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番外編 アードナ国王の悲恋2

 アードナ王国の国王アンセルムは、国中の国民に祝福される結婚をした。


 そのアードナ国王と結婚し、王妃となったビクトリアは、結婚後、王妃業務のため何かと忙しかったが、アンセルムの従兄で幼馴染のウィリアムと話をする機会があった。


 ウィリアムは、結婚前にアンセルムから駆け落ちするように打診された相手でもあり、アンセルムは努力で賢明であろうとするタイプに対して、ウィリアムは天才タイプで、アンセルムがコンプレックスを持つくらいに美形で、アンセルムよりも優秀であった。


 しかし、ビクトリアは、自覚はないが、自分自身が高スペックなためか、自分と同類の天才タイプより努力タイプの方を好ましく思う傾向があった。そのため、ビクトリアにとって、ウィリアムのことは兄のように思っている幼馴染で、恋心は全くなかった。

 ただ、アンセルムにビクトリアの気持ちを誤解させたのは、このウィリアムせいだとわかっていたビクトリアは、この機会に注意しようと考えていた。


「やあ、最近は特に忙しそうだね、ビクトリア。頑張りすぎて、無理をしていないかい?」と爽やかに挨拶して、ビクトリアを気遣ってくれるウィリアム。


「ええ、やはり、王妃になって、当然ながら業務が増えましが、無理はしていないので大丈夫です。お気遣いいただき、ありがとうございます」


「そう、よかった。

 まあ、君は国民ばかりか貴族達の信頼も高く、王妃になるべくしてなったひとだからね」


「『王妃になるべくしてなった』ですか……。そう思っていらっしゃるなら、なぜアンセルム様は結婚直前まで、あなたと私のことを誤解していたのでしょうか?」


「ああ、それは私のせいだね。

 残念だったな~。

 駄目もとで、アンセルムに私達が愛し合っていると言ってみたら、アンセルムはすっかり騙されてくれたんだよ。それで、私達のために駆け落ちすることまで考えてくれてね。

 ビクトリアが、そんなことを誤解して言ってくるアンセルムに愛想をつかさないかと期待していたのだけど。

 本当にアンセルムは君のことをわかっていないよね。

 ……あと、私は本気で君と駆け落ちしても良かったのだよ、ビクトリア」と悪びれもせずに言ってくるウィリアムに、(そういえば、この方はこういう腹黒い面もあった)と思い出すビクトリア。


「いえ、アンセルム様ならまだしも、ウィリアム様との駆け落ちはお断りしますよ。

 私が子供の頃からアンセルム様のことが好きだって、よくご存じのくせに、何でそんな嘘をアンセルム様に?」


「それはもちろん、私が子供の頃から君を愛しているから、アンセルムから奪おうと思ってね」とさらっと告白して妖艶に微笑むウィリアム。


 ふうっとため息をついたビクトリアは、「何度もお断りしておりますが、私の愛しているのはアンセルム様ですよ」


「うん。知っているよ」


「だったら、そんな悪質な嘘は止めてください。

 まあ、私とアンセルム様とのお互いの理解や話し合いが不十分だったせいもありますが、まさかあなたがそんなことをするとは想定外でした」


「うーん、ごめんね。でも、アンセルムの方から私とビクトリアとの仲を疑ってきたから、アンセルムの婚約者である君を手に入れるいい機会だと思ってね」


「とにかく、今後は困りますから、二度としないでくださいね」


「……アンセルムは昔から騙しやすくてね。

 子供の頃から、アンセルムに初恋は実らないものだと教え込んで、初恋のビクトリアのことをあきらめるように言い聞かせたものさ。

 でも、ビクトリアも悪いよ。

 照れ隠しのせいか、君が私をよく褒めていたせいもあって、子供の頃からアンセルムはビクトリアが好きなのは私だと誤解して、自分は失恋したと勝手に思いこんでいたからな。

 今回の駆け落ちの件はその延長だしね」


「え?アンセルム様の初恋って?それでなぜ私をあきらめさせるのですか?

