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英雄の奥様と侍女の服

 マリロード王国の英雄の奥様スーザンに、ちょっと困ったことがおきた。


 きっかけは、相変わらず、サイラスであった。

 いや、サイラスと王宮で王妃付きの侍女をしているベリーナのせいであった。

 ベリーナは、特別な化粧技術を持ち、その技術が最大限生かせるスーザンを常々、着飾りたいと今でも考えている。


 いつものように、王宮で働くサイラスの元に昼食を届けに来たスーザンであったが、その時に、すぐに着て欲しい服があると、サイラスがスーザンにとある洋服を渡してきた。

 不思議に思ったスーザンであったが、理由はすぐにわかった。


 サイラスは、王宮で働く侍女の服をスーザンに着せようといていた。


 なんでも、サイラスはベリーナから、「英雄の奥様なのに、王宮の侍女よりも地味なのは、いかがなものですか!?奥様は、もっと、最新の流行の化粧とドレスで着飾るべきです!」と煽られてしまった。

 それで、サイラスは「スーザンなら、王宮の侍女のドレスを着ていても、きっと素敵だ!もしスーザンが侍女であっても、絶対、私は見つけ出して結婚した!」と言い張った。

 二人は言い争った挙句、なぜかスーザンへ実際に、王宮の侍女の服を着せてみようということになったのだった。


「というわけで、ベリーナと検証するので、スーザン、これをそこの仮眠室で着替えてくれ」

「……はあ、(どういわけかは、わかりませんが)わかりました」


 サイラスでも、執務が多い時は泊まり込みで仕事をすることがあるため、執務室とつながった隣に仮眠室がある。

 スーザンはその仮眠室で、サイラスに渡された侍女の服を着ることになった。

 断ることも考えたスーザンであったが、あの感じのサイラスは頑固なのを知っているので、無駄な抵抗はしなかった。

 スーザンが着替えたところを見たサイラスは、もちろん絶賛した。


「うん!さすがスーザン!!

 たくさんの侍女が着ている服を着ても、君の肌の美しさは際立っているね!

 やや桃色づいた色白さに、肌理は細かく、透き通るような透明感がたまらないね~。

 あと、そのいかにも絶妙なはりと弾力さがありそうな感じも、触れたくて堪らなくさせる!

 あ、でも、その肌を傷めるような侍女の仕事はさせたくないな。

 うーん、やはり、万が一、スーザンが侍女として出会ってても、絶対、結婚を申し込んでたな!!」


 うん、うんとスーザンの侍女姿を満面の笑みで観察するサイラスに、引き気味のスーザン。


「……あの、もう着替えてよろしいですか?」

「待ってくれ!今、ベリーナを呼び出しているから、もうちょっとそのままで!!」


 そう言って、いつもと違うスーザンの周囲をぐるぐる回って、堪能するサイラス。

 ところが、ベリーナは、王族しか入れないエリアで仕事をしているため、サイラスがベリーナを呼びに行かせた部下が「ベリーナを連れて来れなかった」と帰ってきた。

 そのエリアは、王族か、王族の許可がないと使用人では入れず、しょうがないので、一応、王族のサイラス自ら、そのエリアまでベリーナを呼びに行くことになった。


「いいかい?スーザンはそのまま侍女の服を着たままで待っていてくれ。

 でも、執務室にいると、思わぬ人物が入って来て、このスーザンの姿を見てしまうかも知れないから、仮眠室で待っていて、執務室に私が戻るまで、出てきては駄目だよ?」

「はい、わかりました」


 サイラスがベリーナを呼びに行っている間に、スーザンは仮眠室に置いてあるソファに座って、サイラスが戻ってくるのを待つことになった。

 すると、突然、そのスーザンが待機している仮眠室に、スーザンと同じ侍女の服をきた女性が入ってきた。


「あら?あなたは……」

「え?えっと、その、私は……」


 スーザンは、侍女の服をきたままなので、思わず、どう言い訳をしようか悩んでしまった。

 サイラスに着せられたと言うべきか、否か……。

 そう戸惑ったせいで、彼女に誤解されてしまった。


「あなたね!最近、こちらのリネン担当になった新しい侍女は!?

