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正は男の方を振り向く。
「三島じゃないか。どうしたんだ?」
正の同僚だった。
「どうしたも、こうしたも、そいつを枯らす方法がわかったんですよ。頭山さんこそ、なにをやっているんですか? 家にいないと思ったらこんなところで花見なんて」
「せっかく桜が咲いたんだから、金とって見世物にした方がいいだろ。そもそもこうなったのは、お前が変なさくらんぼ持ってきたせいだろうが!!」
「そのことについては、申し訳ありません。まさかこんな事になるとは」
「で、どうやったら枯れるんだ?」
「実はあのさくらんぼの種を飲み込んだのは、頭山さんだけじゃないんです」
「なに?」
「だが、発芽したのは頭山さんの他二人だけ。発芽にはある条件が必要なのです」
「条件?」
「血液中の中性脂肪値がある一定値以上じゃないと発芽しないんです」
「中性脂肪だと?」
「そして、他の二人は昨日のうちに木が枯れてしまいました。調べたら、中性脂肪値が大幅に下がっていましたよ。頭山さんは他の二人よりも太っているから時間がかかったけど、今夜中には枯れる思いますよ」
「本当か?」
「ええ、酒さえ飲まなければ……」
三島の視線が正の持っている杯に止まる。
「飲んじゃいました?」
「飲んじゃった」
「あちゃあ、だとするとまだもう少しかかるな」