 だって、アンセルム様の初恋は……」(本当はエミリーでは?)と思うビクトリア。


「ん?アンセルムの初恋は君だよね」


「え?は?はああ?」と驚くビクトリア。


「え、知らなかったの?」


「……ええ。初めて聞きました」


「何だ、知らなかったのか……」とビクトリアにアンセルムの初恋相手とばらしてしまったことを後悔するウィリアム。


「本当に、存じませんでした……」と言って、ビクトリアは顔を真っ赤にして照れてしまった。


 え?

 じゃあ、私達、実は子供の頃から両想いだったの?

 いや、でも、今のアンセルム様はエミリーに恋しているのか……。


「まあ、アンセルムの初恋の相手であるビクトリアは、私と恋仲だから次の恋をさがしておけと言い続けたおかげで、アンセルムはマリロード王国の男に走ったみたいだしね~。

 いくら触り心地がいいからって、男の肌に何度も触れたいなんて、恋以外ありえないと言ってみたら、それもアンセルムは信じて、愉快だったな。

 君を愛する私にとっては都合が良かったけどね~」と笑うウィリアム。


 そういえば、アンセルム様からも似たようなことをお聞きしましたわ。

 確か、アンセルム様がハリー様の肌にまた触りたいと思うことが恋と他の方から言われたと……。


 そもそもの原因は、あなたのせいか!


 可哀想なアンセルム様

 初恋は、この腹黒い従兄に惑わされて、失恋したと思い込み

 二度目の恋は、魅惑肌の男性とまたもやこの腹黒い従兄に惑わされて、本当の恋心すら認識できず、よりによって男性に間違った恋心を抱くなんて……。


 アンセルムの浮かばれない恋心にまたもや同情するビクトリアであった。

 もっとも、ビクトリアが、アンセルムの初恋の相手が自分とは思わず、ウィリアムとの駆け落ちをすすめられるまで、アンセルムがウィリアムとビクトリアが恋仲だと誤解していることに気づかなかったことは、ビクトリア自身の落ち度でもあった。


 確かに私も悪かった。

 でも、私が初恋の相手で、結婚までしたのだから、エミリー達のことを忘れてもらって、私に再び恋してもらうように努力すれば……。


 そんな風にビクトリアがアンセルム攻略を考えている姿を、実は切ない気持ちでみつめるウィリアム。

 アンセルムとビクトリアの仲を結婚直前まで邪魔していたウィリアムは、口調こそ軽いものの、ビクトリアへの気持ちは本物であった。


「ビクトリアはこれからもアンセルムの側にいるのだね……。

 ねえ、もし私が王になっていたら、私の妻になってくれた?」


「いいえ。私は王妃になりたいわけでなく、アンセルム様を愛していますので、アンセルム様が王にならなくても、彼の妻になったと思います」


「そっか……。

 それでも、ビクトリア。たとえ君に何度ふられても、私の君への気持ちはなくならないよ。

 本気なんだ。

 君が手に入るなら、今持っている全てを捨てて駆け落ちしてもいいくらいに、いまだに愛しているよ、ビクトリア」と再度、本気の告白をするウィリアム。


「私が愛しているのは、アンセルム様ですよ。しかも、もう彼と結婚をしてしまいました。だから、あなたの気持ちには答えられません」


「そうだね。君はもう王妃になってしまったから、なかなか逃れられないね。

 君を奪ったら、国中の皆に恨まれるしな。

 でも、もし君が王妃であることや、アンセルムの妻であることが辛くなったら、私を思い出して。君を逃して、幸せにしてあげると約束するよ」と優く言われ、不覚にもちょっと胸がときめいてしまったビクトリア。


「だ、大丈夫です。でも、お気持ちをありがとうございます。アンセルム様の妻としても、王妃としても、できる限り頑張ってみますので」


「うん。そうだね。……私はいつでも君の味方だよ、ビクトリア」


「……ええ、ありがとうございます。

 ウィリアム#お兄様__・__#のことはこれからも頼りにしていますわ!」と美しく微笑むビクトリアに、ウィリアムは『お兄様』と言われて顔を一瞬しかめたが、それでも麗しい笑顔で返してきた。


 そのウィリアム様の笑顔を見て考えるビクトリア。


 ああ。

 ウィリアム様のこういう所が苦手だわ……。

 やっぱり、アンセルム様の方が好き!

