◇白の背中。
放課後の階段、翻る白衣。
僕はそればかり目で追ってしまって、君が誰なのか未だにわからない。
夕日に染まった淡いオレンジの白衣。それはとても綺麗で自然と目で追っていた。
それは癖のように意思とは関係なく行われる動作で,僕には制御不可能だった。
だから僕は君を知らない。
視線の先の白衣でしか君の事を知らないのだ。
”白衣を着た子なんて知らない”
それは皆が口をそろえて言う事だった。
それもそうだ、白衣なんて派手な格好をしていたらさすがに噂になるだろう。理系の教師という線も疑ったが生憎うちの学校には男性教師しかいなかった。男に対してこんな感情を持っているだなんて冗談でもきついので、考えないようにした。
それならばと、学園物での白衣の定番・保健室の女神を当たってみたんだが……50代のばあちゃんという実態に目をそむけたくなった。見た目60だぞ。無理だ。
さて、話は振出しに戻る。
俺の見た白衣の誰かは美少女だ。
白衣しか記憶にないが本能がそういっている。間違いない。
ならば話は簡単だ、美少女を探せばいい。押してダメなら引いてみなってやつだな。
こうなったら学園一の美少女を探し出してやるしかない!
そう意気込んだ俺は、誰に求めることはできなかった。