し、マルギウス教授と共に去って行く。

 俺は再度大輝を見る。


「部屋に戻って一眠りする。

 聞きたい事は幾ばくかあるがそれはまた起きてからかだ」

「ああ。

 そうして貰えると助かるよ」


 二人してフラフラの足取りで歩いていると背後から小走りに誰かが近付いてくる。

 誰か、は俺達の隣に来ると走るのを止めた。誰か、を確かめる為に顔を向けると那須川であった。


「超眠そうだけど、大丈夫?」

「大丈夫に見えるのか?」

「やぁ、那須川。

 俺達は一眠りするよ」

「起きたらさ、精神干渉魔術用の防護魔術教えてあげるけどどう?」


 成る程、この状況でやって来るのか。コイツは確かに俺達よりも魔術に関しては一両日の長はある。


「お前に魔術を教えた双子に教えて貰う」


 変な喋り方をする双子に教えて貰った方が確実だ。

 じゃあなと那須川に告げて部屋に戻る。部屋は俺がショットガンとライフル弾をばら撒き巻き捲くったので廊下共々悲惨な事になっていた。


「部屋……」


 惨状を知らなかった大輝が弾痕と枕や布団の羽根だらけの部屋を見回した後に俺を見た。


「弁解はせん。

 一応、鞄などには当ってないはずだ。この方向とこの場所からこの方向に向かって撃ったから」


 二人してクローゼットの中を開けて鞄や私物を確かめると案の定無事だった。


「大変申し訳ありません!」


 そこに箒や雑巾を持ったメイド達が現れた。


「お二人のお部屋が変わった事をお伝えするのを忘れて居ました!

 お部屋の用意は既に済んでおりまして、どうぞこちらに!」


 メイドの一人が慌てて俺達に頭を下げる。不可抗力とは言えド派手に壊した本人のせいなのにこうも頭を下げられると尻の座りが悪い。


「いや、俺の方こそ折角の部屋をメチャメチャにしてしまった。

 掃除も大変だろう。何か手伝える事があったら言ってくれ」

「そんなとんでも御座いません!

 お気持ちだけで結構で御座います」

「そうか。では此処は貴女達掃除のプロに任せて俺達は邪魔にならない様サッサと新しい部屋に引っ込むとしよう」


 此れで俺達に、部屋で大暴れして手伝いもしない嫌なガキ共だと言う認識は幾分か薄まったはずだ。大輝と共にメイドの後を続いて歩いて行くと、女子達が固まっている、通称女子エリアの中にまで侵入していた。


「女子エリアだな」

「ああ」


 そして、そのエリアの最奥。丁度木下の隣の一個空いていた部屋に俺達は収まることになった。


「大変申し訳ありません。部屋が直るまでは暫くこの部屋でお過ごし下さい」

「あ、ああ。わかった」


 木下の隣の部屋とか滅茶苦茶緊張するんですけど、何か?

 俺達は部屋に入ると元の部屋と同じ要領でベッドに分かれて倒れ込む。


「そうだ、優」


 モゾモゾと制服を億劫に脱いでいると同じ様に制服を脱いでいた大輝が話し掛けて来た。


「何だ?」

「俺、田上と付き合う事にした」


 そうか。田上の奴は俺の意図を上手く汲んだか。ウムウム。


「おめでとう」

「あ、ああ……それだけか?」


 大輝は服を脱ぐのを止めて俺をジッと見ている。

 何だ?ホモか?


「何だ?もっと祝福して欲しいのか?」

「い、いや、違う。

 正直、俺はお前は田上が好きなんだと思っててさ」


 何でだよ……いや、確かに田上の奴に今日やった事の報告という名目で大輝の鈍感さの愚痴を聞いていたが。


「何故俺が彼奴を好きにならにゃいかんのだ。

 俺のタイプとは掛け離れている」


 俺はああ言うのでは無く、木下の様な奴が、否、木下が好きなのだ。


「え、じゃあ、何であんなに積極的に田上に話し掛けに行ってたんだ?」

「俺は彼奴にお前とくっつくように補佐していた。

 俺はお前の母親の次にお前の事が詳しいと自負している」

「マジかよ……

 え、じゃあお前の好みって誰だ?那須川?」


 殺すぞ。


「ぶち殺すぞ」

「えぇ!?」


 折角、気分良く寝れそうだったのに馬鹿大輝のせいで気分を害した。


「俺はもう寝る。いや、寝る前に歯磨きをしてから寝る。

 先に寝ていろ」


 俺等よりも前に召喚された先代の勇者様達が作った歯ブラシやジャージめいた運動着等を着用しており、制服に関してもセーラー服や学生服がある。まぁ、俺の学校はブレザーだったが、正直セーラー服の木下マジ天使。やばい。しかも、紺ではなく黒セーラー。先代の勇者様神かよ……

 歯ブラシと良くわからんミントの歯磨き粉めいた奴を片手に洗面所を目指す。タオルも勿論忘れない。廊下を出るとジャンヌが隣の部屋から出て来て丁度出会した。


「ca m'etonne!」


 何言ってんのか分かんねーけど多分驚いた!的な感じだろう。


「部屋がメチャクチャになったから直るまではこの部屋に居るんだ。

 木下は?」

「フミカは今ネマシタ」

「そうか、済まんな。

 お前はこれからどうする?」


 ソウデスネーとジャンヌは下顎に手を当て、それから目を細めて魔術を習うと頷いた。


「魔術か……

 それも視野に入れねばいかんのか」

「Oh……ミナミは魔術嫌いデスカ?」


 嫌いと言うか、興味が無い。ボール系魔術とか手榴弾か40mmグレネードで普通に勝てるしランス系は拳銃で十分だし、ソードはまぁ、無いが範囲攻撃なら機関銃系か散弾銃で良い。

 攻撃魔術は俺の銃に劣る。


「自己強化系の魔術なら興味があるな。

 今現在の問題点は俺の体力の無さだ」

「タイリョクレンセーデスカ?」


 そうだと頷き洗面所に歩き出す。ジャンヌも俺の横に続いて歩く。


「お前は何故魔術を覚えたい?」

「ロマン、デスネ」


 ジャンヌはフッと笑い告げた。そういう奴だったよお前は。だが、ロマンは大事だ。浪漫があれば努力が出来るし、浪漫があれば頑張れる。

 中二病ってのはあながち悪いもんじゃない。


「なる程な。なら、俺も魔術を習ってガンカタでも修得してみるか?」

「応援シマスヨ」


 洗面所に着いたので、俺はジャンヌと別れた。後は洗面して寝るだけだ。

最初の戦闘終わり系な感じで

言うなれば第一章完?

章分けして無いけど


主人公のお気に武器どうしよう?

あと出して欲しい銃を感想に書けば漏れ無く出て来るキャンペーン開催中


架空武器はムズいけどハンドメイドカスタム武器は出せるよ


例:StA-52は出ないけどガバメントにフルオート改造してフォアグリップにスケルトンストックと改造した30連装弾倉は出る


そう言う出来そうなカスタムなら良いよ

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