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宇宙桜  作者: 津嶋朋靖


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「分かりました」

 大きなシルクハットを被った医者が聴診器を外しながら言う。

 内心、医者からはサジを投げられるのではないかと危惧していた正は、その言葉を聞いて安堵した。

 医者が「分かりました」という事は、これは既知の病。

 きっと対処法もあるのだろうと……

「先生、これはなんですか?」

 正は希望のまなざしを医者に向けた。

「桜です」

「はあ?」

 どうやらこの木は桜だったらしい。

 だが、正にとってはこの木が桜であろうと、桃であろうと、梅であろうとそんな事はどうでもいいのであった。

 どうやったらこの木が頭から取れるのかを聞きたいのである。

 だが……

「後、一週間ほどで花が咲きます。楽しみにしていて下さい」

 医者の言葉は何の解決にもならなかった。

「楽しみなわけないだろ!! なんとかしろよ!!」

「君ねえ、何とかできるぐらいなら……」

 医者はシルクハットを取った。

「私がこんな帽子をかぶっているわけないだろう」

 医者の頭には、三十センチまで成長した桜が花を咲かしていた。



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