 噂は聞いているわよ!

 駄目じゃないの、こちらの仮眠室のベッドのリネンをさっさと替えないと!」

「え?え?あの……」


 スーザンが「人違いです」と訴えるより早く、その侍女はスーザンに有無を言わせず指示を出した。

 戸惑いながらも、ついスーザンもその侍女の言う通りに動いてしまう。


「はい、そっちの端を持って!」

「えっと、はい」

「そこは横にぴんっと引っ張らないと綺麗にベッドメイクできないでしょう!?」

「は、はい!」


 公爵夫人でありながら、従順な性格のせいか、思わず指示通りにテキパキと動いてしまうスーザン。

 彼女に勢いで協力させられたスーザンですら、妙な達成感を持つくらいに綺麗にベッドメイクができた。


「あなた、噂と違って、そんなに動きは悪くないわね。

 素直に従ってくれるし、今まで指示の出し方が悪かったのかもね」

「えっと、その、私は!」


 サイラス将軍の妻です!と主張しようとするスーザンであったが、その侍女はせっかちであった。


「あら?もしかして、そのソファにあるのは、もしかしてサイラス将軍の奥様のドレスかしら?」

「あ、そうです、私が「まあ!あなたがここで待機してたのは、サボっていたのではなく、奥様の着替えのお手伝いに呼ばれて、待っているように言われたのね?」え?いえ、あの……」

「先程、ベリーナを探していたから、またサイラス将軍が奥様を着飾らせて、王妃様のところに行ったのかしらね。

 サボっているのかと誤解して、ごめんなさいね。

 でも、奥様がいつこちらにお戻りになるかわからないし、今は人手不足だから、ここでの待機はいいから、まずはこのリネン類を洗い場に持って行って!」

「え?でも、私、サイラス様にこちらで待機するように言われておりますし、それに、私は……」


 サイラス将軍の妻です!とまたもや主張しようとするスーザンであったが、その隙をあたえられず、スーザンは替えたシーツやタオル類をたくさん持たされて、サイラスの執務室から一緒に出されてしまった。

 一応、サイラスの執務室前には、護衛がおり、スーザンの顔がわかる者ばかりであるが、たまたまそこにいいた護衛は、よっぽど特徴のある女性以外は、女性を服装等で見分けるくらいしかできない朴念仁であった。

 ましてや、侍女の服をきたスーザンは、地味顔のせいか、本物の侍女より侍女らしくて、スーザンと気づけなかった。

 しかも、その日の護衛は交代したばかりで、執務室に侍女と奥様がいることのみ引き継ぎされただけで、侍女の人数は聞いておらず、二人の侍女が出てきても、軽く会釈して流してしまった。

 スーザンも両手いっぱいに持たされたリネン類を投げ出してまで訴えるべきか、悩んでしまい、とりあえず、これを片付けるまではと、その侍女の指示に従ってしまった。


 こうして、スーザンは一時的に侍女の仕事を手伝わされることになった。


 英雄の奥様は、地味なおかげで自然に侍女として溶け込める!


 ちなみに、すれ違った王宮の人々は、誰一人として、リネン類を抱えた侍女服の女性がスーザンだと気づけなかった。

この王宮内のセキュリティーは一度、中に入ればやや緩いのでは!?とスーザンは心配になった。

続きます!

ちなみに、私は店員っぽい高校の制服をきていたせいか、本屋で店員にガチで間違われたことがあります。「あの、店員さんにお聞きになってください……」と遠慮がちに答えてみたら、「はっ?あなた、わからないの?」と切れられた後、「やだ、店員じゃない~!?」とふきだされた。ふふふ。(*‘∀‘)

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