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「な……なんだ! こりゃ?」
頭山正がそう呟いたのは、洗面所の鏡の前。
百三十キロの巨体を揺さぶりながら、鼻歌交じりに髭を剃っていた時のことだった。
髭の剃り残しがないか、点検していると妙な物体が目に入ったのである。
それは正の頭頂部にあった。
小さな木が……
恐る恐る木を掴んで引っ張って見る。
「痛ててて!」
皮膚ごと引っ張られた。
木は明らかに正の頭皮に根を張っていた。
「なんなんだよ。いったい?」
木の高さは今のところ五センチほど。
正はしばらく考えてから、タンスの中からカーボーイハットを探し出し、それをかぶって医者へ向かった。




