目が覚めたら後輩
「ま、まぶ…しぃ…」
薄っすらと意識が浮上し、視界に入るそれ。
冗談抜きで眩しすぎた…。
「…目覚めた?」
真っ暗闇から急に明るい場所に出たかのように目がチカチカする中で何とか聞こえた声、
それに反応すれば心配そうに覗き込む瞳と目が合った。綺麗なグリーン。
この顔…しってる?ような気がする…でも、やっぱり知らない?
「眩しい」
「え?」
余りにも整いすぎた顔は眩しいものだと今知った。そして何故だろう腹ただしい。
多分、初対面の相手に対して持つ感情ではないとおもう。それどころか照れたり、見惚れたりするのが普通なんじゃないのか?
それなのに全くの真逆な感想をもつぐらいに覗き込む相手は美丈夫すぎた。
陽かり輝くプラチナブロンドに碧緑の瞳、色素薄すぎと言いたくなる肌の白さ。そのまま雪の中に埋れたら碧緑の瞳だけが目立つぐらいに色がない。後光のように照らされている姿に輪郭さえ溶け込んで居て余りの眩しさに取りあえず目を閉じる。現実逃避って言うのかな…。
誰しもここまで整った美形を見れば見惚れる前に視線をそらしたくなると思う。直視できない美しさは自分に劣等感を持つことすら許してくれない。
だからこそ思ったのかも。
「うん、消えてくれる?」
「酷いなぁ…、先輩気がついてるんでしょ?」
「どこから見ても外人な見た目を持つ後輩なんて知らないし?」
何処か見知った、見知らぬ相手。色と長さを変えると…見覚えあるかも。そう、思ったから目を閉じたのに、勘違いだと認めさせてくれない。
「ようこそ我が国、我が世界へ」
「冗談…でしょ?」
満面の笑みで言われたその事に、『あ…私、死んだんだ』と当たり前の様に理解した。
徐々に思い出される前世?の記憶、84歳で亡くなるまでの出来事が走馬灯のように駆け巡りある記憶にたどりついた。
「あんた本当に実行に移したの?冗談じゃなかったの?」
眩しいとか言っている場合じゃない、思わず胸ぐら掴んでガクガク揺すれば面白いぐらいに頭が揺れる。
「先輩の世界で50年、俺はおとなしく待ちましたよ?俺が告白した時に先輩が言った『来世で一緒になれればいいね』を胸にちゃんと待ちました」
「だからそれは…お断りの言葉で、そもそも来世って、…って、ここ何処なのよ」
多分私は家族に見守られながら眠るように息を引き取った。あぁ…幸せだった私の人生。優しい旦那に息子と娘。3歳年上の旦那を看取りのんびり過ごして4年、風邪をひいただけだったのにあっという間に旅立つ人生。それでも最後は息子家族、娘家族が送り出してくれたから寂しさも悲しみも無く先に行った旦那を思い瞼を閉じ………、る、瞬間、あ、居たかも。白衣を着て皆が沈痛な面持ちなのに一人少し離れて笑顔を浮かべていた誰か。
「俺、迎えに行きました。ちゃんと病室で先輩みまもってましたよ。早く俺のものにならないかな~って思いながら」
笑顔でかますストーカー発言。誰か警察呼んで下さい!なんかかなりの問題発言もしています!
「ちょっと待て、あんたのものにはなってないから!悪しからず!」
「でもこの世界にきた来たかぎり先輩の身も心も全部俺のものですよ?だって約束したでしょう?」
「この世界ってどの世界?日本じゃないの?約束なんてしてないし、身も心も全部私の物ですから!」
とりあえずは目先の確認が必要で、胸ぐら掴みながら思わずきつく締め上げていた。それにしてもこいつ色はどうした…。私が見知った後輩は、髪は染めてるライトブラウンに瞳はダークブラウンだったし肌の色は確かに白かったけど、ここまでまったく違う色素ではなかったはず。
「ねえ、なんで色が違うの。脱色?カラコン?その服なに?中世の貴族見たい、…取りあえずここが何処だか答えてもらえる?」
「先輩、元気でよかったね」
首を絞めている相手に言う台詞かそれ?っと思わず内心でつっこみを入れつつも目の前の相手が役に立たない事だけはわかった。
私は軽くパニックになって居るのだろう。
だからこそ改めて今の現状を把握しようと視界を巡らせた。
あぁ・・まったくの別世界。天蓋付ベッドで寝てたんだ、天井まで届く窓って素敵よねぇ、陽の光がまぶしすぎてなんだか涙が出てきそう。純日本人の自分にはこういった世界観は映画の中だけだったし。等と感想を持って確認すれば役立たず以外に人がいたのだとその時初めて理解した。
目があった瞬間目礼しくれるその御仁。
思わず、
「あっ・・・あの、助けてください!」
「喜んで」
「ありがとうございます。とりあえず今の状況を説明してください!」
自分でびっくりなぐらいに大声で話しかけていた。