 だって……。


 ウィリアムが去った後、そう思って、くるっとビクトリアが体の向きを死角の位置に変えると、その先には、壁の影からこっそり隠れてビクトリア達のやり取りを覗いていたアンセルムの姿があった。


「アンセルム様?」と言って、ビクトリアがアンセルムにこちらに来るように声をかけると、しぶしぶとビクトリアの方に近寄ってくるアンセルム。


 ちょっと唇をへの字にして、面白くなさそうにビクトリアをみるアンセルムの様子に、(アンセルム様ったら、ウィリアム様に嫉妬しているのかしら!?可愛い!)と、ウィリアムの告白よりも、ときめくビクトリア。


「ビクトリア、君はやっぱりウィリアムのことを愛しているのでは……?」


「まあ、そんなわけはごさいませんよ。私が愛しているのは、今も昔もアンセルム様ですよ。ふふふ」と華麗に微笑むビクトリアに、今度は唇をヘニャッと緩めるアンセルム。

 そのアンセルムの微妙な変化に内心悶えるビクトリアは、早くアンセルム似の子供を生んでみたいと思うのであった。


 なんだかんだと、波乱のあったアンセルムとビクトリアであったが、ビクトリアの努力と愛のおかげで、それなりに夫婦の関係は上手くいっていた。


 ところが、上手くいっていたせいで、油断したビクトリアが失言してしまった。


 新王妃のお披露目のために諸外国をまわっていて、ツェルード王国に来訪した時のことであった。

 ツェルード王国の王子シャーロ殿下が英雄の娘タチアナに婚約を申し込んで断られた話をツェルード王国のシェリー王妃から聞いたアンセルムとビクトリア。

 ビクトリアは、シェリー王妃を慰めようと、ウィリアムと似たタイプのシャーロ王子のことをウィリアムのように天才型で優秀であると褒め称えたのがいけなかった。

 ウィリアムへのコンプレックスがあるアンセルムは、そのビクトリアの発言にやや感情的になった。


「へえ。シャーロ殿下は私の#優秀な__・__#従兄のウィリアムみたいに、できた人間なのか~。そんなシャーロ王子を振った英雄の娘なら、私達に王子がいたら、是非、嫁に欲しいね~」


「……アンセルム国王陛下。

 陛下は立派にアードナ王国を治めていらっしゃいますよ。

 ウィリアム様よりも王にふさわしいですからね。

 シャーロ殿下はまだ7歳ですから、そのような嫌味な物言いは大人気ないですよ。

 あと、英雄は子煩悩らしいので、まだ生まれてもいない王子の婚約者の打診など失礼にあたりますので、お考えにならないように……」とビクトリアはアンセルムの行動を予測して注意した。しかも、ビクトリアは、普段、二人きりの時はアンセルムのことを名前呼びをしているのに、わざわざ今回は『国王陛下』呼びをして、王としての自覚をしっかり持つように促した。


 ところが、その注意でさらに機嫌を損ねたアンセルムは、英雄の娘を、ウィリアムタイプのシャーロ王子に奪われる前に自分の王子(まだ生まれていない)と婚約させたいと強く願ってしまい、またハリーの娘を見てみたいとも思い、勢いでマリロード王国へ密入国してまで、単独で行ってしまった。


 しかも、行った挙げ句に英雄サイラスを激怒させてしまい、マリロード王国からビクトリアのいるツェルード王国へ、アンセルムを非公式に滞在させて(捕まえて)いるので、迎えに来るように要請があった。

