【揺花草子。】<その1975:流れもの。>
【揺花草子。】<その1975:流れもの。>
Bさん「──ねえ、阿部さん?」
Aさん「なに? ブリジット。」
Bさん「・・・。」
Aさん「え・・・なに今日は随分と大人しいけど・・・。」
Bさん「阿部さんはさ。」
Aさん「え? うん。」
Bさん「あ・阿部さんは、ぼくが──」
Aさん「うん、なに?」
Bさん「──」
Aさん「・・・?」
Cさん「そんな訝しげな顔でこっちを見ないでよ。」
Aさん「いやブリジットがなんか全然要領を得ないので・・・。」
Bさん「あ・あのね。」
Aさん「うん。」
Bさん「・・・あの、ぼくが引っ越すって言ったらどうする?」
Aさん「えっ? 引っ越すの? そんな予定があるの? どこらへん?」
Bさん「──。」
Aさん「え、なに?」
Cさん「っ──」
Aさん「・・・ちょっ、カトリーヌさんなんですその・・・神妙なと言うか・・・」
Cさん「出来れば2,000回まで頑張りたかったけどね・・・」
Aさん「えっ・・・えっ!? ちょっ!?
引っ越すって・・・え!?」
Bさん「ぼくらは根無し草だよ。
遠くの国からこの国にやって来て。
──そのくせ、すっかりこの国に根を張ったと、勝手に、思い込んでた。」
Aさん「えっ・・・いや・・・え・・・!!?
で・でも、言ってもほら、カトリーヌさんだって仕事がありますもんね?
引っ越すって言ったってどうせあれでしょ? 隣の区とかそんなレベルでしょ?」
Cさん「私はフランスで自分の仕事を捨ててこの街に来たのよ。」
Aさん「っっっ・・・!!!
い、いや、でも・・・急にそんな・・・!
まさか・・・!」
Bさん「でも、いつになるかはまだはっきり分からなくてね。
ただ、──その、こう言う言い方をすると少しアレだけど、
阿部さんにも、相応の覚悟をしておいて欲しいの。
──過ぎた願いかも、知れないけれども。」
Aさん「い・・・いや・・・そんなことは・・・ないけれども・・・。
で、でも、どこに引っ越すの・・・?」
Bさん「えっ?」
Aさん「えっ?」
Bさん「あぁー・・・」
Aさん「えっ? なにその顔?」
Bさん「(どこにしよう・・・)」
Cさん「(どこがいいかしら・・・)」
Aさん「えっなに2人でこそこそ喋ってるんです?
気のせいかも知れないけれども、今慌てて決めようとしてません?」
Bさん「そ、そんな事ないよ!?」
Aさん「それじゃどこに引っ越すって言うのさ。」
Bさん「えーと・・・じゃあ・・・」
Aさん「(じゃあって言った・・・)」
Bさん「フォン・ブラウンで。」
Aさん「月かよ!!!!!」
なん100年後になることか。
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