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(仮題)俺は堅実に生きたい  作者: うぜん
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中等部回想 生徒会編2

結論から言ってしまえば、おれは十三歳にしてよく読みもしない書類にサインしてはいけないという有難い教訓を得た。


あの書類は故意に印刷を薄く刷った生徒会会計立候補届けと、生徒会入会届けだったのだ。

あの先輩はとんでもない置き土産を置いていった挙句、自身は生徒会雑務と学び舎から卒業していった。


生徒会は学内生徒の自主独立を掲げ教育機関である学び舎の中に多数ある生徒の自主活動を取りまとめる組織であり、数多くの下部組織の委員会が生徒会に名を連ねている。


総ての学生年度行事や倶楽部活動、社会科見学や学び舎の秩序、施設の維持。医療や学食から教士の日当配給まで。学び舎の実務の半分以上を生徒会は手中に収めており、それら六十近い下部組織から実務に必要な備品類の納入やら使用方法などの詳細が入った会計書が添えられた備品が毎日のように生徒会承認を求めて届けられる。


これら備品は生徒会が承認しなければ実働部署に配備配給されず、返品されるので会計書類はかなり詳細にその用途や現在の使用状況からの補充の必要性などが書き込まれており。


昨年度のおれ自身が体験した苦労から、提出者の熱意や苦労が手に取るようにわかる代物であった。


基本的には前回同様の申請が殆どであり、それらは会計二年目の高等一年のクレア先輩が取り扱う流れが確立されていて。おれにはお初物件いわゆる新規物ばかりが任された。


案件数は少ないのだが、これが想像以上にメンドクサイのだ。


各委員会にも色々な意味で過激な委員は多いようで、風紀委員会の実働警邏部からの暴徒鎮圧用装備が毎週届く。学び舎内で刃のついた実剣とか誰相手に振るうつもりなんだ。却下の印鑑を押すと翌日風紀委員の高等三年カール氏が怒鳴り込んできて放課後の殆どの時間を潰されたり。


あと変わったものといえば先週クレア先輩が休みの日に代わりに日常業務で承認印ばんばん押してたら、男子生徒には謎の委員会である女性向上委員会の備品があった。


いつもの様に備品見て問題なさそうなら書類も見ずにばんばん承認印押していたら、意味不明で正体も用途もわからん数十点の小物が出てきた。厳重に黒い紙袋で二重に梱包されている。ここで初めて会計書類に目を向けると、表紙に女性向上委員会の名が書いてあった。


女性向上委員会だけは男子に一切活動内容が説明されない委員会で、会計書を読んでもいいのか途方に暮れて書記のバルム先輩に聞いてみたが、なぜか不自然にちらちら見るのだが先輩も知らないらしい。


会長と副会長は重要案件終わらせて、早々に広くて明るく快適な農研部部室に細かな案件持って行ってしまったので、狭くて暗い生徒会執行室には俺と書記のバルム先輩しかいない。


案件が男子禁制の事案っぽい事だけはおぼろげに理解している男子二人。バルム先輩が会長を連れてくると志願してくれたので、その間に残りの山積み案件を片付けているとエリソン女史が慌ててやって来た。


「見たわね!」


主語が無いが何やらいわれのない有罪判決を確定されてる事だけは理解した。悲しい冤罪事案の勃発である。


「しらばっくれてもダメよ!!会計書を読んだのなら、これが何だか解ってるんでしょ。」


エリソン女史は珍しく耳まで赤くなりながら、平たいパッケージを開封して一インチの正方形パラフィン紙を取り出し俺に突きつけた。まったく見当もつかないのでポカーンとあほづらをさらしていると、慌てて次のブツを取り出した。


「じゃあ!そうよ!!

これなら知ってるでしょ!!」


すでに解るから一般常識的に知ってるにシフトしている事に関して、一言物申したいのも山々であるが、此度の突き付けられた物はパルプの丸めた筒状お手拭っぽいのに、どこにも端の切れ目がなくて、筒の先端もまったく巻いてある芯が見えない不可思議なお手拭だった。どうすれば広げて手を拭けるのだろう??


というか、何を言いたいのかまったく見当つかないが、これはぞわぞわアブラ虫菜事件と同じくエリソン女史が何か勝手に誤爆しまくった挙句、他人を巻き込んで自爆するいつものパターンだ。普段とても凛とした理性的なこの人は得意分野外のことはからっきしのど天然になる。


「ほら、これならどうなの? 私もまだ使ってもらう機会に恵まれないけど

こっちならあなただって知ってるでしょ??」


もはや女史は俺が知らないと引っ込みがつかない状況らしく、しどろもどろになりながらマッチ箱が薄くなった様な箱を取り出した。リンゴやオレンジ等のフルーツが印刷されてて、愛のフルーツの香りと書かれている。


なんか駄菓子屋で楊枝指して食べるのに、こんなのがあった気がする。なんか知ってるでしょに至っては懇願口調だったので、可哀想なので確信は無いが知ってる体で合わせる事にした。


「はい、中に青リンゴ味とかの四角い粒が並んでて。楊枝で刺して食べ・・・?」


俺の「はい」と言う言葉を聞いたときの女史は心底ホッとした顔をしかけたが、具体的に知ってる事を説明し始めた途端、目が泳ぎだし首から上を総て真っ赤にして俯き、その場で座り込んでしまった。


なんか違ったっぽい・・・。





そんな感じで中等部二年から生徒会の業務に多大な時間を消費しつつ、ミノタウルス二世号のエサやりをしながら、完全下校時刻までのわずかな時間を農研部の部室でホコリを被っていた古い農業指南書とかの資料を読み漁りながら整理したりして、部室を活動場所にするべく頑張った。


ほぼ生徒会役員のたまり場と化しているのを横目にしながらであるが・・・


ちなみに部費でお茶や菓子を買うのは会計権限でやめさせた腹いせか、生徒会長自ら会員を連れて農研部部室を第二生徒会室化させて、会計処理以外のすべてを広くて明るい部室で行ない始めた。


こうして農研部は生徒会役員が幽霊部員として必ず入部する流れが出来上がり、本来の生徒会室は現在悲しい事に生徒会会計分室扱いになっていた。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

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