双子の僕が乙女ゲームに転生する少し前の話
初投稿です。よろしくお願いします。
キッチンに立って朝ごはんと学校に持って行くお弁当を作る。
「はぁ」
ため息がつい出てきてしまう。僕の双子の姉は、よく寝坊してしまう。まぁ百歩譲って寝坊がいいが姉の部屋に入るのは、嫌だ。
嫌だと思いながら姉の部屋のドアを開ける。
姉の部屋は、ジャングルの汚部屋と化している。
脱ぎ捨てられた服や落ちて拾うのが面倒くさくなった小物は、ジャングルの草むらに潜む罠。
積み上げらえた本タワー(漫画)は、今にも倒れそうなジャングルの木だ。
わずかな足場を辿ってベットに寝ている姉の元に行く。
「日向、起きて。朝だよ。朝ご飯できてるよ」
「ぐぅ〜…………朝ご飯!」
「あっ」
姉……日向が勢いよく起き上がったせいで本タワーが僕の方に崩れて僕が本に埋もれた。紙のいい匂いがするがめっちゃ痛い。
「おはよう、月乃…ってどうしたの!大丈夫?」
「大丈夫に見えるか?」
2人で顔を見合わせて笑う。
改めて僕は、月乃。両親は、小学生の時に事故で亡くなってから双子の姉、日向と一緒に暮らしている。
高校3年生の18歳、夏休みが終わって今日から新学期が始まる。僕と日向は、双子だからかクラスが違う。だからって寂しいわけじゃない。僕のクラスには、幼馴染の立花蓮くんがいる
「今日も美味しそうね!いつもありがとう」
「ありがとう。もう少しで、できるから待ってて」
日向は、料理をするのが苦手でご飯は、いつも僕が作ってる。
日向は、いつも「ありがとう」って言ってくれる。ちょっと嬉しい。
作り終わったご飯を持って行ってテーブルにごはんを置いて椅子に座る。
「豪華ね。私の好きなものばっかり!」
「今日は、新学期だから頑張ったんだ。お弁当も楽しみにしてて」
「そっか。お弁当も楽しみにしとくね!」
日向に喜んで欲しくて今日は、いつもより頑張った。
「いただきます!」
「いただきます」
日向は、大きい口でご飯を食べる。つまらないのか?……あ…飲み込めたみたいだ。
「おいし〜」
日向は、とろけた笑顔で喜んでくれた。
日向は、いつも美味しそうにいっぱい食べてくれる。僕は、少食で少しでいいからご飯は、日向が大体食べる。
◇◇◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
家から出て日向と学校に行く。
「日向。今日の夜ご飯、おじさんとおばさんのお店にしないか?」
「お!良いね」
おじさんとおばさんのお店は、おとうさんとおかあさんが生きていた時に初めて来た。その時のお子様ランチが美味しくてそれから常連になってる。
大人は、好きになれないけどこの人たちは、話しやすいし大好き。
1番美味しいメニューは、お子様ランチで日向がいっぱい頼むから裏メニューお子様ランチ超大盛りができた。
昔、小学校でおじさんとおばさんのお子様ランチの話を日向としてたら
「10歳にもなってまだお子様ランチ食ってんの!だせぇ!」
「おじさんとおばさんのお子様ランチ美味しいんだぞ?知らないの可哀想。」
「別にお子様ランチ食べてもいいでしょ!おじさんとおばさんの料理が美味しんだから!バカにしないでくれる?」
「おい!月乃に何言ってんだ!」
「あっ蓮くん」
クラスの子に馬鹿にされて苛ついた僕と日向が言い返して蓮くんも来て大喧嘩になって先生に怒られてた。
日向も蓮くんも悪くないのに。
「うぅ……蓮くん、巻き込んでごめんね」
「蓮なんて気にしなくて良いのよ。ほら大丈夫よ!よしよし」
「おい!そんなに月乃をグリグリ撫でんじゃねえ。首痛くなるだろ!」
「蓮に言われなくても分かるわよ!」
「……ごめんね」
「謝るんじゃねえ。俺は、怒られ慣れてるから。泣くなよ。な?」
日向も蓮くんも強くていつも弱い僕を庇ってくれたり慰めてくれたりしてくれる。
そのせいで日向と蓮くんが怒られちゃうから僕が情けなくて悲しくなる。
「…乃…月乃……月乃!」
「あ……ごめん…ぼーっとしてた」
「大丈夫?具合悪い?学校休む?」
「別に大丈夫。昔みたいに体が弱いわけじゃないから」
久しぶりの学校で日向とクラスが違うから不安になっただけだから。でも蓮くんに会えるしちゃんと勉強しないといけないから。
「よかった。それで今、ハマってるゲームがあってね《慈愛のプラネタリウム》って言うんだけどすっごく面白いの!」
「えっそれって恋愛ゲームじゃ」
「うん!恋愛物が苦手な月乃だって面白いって思うよ!」
僕は、小さい頃から本が好きで学校の休む時間は、蓮くんと喋ってるか本を読んでいるかのどっちか。
7歳に興味本位でおかあさんが持ってた本を読んだらドロドロした救われないバットエンドの愛憎劇で怖くてトラウマになった。でも本好きのプライドで最後まで読んだ。
