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テンシノシカク  作者: mamemarome
5 angel's assassin
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5 angel's assassin (2)

 雛胤丹膳(ひないんたんぜん)については日本語のサイトでも沢山(たくさん)の情報が有った。日本人なのだから当たり前だが。概要は姪森(めいもり)さんが言っていた通りである。ただ、(いく)つか顔写真が公開されていて、その顔は(まぎ)れも無くあのふにゃけた優男(やさおとこ)だった。

 姪森さんが言っていたように、『前衛芸術家』とか『写真家』とかいうのが雛胤の肩書きだった。芸術家なのか写真家なのかどっちなんだよと思いつつ検索を続けていくと、公式サイトとおぼしき本人のサイトには『CGアーティスト』と記述されていた。(さら)によく分からない。

 根気強く調べ続けたところ、どうやら彼は作品をインターネットメディア上では公開せず、個展および紙媒体(かみばいたい)の『写真集』(恐ろしく高価な本だった)という形で発表するのだけを活動スタイルにしているらしい。その写真集の内容は定かではないのだが、ファンがアップロードしたとおぼしきデータを一つだけ見つけることができた。

 青空の下に小さな丘が有り、その丘の上に真っ赤な鳥居が立っている。よく見ると、その鳥居は建築工事などに使う鉄骨で出来ていて、それを真っ赤に塗装してある。僕には写真にしか見えないのだが、色々な人の評論などを総合すると、写真ではなくCGらしい。

 更に探してみると、その作品に関するものとおぼしき雛胤のインタビュー記録が有った。なんでも、『実在する丘の風景写真』と、『別の場所に鳥居の形状に組み上げた鉄骨の写真』とを、コンピュータ上で合成して作った画像らしい。最初に予定していた撮影場所では雛胤から完成予定画像の概要(がいよう)を聞くと作品への土地の使用を断られたため、『個人の私有地でかつ所有者が作者への理解を示してくれる(しかもデザインとしての要件を満たす)立地』を探すのに苦労したとのことだった。

 雛胤丹膳の『写真集』はそうした手の込んだ合成写真をあたかも普通の風景写真のように何気無く、さりげなく並べていくという構成になっているらしかった。ファン歴の浅い者の中には合成写真であることを知らずに風景写真集だと思い込んでいる者も居るようだ。確かに芸術家なのか写真家なのかCGアーティストなのか、分類し(にく)いポジションである。

 しかし芸術家と超能力研究機関とではいかにも接点が無さそうだ。雛胤丹膳は一体何者で、何を(たくら)んでいるのだろうか。あいつが芸術活動にどのくらいウェイトを置いているのかは僕には知る(よし)も無いけれど、やはり何らかの秘密組織のボスとしての裏の顔が有ると考えるのが妥当(だとう)なのか。

 まぁいずれにせよ、僕には関係の無いことだ。

 僕はこのまま以前のような日常生活を送っていればいい。

 謎のナイフ男とか、緑色の髪をした怪力男とか、雛胤丹膳のような得体の知れない連中なんかと好き(この)んで関わり合いになる必要は無い。

 ヒュキアに会う前の生活に戻ればいいのだ。

 関わり合いになったところで、できることなんて無いのだから。

 超能力も何も無い、何の変哲(へんてつ)も無い一般人の僕なんかには。

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