不吉な予兆 広がる変異
シオンは旅支度する為に、村への道を歩いていた。その胸の内に、未知なる冒険への思いを宿しながら…。
「…でも、なんか実感湧かない~。本当に、俺に力あるのか?」
先ほどの天熾の姿を思い出していた。綺麗な翼…強い意志を秘めた青く澄んだ双眸…生まれ変わりと言われても、未だに実感は沸かない。まぁ、"転生者"であったとしても、魔法が使えるわけでは無いし、羽が生えたわけでも無い。
「世界を救え…か。全く見当がつかないしなぁ…」
そんな事を呟きながら、村への道を歩いていると、焦げ臭い匂いが、辺りに漂い始めた。
(…なんだ、この焦げ臭い匂い…しかも、この方角は…!まさか!?)
嫌な予感を抱えながら、走り出した。だんだん嫌な匂いが強くなってくる。小枝が無数の切傷を作るが、気にせず、さらに速度をあげる。
(急がないと…!)
ただ、その気持ちだけが頭を支配している。いつにも増して村への道のりが遠く感じる…嫌な光景が脳裏によぎる。
(…はぁはぁ…。…っ…こんなに、遠かったっけ?)
息を切らすほどに、走っても走っても村の姿が見えて来ない。実際には、いつもの半分の時間もかかっていないのだが、シオンにはユックリと時間が流れているように感じられた。