【揺花草子。】<その2109:1200年越しのダメ出し。>
【揺花草子。】<その2109:1200年越しのダメ出し。>
Bさん「古文の文法でさ、『けり』ってあるじゃん。」
Aさん「ああ、うん。」
Cさん「ラ行変格活用よ。」
Aさん「うわその用語超懐かしい!! 習いましたねそう言えば!!」
Bさん「例文としては『阿部さんの腰を回し蹴り』とかがあるね。」
Aさん「それは違う蹴りだよね? それは普通の四段活用動詞だよね。」
Bさん「たぶん古文の取っ掛かりとして習うことも多い『竹取物語』。
その冒頭は、『今は昔、竹取の翁と言うものありけり。』と言う始まり方だよね。」
Aさん「ああ、うん。」
Cさん「現代仮名遣いなのは便宜上と言うことでひとつ宜しくね。
その続きは『野山にまじりて竹を取りつつよろずのことに使いけり。』よね。」
Aさん「ええ、そうでした。」
Bさん「最初に言った『けり』がここまでで2回出て来てますね。
『けり』と言うのは現代語に訳せば『・・・たそうだ』ぐらいの意味だよね。
だから冒頭の文章は『昔々、竹取の翁と言う人がいたそうだ。』って感じになる。」
Aさん「うん、そうなるね。」
Cさん「次は『野山に分け入って竹を拾い集めて、いろんなことに使っていたそうだ。』
って感じね。」
Aさん「そうですね。」
Bさん「阿部さんこの続きは?」
Aさん「え? えーっと・・・『名をば、さぬきのみやつことなむ言いける。』だよね。」
Cさん「それは少し論争があるところね。
底本によってここは違うのよ。
『さるきのみやつこ』としているものもあれば、
『さかきのみやつこ』としているものもある。
ちなみに中の人は『さかきのみやつこ』と習ったそうよ。」
Aさん「まあ・・・そう言うこともありましょうねえ・・・。」
Bさん「でもおじいさんの名前はこの際どうでも良くて、
問題はこの一文の〆におかれた『ける』だよ。」
Aさん「ああ、うん。活用形だよね。『なむ→ける』の。」
Bさん「いわゆる係り結びだね。
他にも『こそ→けれ』なんてのもあるよね。
『あやしうこそものぐるほしけれ。』みたいな。」
Cさん「阿部さんが怪しすぎて頭がおかしくなりそうだって意味よね。」
Aさん「なんでぼく兼好法師にディスられなきゃいけないんですかね。」
Bさん「この、『なむ→ける』の係り結びは、
一般的には『強調』のニュアンスと捉えられていますね。」
Aさん「うんうん。」
Bさん「つまり、『名をば、さぬきのみやつことなむ言いける』と言うのは、
現代語で解釈すれば
『なんと、その名をさぬきのみやつこと言うのだそうだ!!!』
ぐらいのニュアンスだよね。」
Aさん「えっ・・・え?」
Bさん「そんなとこ強調されてもって感じじゃない?」
Aさん「なんだよその難癖のつけ方。」
編集者みたいなダメ出し。
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