好きな女性のタイプ論
俺と拓也は女の好みが正反対だ。
今日もしょーもない対立をしていた。
「俺は背が小さくてかわいい年下の女が好きだな。甘えられたいっていうか」
「ふーん。俺はスラッとしてて美人な年上の女性に憧れちゃうな。甘えたいっていうか」
とはいえ、こういうバカ話を親友とするのは楽しいものだ。俺達はジュース片手に道端から、道行く人を眺めていた。
「お! あの娘可愛くね?」
俺は歩いて行く小柄な女に目線をやった。
「はぁ? あれが? あんなのしょんべんくさいガキじゃねえか!」
「俺は断然、あっちがタイプだぜ」
そういうと拓也は別の女に目をやった。
「お前には大人の女の魅力が、わかんねえんだろうなー。年上の色気ってやつが」
「ちょっと行ってくる」
「お、おい!」
拓也は俺の呼び掛けを無視してその女の元へ歩いて行った。
全く……拓也は昔からこうだ。好みの女性に出会うと恥も外見も無く声を掛ける。
「お姉さーん、どこ行くの?」
軽い。軽すぎる。俺は呆れてその様子を眺めていた。
「あら、何ですの?すみません。最近耳が遠くてねえ」
拓也は今年で七十歳になるのに、相変わらずお盛んだ。