 もっともビクトリアもすぐにアンセルムを追いかけるために、マリロード王国への入国のために正式な手続きをしているところであった。


 ツェルード王国からマリロード王国まで、アンセルムを迎えに行くビクトリアは大変気が重かった。アンセルムを迎えに行く前にマリロード王国の国王にビクトリアは呼び出されたのだった。


 マリロード王国の王宮の謁見の間では、国王陛下とサイラス将軍が待ち構えていた。


「ビクトリア王妃、この度はこのような事態のためにお会いすることになってしまい、誠に遺憾であるが、状況はよくおわかりであろうか」


「はい。我が国の王が、軽はずみにとんだ失態を起こし、サイラス将軍をはじめとするマリロード王国の方々にご迷惑をおかけしたこと、心から深くお詫び申し上げます。大変申し訳ございませんでした」 


「そうか。それなら、話が早い。

 この甥っ子サイラスの娘であるタチアナは、まだ孫のいない余にとっても、孫のように大切にしている子である。たとえ友好国の王であろうと、非公式に入国したあげく、大事なタチアナの婚姻の約束を気軽に打診してくるなど、許されることではない。我が国との国交を断ちたいというなら、別だがな。我が国を敵に回したいわけではないであろう?」


「はい、もちろんです。我が国がマリロード王国の敵になる可能性は全くございません。むしろ、アンセルム王がサイラス将軍やムスファ伯爵との友好関係を深めたいがために、先走った結果でございます」


「それでは、今回のこの代償はいかに払っていただこうか?」と言ってくる国王。


「……マリロード王国としては、その代償に我が国へ何をお望みでしょうか?」と冷静に対応するビクトリア。


「ふむ。我が国と友好国の王に要求するには酷なことであるが、本来ならば失態を犯した国王の退位を望むところである。しかし、現アードナ国王は随分と国民の支持が高いと聞く。よほど周囲に優秀な者が揃って、あの国王を支えているのであろう、そなたのように。そうなると、退位も難しいところであるな。

 サイラス将軍はいかに考える?」とサイラスに聞く国王。


「私の望みは、私の娘達を侮辱したあの王がこれ以上、私の家族や義兄のムスファ伯爵一家に関わらないようにしていただきたい。そのひとつとして、アンセルム王に二度とマリロード王国へ足を踏みいれないと約束して欲しい。あと、もしアードナ国王の子供が生まれても、彼のようにマリロード王国に留学もしないでいただきたい」とサイラスは直球で要求してきた。


 今回、サイラスがこのような強固手段にでたのは、タチアナやリンディの件もあるが、アンセルムがスーザンに出会ったら、きっと恋してしまうと思い、そのことを一番、危惧していた。

 サイラスの前でアンセルムがスーザンのことを話題にしてから、サイラスのスーザン危機察知能力であるスーザンを狙う輩を警告する警告音が鳴り続けていた。


 もしサイラスがアンセルムの立場ならば、スーザンがたとえ人妻でも、その夫からスーザンを奪い、自分のものにしただろう。

 サイラスは、ずっとそう思っていた。

 だから、スーザンがまだ誰のものでない時に見つけられて、本当に運が良かったと思っていた。


「……承知いたしました。

 マリロード国王陛下とサイラス将軍、お二人のお怒りがとけるまで、アードナ国王アンセルムとその子供も含めて、マリロード王国へ入国をさせないことをお約束いたします。

 もしアードナ国王がこの国にくる必要が生じた場合でも、私か、王の代理の者をたてるように必ず取り計らいます。

 また、サイラス将軍のご家族はもちろん、ハリー・ムスファ伯爵の一家ともアードナ国王が関わらないように尽力いたします」とビクトリア王妃は約束し、書面を取り交わすことになった。


 正式な謝罪等含めて、すべての手続きを終えて、やっとアンセルムを迎えに行けたビクトリア。捕まったアンセルムもひどく憔悴しており、まるで死の恐怖を味わった後のようであった。


