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【揺花草子。】(日刊版:2017年)  作者: 篠木雪平
2017年11月
309/365

【揺花草子。】<その2109:1200年越しのダメ出し。>

 【揺花草子。】<その2109:1200年越しのダメ出し。>


 Bさん「古文の文法でさ、『けり』ってあるじゃん。」

 Aさん「ああ、うん。」

 Cさん「ラ行変格活用よ。」

 Aさん「うわその用語超懐かしい!! 習いましたねそう言えば!!」

 Bさん「例文としては『阿部さんの腰を回し蹴り』とかがあるね。」

 Aさん「それは違う蹴りだよね? それは普通の四段活用動詞だよね。」

 Bさん「たぶん古文の取っ掛かりとして習うことも多い『竹取物語』。

     その冒頭は、『今は昔、竹取の翁と言うものありけり。』と言う始まり方だよね。」

 Aさん「ああ、うん。」

 Cさん「現代仮名遣いなのは便宜上と言うことでひとつ宜しくね。

     その続きは『野山にまじりて竹を取りつつよろずのことに使いけり。』よね。」

 Aさん「ええ、そうでした。」

 Bさん「最初に言った『けり』がここまでで2回出て来てますね。

     『けり』と言うのは現代語に訳せば『・・・たそうだ』ぐらいの意味だよね。

     だから冒頭の文章は『昔々、竹取の翁と言う人がいたそうだ。』って感じになる。」

 Aさん「うん、そうなるね。」

 Cさん「次は『野山に分け入って竹を拾い集めて、いろんなことに使っていたそうだ。』

     って感じね。」

 Aさん「そうですね。」

 Bさん「阿部さんこの続きは?」

 Aさん「え? えーっと・・・『名をば、さぬきのみやつことなむ言いける。』だよね。」

 Cさん「それは少し論争があるところね。

     底本によってここは違うのよ。

     『さるきのみやつこ』としているものもあれば、

     『さかきのみやつこ』としているものもある。

     ちなみに中の人は『さかきのみやつこ』と習ったそうよ。」

 Aさん「まあ・・・そう言うこともありましょうねえ・・・。」

 Bさん「でもおじいさんの名前はこの際どうでも良くて、

     問題はこの一文の〆におかれた『ける』だよ。」

 Aさん「ああ、うん。活用形だよね。『なむ→ける』の。」

 Bさん「いわゆる係り結びだね。

     他にも『こそ→けれ』なんてのもあるよね。

     『あやしうこそものぐるほしけれ。』みたいな。」

 Cさん「阿部さんが怪しすぎて頭がおかしくなりそうだって意味よね。」

 Aさん「なんでぼく兼好法師にディスられなきゃいけないんですかね。」

 Bさん「この、『なむ→ける』の係り結びは、

     一般的には『強調』のニュアンスと捉えられていますね。」

 Aさん「うんうん。」

 Bさん「つまり、『名をば、さぬきのみやつことなむ言いける』と言うのは、

     現代語で解釈すれば

     『なんと、その名をさぬきのみやつこと言うのだそうだ!!!』

     ぐらいのニュアンスだよね。」

 Aさん「えっ・・・え?」


 Bさん「そんなとこ強調されてもって感じじゃない?」

 Aさん「なんだよその難癖のつけ方。」


 編集者みたいなダメ出し。


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「Meister's Brief」から自動転送

http://www.studiohs.com/28if/brief/2017/11/05.html


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