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往く河の流れは  作者: 数日~数ヶ月寝太郎
一章 案ずるより絡むが易し
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8

・街の法に従う事

  違反者は罰則、罰金を街とギルドで二重に科す

・所属員同士の諍いは当事者間で決着の事

  その過程で街及び住人に被害が出た場合は両者ともに厳罰に処す

・ギルド従業員へ危害を加えない事

  罰則に加え登録抹消、再登録不可

・半年に一度、石板使用による情報の更新

  過ぎた場合は鑑札の失効、情報更新の後有料で再発行

・他人の登録証及び鑑札を奪わない事

  発覚次第極刑に処す

・国を出る場合には届け出て審査を受ける事

  出国に際して登録証、鑑札の返還、相当額の保証金を納めること


「今のところはこんなものか」


 驚くほど雰囲気の変わったドリスさんから聞いたのは以上の事柄だった。


「今のところ、というと?」


「先ほども説明したが、組織としては生まれたばかりだ。追加の規則はまだまだ出てくるだろう。ここに限らず各ギルドに立ち寄った時は確認する事。義務の一つだ、知らなかったでは済まさんぞ?」


「はい」


「何か質問はあるか?」


 どこか期待するような試すような目で僕を見ている。


(ん~、なんかあったっけ……あ、お決まりのランクとかはどうなってるのかな?)


「ランク等はどうなっていますか?自分は新入りですので一番下でしょうけど」


「ランク?」


(無かったかー、余計な事言ったかな?とはいえやっぱ無しで、とは言えない……)


「なんと言うか、所属員としての働きや人間性、協調性を総合的に評価してつく序列というか分類というか……それに伴う難易度に応じた依頼の制限であるとか」


「フム、分類という事で言えば所属員は三種類に分かれる」


(あるんじゃねーか!大事なとこだろ?それ) 


「『使える所属員』と『使えない所属員』、最後が『死んだ所属員と新入り』だ。使える奴は魔物を狩ってくる、使えない奴は逃げるか死ぬ。死体は魔物を狩らないし、新入りは最初の狩りで使えるか使えないか死体かに分かれる。シュウには是非とも使える所属員でいてもらいたいものだが」


(それはあなたの勝手な分類ですよね?)


「ああ、もう一種類いたな。『面倒を起こす所属員』が。尤もすぐにいなくなるから分ける意味は無いか。ハハハ」


(おうちかえりたい)


 心底そう思ったが、ふと思い至り、鞄の中にしまっていた百足の甲殻を取り出す。


「もう一つよろしいですか?これなんですが……」


「この色と大きさ、鉄甲蟲か!」


「襲われたので討ち倒したところ、非常に頑丈なので防具にでもしようかと思ったのですが」


「倒した……この魔物を単独でか?」


 やはり魔物だったかと思いながら頷く。


「フフ、この辺りの魔物の中でも上位に位置する魔物を単独撃破か。『使える所属員』確定だな、おめでとう」


(やっちまった!あんまりおめでたくないですー!!)


「まぁ、運もありましてどうにかこうにか……」


「運か。岩の上で腹を晒して日向ぼっこでもしてたのか?こいつは」


 無駄な足掻きを一蹴された。何をどうしても見透かされる。

 渇いた笑いで答えた僕にドリスさんが続ける。


「まあ良い。こういった魔物素材は全てギルドに持ってくるように。買い取らせてもらう。適切な処置をしないまま下手に身につけると精神と身体に異常をきたすからな」


「そうなのですか。では自分で使いたい場合は一旦ギルドに売却した後に買い戻す形になるのですか?」


「いや、加工料を納めて一日ほど時間を置いてくれれば処置して渡そう。だが良いのか?これで金貨十枚はかたいぞ?」


「現在のところ差し迫ってはおりませんので、処置をお願いしようと思います」


「わかった、下で手続きをするように。ついでに言っておくがギルドを通さないと魔物素材は売買できないからな?処置のための魔道具はギルド経営の根幹だ。魔道具は門外不出、複製はできなくなっている。ギルドの領分を侵すと……わかっているな?」


「はい」


「他には何かあるか?」


 あっても他の人に聞きます、と心で呟き、できるだけ速やかにこの空間を脱出する事を心に決めた。


「いえ、今のところは」


「では、今日はこれで良しとするか。シュウの働きに期待している。ではまたな」


「お時間を取っていただいてありがとうございました。シュライト様、デッコー様、失礼いたします」


 部屋を辞しドアを閉めて、僕は向かいのドアに残る血の痕を見ないようにして下に下りた。

 先ほどの小部屋に入り、甲殻の処理をお願いして、登録証と鑑札とともに明日取りに来る、と伝えてギルドを出る。

 まだ昼前の時間ではあったが、帰って風呂に入って眠りたいほど疲れていた。


「デッコー、居所を探っておけ」


「手配いたします。監視はどういたしましょう?」


「邪な者ではなさそうだが……そうだな、素材を取りに来るまではつけておけ。すぐに街を出ようとする程には怖がらせてはいない」


「ではそのように」


 そう言ってデッコーが部屋から出ると、ドリスは次の会合にギルドランク制度を提案するため机に向かうのであった。

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