【揺花草子。】<その2027:神話を語る。>
【揺花草子。】<その2027:神話を語る。>
Bさん「イカロス先輩いるじゃないですか。」
Aさん「イカロス先輩誰だよ。」
Cさん「知らない? ギリシアの。」
Aさん「あぁ・・・あのイカロスなんですね。」
Bさん「イカロスはさ、ダイダロスって言う腕利きの大工さんの子供だったんだよ。
ダイダロスさんは職人でもあり発明家でもあったんだけれども、
ライバル業者の足を引っ張ることで自分の地位を保とうとするクズでね。」
Aさん「いや・・・クズとか言っちゃっていいの?」
Cさん「だってあれよ、
タロスと言う人がノコギリを発明したらそれを妬んでタロスを殺すし、
別の話ではその親であるペルディクスがコンパスを発明したら
それを妬んで殺すのよ。
酷いにもほどがあるじゃない。」
Aさん「いや・・・それだけ聞くと確かにそうですけど・・・。」
Bさん「他にも迷宮脱出の方法を人にバラすとか、まあ何かと素行の悪かった彼。
早晩パトロンだったミノス王の不興を買い、
息子のイカロスとともに塔に幽閉と言う憂き目を見るわけ。」
Aさん「うーん。」
Cさん「そこからのくだりは有名よね。
イカロスは蝋で作った鳥の羽根を両手に持って塔の窓から空に向かって飛び出す。」
Aさん「あぁ、はい。そうですね。」
Bさん「この羽根づくりはイカロスの親父のダイダロスも協力したんだけれども、
ダイダロスは
『海に近づくと湿気で羽根が壊れるぜよ』
『太陽に近づくと熱で羽根が溶けるぜよ』
とイカロスに厳しく申し付けていたんだよ。」
Aさん「なんでそんな微妙な土佐弁で。」
Bさん「けど若く愚かだったイカロスは、
自由に空を翔る力を得てすっかり増長してしまった。
今なら太陽にも手が届くはずだと。
きっと今は自由に空も飛べるはずだと。
君と出会った奇跡がこの胸にあふれてるんだと。」
Aさん「いやなんでイカロスそんな幼い微熱を下げられないままな感じなの?
むしろ神様の影をぜんぜん恐れてないやつだろ。」
Bさん「そんな風に思い上がった彼は太陽に近づきすぎて、
あっさり羽根が溶けて海に墜落死。
実に自業自得の死を迎えたわけです。」
Aさん「まぁ・・・。」
Cさん「余談だけれども、有名な『勇気一つを友にして』って歌では
大空に向かって果敢に飛び立ったイカロスの勇気を褒め称える論調だけど、
実際この神話の意図は人間の思い上がりを諫める文脈なのよね。
つまりまるっきり意味が逆転しちゃってるわけ。」
Aさん「うーん・・・まあそう言われるとそうかもです・・・。」
Bさん「さらに余談だけど、イカロスの失敗を反面教師にして
親父のダイダロスは慎重に飛行を成し遂げ、無事シチリアに辿り着いたと言うよ。」
Aさん「またダイダロスのクズエピソード出て来た。」
Bさん「で、問題はその墜落死したイカロスですよ。
溶けた蝋の羽根とともに海に落ちたわけですよね。」
Aさん「そうだね。」
Bさん「つまりは海洋汚染。」
Aさん「いやっ・・それは・・・どうだろうね・・・?」
Cさん「イカロスが墜落した付近の海では油膜が広がり、
水産資源に相応の被害が生じたはずよ。」
Aさん「それは・・・。」
Bさん「地中海の豊富な魚介類の水揚げ量が
一時的に減少したなんてことだってあったでしょう。」
Aさん「あった・・・かなぁ・・・。」
Bさん「地中海沿岸の国々では魚料理もいろいろあるよね。
またギリシアのみならずスペインやイタリアなどでは
烏賊も良く食べられています。」
Aさん「あぁー。
魚介のパエリアとかイカ墨パスタとかあるもんね。」
Cさん「でも他のヨーロッパの国々ではタコと同じ感じで
烏賊を食べる習慣はあまりないのよ。」
Aさん「へぇ・・・。」
Bさん「ま、そんなわけで、イカロスが引き起こした海洋汚染によって、
魚介類、魚や貝などの水産資源が著しく減少した。
さっきも話題にしたギリシアやスペイン、イタリアなどの国々の人々は
大好物の烏賊が獲れなくなって悲しんだと思うのです。」
Aさん「そう・・・かな・・・?」
Bさん「つまり烏賊ロスと言うわけだ。」
Aさん「『と言うわけだ』じゃないよ。」
烏賊の消費量世界一は日本だそうですよ。
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