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英雄の奥様と息子達の婚約者

 マリロード王国の王子エドワルドに念願の娘が生まれた。


 その時、丁度、英雄の奥様スーザンは、やっと1歳になったシモンをお昼寝させて、ほっとしていたところであった。

 すると、つい先程、寝ついたはずのシモンが突然、かっと目を見開いて起き上がってきた。

 シモンはまだ1歳であるが、ちょっとした意志疎通ができる程度におしゃべりができる。

 突然起きたシモンは、スーザンに訴える。


「まぁまー

 ちぇー、きたね?」

「え?シモン?

 あら、起きちゃったの?」

「ねー、ちぇー、きたのよ」

「ん?ちっちかな?(おしっこにいきたいのかな?)」

「んーん。

 ちぇーがね、きたの!」

「え?きたって『誰か来た』と言っているのかしら?」


 スーザンがそう尋ねると、うんうんと頷くシモン。


「えっと、誰が来たのかしら?」

「ちぇーよ」

「?父上ちちうえって言いたいのかしら?

 とーちゃま、ぱーぱのことかな?」

「んーん」

「カーラおばあちゃまかなー?」

「んーん、ちぇー」

「…えっと、タチアナのチー?」

「んーん」


 シモンは、スーザンになかなか話が通じないことにちょっとがっかりし、否定するのも面倒になってきた。

 ふぅっとため息をついたシモンは、そのままコロンとベッドに転がった。

 お昼寝の続きをすることにしたらしいシモン。

 スーザンは、はてなマークを飛ばしながら、(誰も訪ねて来ていないのに、どうしたのかしら?夢でもみたのかな?)と、シモンが何を言いたかったのかわからずじまいだった。


 その日の夕方、スーザンは、王子エドワルドとナリスの子供、しかも娘が生まれたことを知らされた。

 奇しくも、その子供が生まれた時間帯が、シモンが昼寝中に突然、起きた時間帯だった。

 おまけに、その時に初めて、その子供が「チェルシー」と名付けられたことを知ったスーザン。


 あら?生まれた時間が、ちょうど、シモンが突然、起き上がった時間帯ね……。

 しかも「ちぇー」って言ってたけど、「チェルシー」と言いたかったのかしら?

 シモンったら、自分の婚約者が生まれたのがわかったの?

 え、待って、何でわかったの?

 たまたま?

 名前までわかってるけど、たまたまよね!?


 スーザンは、無理に偶然の出来事として片付けようとした。

 しかし、残念ながら、シモンはサイラスの息子であることを思い出した。

 しかも、父親と瓜二つの……。


 ……そういえば、サイラス様も私やタチアナの危機とかがわかる察知能力があったわね。

 まさかシモンにも、サイラス様と同じような察知能力が?

 いえ、まだ早まって考えては駄目よ、スーザン。

 うーん、そう!きっとこれは運命だわ!!

 生まれたのがシモンの運命の相手だったのかしらね~。

 えっと、そう思った方がロマンチックで、特殊能力よりましなような……。


 それでも、スーザンは、シモンに垣間見られた特殊能力を、全力でスルーすることにした。

 だって、そんな能力、サイラスだけで十分だった……。


 一方、もう一人の息子レオナールは、婚約者のリンディに相変わらず、メロメロであった。


「リンディ!!

 今日も可愛いねー」

「レオ~!」

「リンディが食べたがっていたお菓子を持って来たよー。

 お腹空いてない?

 ちょっと早いけど、お茶にしよう!」

「うん、いいよー」


 レオナールは餌付け作戦で、順調にリンディとの仲を深めている。

 レオナールは、まだ幼いにも関わらず、かなり努力家で、どうやったらリンディの心を掴めるかを考えて、気を配り、逃げられないように着実に外堀も埋めつつある。

 また、レオナールは、リンディに限らず、女心がわかるようになってきた。

 そのせいか、七歳にして有望株として、マリロード王国のレオナールと年齢的に釣り合う沢山の貴族令嬢達に、更にモテまくっている。

 最近では、サイラスにどうすれば女心を掴めるかをレクチャーしてしまうレベルまでに上がっている。


「僕は、父様みたいに、プロポーズした相手につれない態度を一度でもとられたくないからね。

 もし、リンディにそんなことされたら、僕は……」


 そう意味深に語るレオナール。

 スーザンは、そこで言い澱むレオナールに対して、ハラハラと心配になる。


 やだ、レオナールったら!

 まさかリンディのこと監禁しようとか、考えていないでしょうね?

 とりあえず、夫婦の屋敷に軟禁は確実にやりそうだけどね……。

 私も実は新婚当初にちょっとやられたのよね~。

 今はもうそんなことないけど、あれも懐かしい思い出……かしら?

 でも、非人道的なことをやろうとするなら、止めないと!


 サイラスの子供達の特殊性に対して、スーザンは、ある程度、諦めて受け入れる覚悟はした。

 けれども、レオナールにリンディが愛ゆえに、閉じ込められたり、拘束されたり、あるいは、レオナールが非人道的にならないように、頑張って防止しようと考え、あらためて決意するスーザンであった。


 英雄の奥様は、息子達の婚約者に対する問題に、各レベルで対処する!

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