「……すまない、ビクトリア」


「いえ。ご無事で何よりです。帰りましょう、アンセルム様」


「……私はもう王を辞めるべきではないか?」


「いいえ。お世辞や慰めを抜きにしても、今の豊かで平和なアードナ王国が作られたのは、アンセルム様のおかげです。今はまだ辞めるべきではないです。

 現在、アンセルム様の周りにはとても有能な側近が多くおりますが、それはアンセルム様だからこそ集まってきた方々です。みんな、アンセルム様のお役に立ちたいと思っておりますから」


 ビクトリアの言う通りで、アンセルムには、やや抜けているところがあるため、それを補ってあげたいと思うビクトリアのようなタイプの有能な王の側近がアードナ国には多かった。

 アンセルムは、やや愚かな所もあるが努力家であり、周囲の人々がつい手助けしたくなるような、ある意味、人望のようなものがあるという王として必要な取り柄があった。


「……ウィリアムならもっと上手くやったのでは?」と言ってくるアンセルムに、ビクトリアはため息をつきたくなった。ビクトリアが思う以上にアンセルムのウィリアムコンプレックスは根深かったようである。


「もし、ウィリアム様が王なら、一人で何でもすすめてしまいますし、アンセルム様ほど人望もないので、あれほどの側近は集まらなかったと思います。

 私もウィリアム様が王なら王妃になりませんでした。

 アンセルム様だからこそ良いのです。

 ただし、今回のような暴走は二度としないでくださいね!」というと、アンセルムはビクトリアのことをきつく抱きしめて、「本当にすまない」と言ってきた。

 ビクトリアも抱きしめ返して、アンセルムをなだめるように背中をやさしくさすってあげるのであった。


 その後、ビクトリア達は諸外国の外交も終わり、無事にアードナ王国に帰国した。

 帰国後のアンセルムは今まで以上に周囲の者達を大切にして、政務を頑張るようになった。

 ビクトリアも、今回のマリロード王国での出来事がとても負担であったが、王妃としてどの国にも歓迎され、ますます王妃としての仕事を頑張った。


 そんな頑張っているビクトリアへ、ご褒美のように、あのハリーからの贈り物が届いた。


「あら、ハリー様から私宛に贈り物が届いているわ!何かしら?」とビクトリアが驚き、何事かとハリーからの贈り物を確認してみると、ハリーがスーザン経由で入手した美肌用化粧水であった。


 まあ!美肌用化粧水!?

 もしやこれは以前、エミリーが使っていると言ってたものかしら!?

 とっても欲しかったのよね!

 でも、これは継続的に使わないといけないものだから、あきらめていたの。

 定期的に送っていただくのは心苦しくて……。


 え?

 まあ、ハリー様からのお手紙には、これを定期的に送ってくださるって!

 しかも、他の美肌方法も教えてくださるとは!!

 本当にすごいわ~。

 やはり、ハリー様ったら、ただ者ではないですわね。

 肌だけでアンセルム様を虜にするだけのことはあるわ~。

 私も見習って、美肌を目指さねば!!


 ビクトリアはハリーの手紙からも、ハリーの真意を理解していた。

 これをきっかけに、ビクトリアはアンセルムを虜にしたハリーの魅惑肌を目指して、日々、努力を欠かさなかった。

 ただ、これらの美肌方法をハリーがあまりに的確かつ詳細に教えてくれたことから、ハリー自身がこの美肌方法を実行していると、ビクトリアもスーザン同様に誤解することになった。

 そして、ハリーほどの魅惑肌まではいかなくても、かなり美肌になってきたビクトリアへ、再び恋をするアンセルム。もちろんエミリーへの恋心には、気づかないまま……。


 アンセルムが何度もビクトリアの肌に触れたくなるほど恋して、三度目である今度の恋こそ、『アードナ国王の悲恋』にはならなさそうであった。

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