3 angel's square (0)
両腕の中に抱き締めた少女は、嗚咽を混じらせて声を発した。
“ヒュキア.私のことを解ってくれるのは貴女だけよ.”
“私のことを解ってくれるのも貴女だけよ,コーデリア.”
ヒュキアは応えながら、自分より背の高い少女の銀色の髪を撫でる。
“お願いだから,何か食べて.”
コーデリアはこの数日間、食事を摂っていなかった。ヒュキアや園部が宥めすかせて、ようやく無理に水分を摂取させるのがやっとだった。点滴や注射は本人が拒否して力の限り抵抗する。鎮静剤を打とうと近付いたりすればコーデリアはすぐに察知してしまうから、そうした意図を持って接近することは不可能だった。もっと乱暴な手段を取ることは可能だったが、それでは更に彼女の心身を傷つけることになる。
親友であるヒュキアが説得するくらいしか方法は無い。
そして、彼女に生きてほしいと思うのはヒュキアの本心だった。
“お願い.コーデリア.”
“私はもう無理.耐えられない.”
コーデリアの涙が、ヒュキアの肩に零れ落ちる。
“ヒュキア,貴女は強いから耐えられるのでしょうけれど,私は弱いの.こんなにも.”
“貴女は強いわ.”
ヒュキアは心からそう言った。本音以外の言葉は今のコーデリアには不信しか与えない。
“貴女の状況は私よりもずっと過酷なはず.それに耐えてきた貴女は,私よりずっと強い.”
“ヒュキア.”
コーデリアがヒュキアから少し身を離し、二人は正面から見つめ合った。




