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英雄の奥様と王子

 気になる女の子がいる……。


 マリロード王国の第1王子で王太子のエドワルドは、この国の独身男性の中で、今、最もモテている。

 この国の最高権力者になる予定の彼は、まだ婚約者もおらず、毎日のように肉食系の貴族令嬢にアタックされており、もちろん子供の頃からのことのため、慣れたもので上手にあしらっている。


 ただ、最近、それにも疲れてきた……。


 かつては、将軍職についている彼の従弟であるサイラス・アバードと人気を二分していたが、サイラスは英雄になり、平和になったのをきっかけに婚約者のスーザンと結婚したため、今はサイラス狙いだった令嬢たちのターゲットは、全てエドワルドに向かった。

 そのため、エドワルドの対処する令嬢たちも2倍に増えた。

 疲れるのも当たり前である。

 しかも、彼にはとても気になる女の子ができた。

 もちろん、その彼女とは……。



 王宮の廊下をエドワルドが歩いていると、女性の集団が目に留まった。

 何事かとその集団に近づくと、その中心に英雄の奥様、スーザン・アバードがいた。


「これはどういうことかしら?」


「どうして、あなたみたいな子がサイラス将軍ばかりか、エドワルド殿下とも懇意にして!」


「あなたばっかり!ずるいわ!!」


 エドワルド狙いの貴族令嬢達らしい集団は、王宮に来ていたスーザンを詰っているようだ。

 すぐにエドワルドが助けに入ろうとしたその時、赤ちゃんの泣き声が聞こえた。


「ふぇ、ふわーん!」


 それを聞いたエドワルドはスーザンを囲む集団をかき分け、泣いている赤ちゃんのところまで飛んで行った。スーザンと共にいるタチアナのもとに。


「タチアナ!大丈夫かい?」


「え?あら?エドワルド殿下?」と泣くタチアナをあやすスーザンは、いきなり飛び込んできたエドワルドに驚いた。


「ああ、スーザン、そろそろお茶会に来る頃だと思って迎えにきたけど……」と言って、周りを囲む貴族令嬢達に、「君達!タチアナを泣かせるなんてどういうつもりだい?」と冷たい態度で対応するエドワルド。しかし……。


「もう、ほら!泣いただけで王子様が飛んで来るほどとは!!」


「ああ、サイラス将軍ばかりか、エドワルド殿下までこの子に夢中で、ずるいわ!ずるい可愛さだわー!もう、本当にかわいい!!」


「我が国の2大いい男を夢中にするなんて本当に何者なのこの子は!?妖精?それとも天使なの?」と言って、もう泣き止んだが、お昼寝から目が覚めて不機嫌なタチアナをつついたり、ぷにぷにしたりして貴族令嬢達が夢中で構いまくっていた。飛んで来た王子すら、さほど目もくれず。


「スーザン?これは一体?」と状況を認識したくないエドワルド。


「あ、えっと、みなさまがタチアナを可愛がってくださるようです。先ほどまでお昼寝していたので、タチアナはちょっとご機嫌ななめですけどね」と言って微笑むスーザン。


「やだー!何この肌質!?どういうことかしら?」


「かわいい、すごくかわいい!」


「ぷにぷにじゃないわ、ぷにっぷにっよー!」


 だから、その違いはわからないですわとスーザンは心の中でまたもや突っ込みを入れる。


「とりあえず、母上達が待っているから行こう、スーザン。では、失礼」と言って、エドワルドは貴族令嬢達にいじられていたタチアナを奪い返して、貴族令嬢達が入れないお茶会をやっている中庭にすたすたと向かう。


 タチアナもエドワルドの抱っこは嫌がらず、大人しく腕の中いて、エドワルドがその様子に思わず微笑むと、お返しにとばかりにタチアナもにこっと微笑んだような表情になる。


「!!」


 タチアナの微笑みにひどく悶えるエドワルドに、後ろからエドワルドについて行っていたスーザンはとても心配になった。


 クリスティーナ王妃達とのお茶会では、3人でタチアナの抱っこをローテンションでしてくれるようになり、スーザンは両手拘束から解放される時間帯が増えたので、とても楽になった。


 ただ、問題なのはクリスティーナ王妃が……。


「ああ、私もこんな孫が欲しいわ!スーザンのお姉さんは結婚してしまっているし、スーザン、本当に妹とか、母方の従妹はいないの?」


「そうおっしゃっていただき、ありがとうございます。ただ、残念ながらおりません」


「ふふふ、いいでしょう~、クリスティーナ!ぷにっぷにっの孫よー!!」


「うらやましいわ~。は、そうだわ!!」といいことを思いついた様子のクリスティーナ。スーザンにとっては悪いことであろうと予想される。


「エドワルドとタチアナが結婚すればいいのだわ!あと、15年以上は王も私も現役だから、タチアナが成人するまで待てるわよね、エドワルド?」


「は、母上?私とタチアナが?」と驚くエドワルド。


「そうよ!そうすれば、私の義娘も孫もこの肌が……。

 いえ、タチアナなら将来の王太子妃として、家柄的にも政治的かつ財務的にも問題ないと思うの。ちょうど、同盟の必要な国に年頃の姫もいなくて、エドワルドの好きな子と結婚させてあげようと思っていたけど、タチアナならエドワルドに懐いているし、どうかしら?」


 どうかしらではなくて~!一体、何歳差?

 例え王子様でも、無理!父親のサイラスより年上の方は無理です~!

 そもそも、そんな王妃の動機で、決めてもいいのですか?は!いいのかも?

 いやでも、タチアナが……。


 その話を聞いてオロオロするスーザンに対して、カーラまで真剣に考えて王妃を止めてくれず、エドワルドに至ってはやや頬を染めながら、タチアナを抱っこして、「タチアナが私の奥様か。きっと癒されるな……」とうっとりとつぶやいている。


「あら?まんざらでもないのね、エドワルド。

 最近、エドワルドが気になっている人はいないのでしょう?」


「あ、最近、気になっているのは……実はタチアナです。

 何故かタチアナに触れるととても癒されて、ストレスがなくなるので、不思議でした。

 しかも、タチアナを家族以外の者が触れるのが、ちょっと許せなくて……」


「まあ!その独占欲はきっと恋ね!!」と興奮するクリスティーナ王妃。


 いや、待ってー!

 エドワルド殿下、最近、肉食系貴族令嬢にアタックされ過ぎて疲れているだけだから~!

 赤ちゃんに癒しを求めているだけで、それは絶対、恋ではないし、父性愛的なものですからね~!!


 スーザンがそんな突っ込みを心の中で入れている間に、王妃が話を進めようとするが、正気に戻ったエドワルドがきちんと「でも、タチアナはまだ赤ちゃんですから、ありえませんよ。第一、こんなに年が離れていては、タチアナが可哀想だ」と王妃を止めてくれて、結局、カーラも反対し、最終的に王妃はあきらめてくれた。

 しかも、何故かその話がサイラスの耳に入り、予想通り、「タチアナは例えエドワルドでも嫁にやら―ん!」と叫んだ。



 英雄の奥様は、娘を生んで、王子をも魅了する最強の癒し肌コンビになった!


 最近は、あのお茶会もつらくないが、娘の将来がとても心配なスーザンであった。

のりと勢いで更新しました……。

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