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5 angel's assassin (0)
「残念ながら、その二択を受け入れるわけにはいかないわ。」
ヒュキアは無表情に目の前の男を見据えた。
「貴方が私の住居を用意するのは、私が貴方からの依頼を遂行する上で必要不可欠な措置よ。つまり、私が情報提供をすることの見返りにはならない。したがって、その鍵のいずれかを私が選ぶのは、私が貴方に協力する上で当然の権利なの。」
「なるほどね。」
雛胤丹膳は穏やかに答えた。
「もし私からの情報提供を望むのならば、貴方は私に、単に居住環境を与える以外の対価を用意しなければならない。」
「うん、理屈には合ってる。それで、君の希望は何なんだ?」
「私の希望は……いえ、私の条件は」
ヒュキアは僕には予想もつかなかった提案をした。
「私の条件は、その二つの鍵を両方とも貰うこと。スピーゲルマン博士の勢力から身を隠す潜伏先を二つ、用意してもらうこと。」
「その条件を呑めば、僕は君からの全面協力を得られると考えていいのかな?」
「対価に見合うだけの働きはするわ。」
「オーケー。交渉成立だ。」
雛胤丹膳はいただきますをするように両手の平を合わせた。