おかあさんに本を読み終わって泣いているところを見られて「月乃くんには、早かったね」って言われて慰められた。
気持ち悪くて体調崩して小学校を1週間休んだ。
トラウマすぎて何回も悪夢に出てくるからしばらくは、おとうさんとおかあさん、日向の誰かとくっついて寝ていた。
それから恋愛系の本が苦手になった。
「小説化してるんだ。私、持ってるから読んでみてよ!絶対面白いから」
「……日向がそこまで言うなら」
本になってるなら面白いって事だから…………それに日向が面白いって言ってる……だから頑張って読んでみよう。
トラウマ克服になるかもしれないから。
学校について廊下を歩く。日向は、学校の人気者だからすごく目立つ。
「きゃー!日向先輩、かっこいい!」
「日向先輩!」
「日向先輩と月乃先輩って仲良いよね!」
「蓮先輩いないし月乃先輩に話しかけられるか?」
「日向先輩、部活に助っ人来てください!」
やっぱり日向は、人気者だ。
日向は、運動神経が良くてスポーツ万能だからよく運動部の助っ人に行ってる。
「やっぱり日向は、人気だねぇ」
「あら円香、久しぶりね」
九条円香ちゃん、日向の中学校からのお友達で良く家に遊びに来てくれる。
「月乃くんも久しぶりだねぇ。おねえちゃんクラスに連れていちゃっていぃ?」
「円香ちゃん、久しぶり。別に日向がいなくても1人で行けるから大丈夫」
「うん、ありかとぉ。今度遊びに行くよぉ」
双子だからか日向とクラスが同じになったことがない。
一番嫌なのが蓮くんと円香ちゃんと違うクラスになることだ。知り合いが2人しかいないから1人になると辛い。
「月乃、何かあったら私をすぐ呼ぶのよ?」
「ふふふ、うん…わかった。また後で」
「ええ、また後で。バイバイ、帰りは、迎えに行くから」
◇◇◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
自分の教室に行くと蓮くんがまだ来ていなかったみたいだから自分の席に座って日向に渡された本を読む。
クラスで孤立してるから
「あれ?月乃くんの読んでる本って」
「《慈愛のプラネタリウム》よね?」
「日向ちゃんがおすすめしたんじゃない?」
「なんだか嫌そうに読んでない?」
話の構成や内容は、面白い。でも主人公、お花畑すぎる気がする。自分より格上の貴族に話しかけるなんて処刑されてもおかしくない。
お相手役も婚約者って未来の結婚相手でしょう?真実の愛って言ってるけど単なる浮気だよね?
悪役もお相手役がちゃんと向き合っていれば悪いことしなくて済んだのに。
全員、阿呆で馬鹿だな。
日向には、悪いけどこう言うのものは、無理だな。僕には、理解ができない。
「珍しいな。月乃がこう言う本を読むなんて」
「あっ蓮くん、おはよう」
蓮くんは、小学2年生の時に僕のクラスに転校してきた。隣の席だったから頑張って話しかけてた。
最初の頃は、無視されたけど僕と似ている様な感じがしたから仲良くなりたくて諦めないで話しかけてた。
ある日上級生に絡まれた時に助けてくれた。その時から仲良くなった。
「この本は、日向に勧められたんだけど僕には無理だ」
「そう言うのは、ちゃんと断れよ。相変わらず押しに弱いんだから」
本を読むのは、楽しいけどやっぱり蓮くんとお話しする方がもっと楽しい。
「あっ蓮くん、腕にかすり傷してる」
「ああ、喧嘩売られたからぶっ飛ばしたんだ。その時に怪我したのか」
「蓮くん、腕出して」
カバンから医療ポーチを出して応急処置をする。
「やっぱり月乃くんって女の子より女の子だよね」
「私たちより女子力高い」
「私たちの女子力の存続が危うい」
「こう言う彼女欲しい」
「わかる!」
怪我してるところを消毒して絆創膏を貼る。
「……はい、できたよ。他に怪我ない?」
「ん、ありがとう」
「別にさぁ喧嘩してもいいけど怪我しないよう気をつけてよ」
「おう、気をつけておくわ」
蓮くんには、もっと自分を気遣ってほしいな。大事に友達だから。
◇◇◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今日は、新学期だから授業が午前中で終わる。でもお昼ごはんは、自分の教室で食べる。
蓮くんは、僕の前の席だからいつもお昼ご飯の時、椅子を僕の机にくっつけるんだよね。
「今日のお前の弁当、豪華だな」
「うん、なんだって今日は、自信作だからね。蓮くん、おかず1ついる?」
蓮くんのお昼ごはんは、いつも菓子パンだ。お弁当を作ってあげたいけど蓮くんが要らないって言われちゃった。
「良いのか?じゃあ唐揚げ1個もらうわ」
「今日のからあげは、絶対美味しいよ。ふふん」
「ドヤ顔すんなよ。……相変わらずうまいな」
いつも蓮くんにお弁当のおかずを1個、あげている。もっと食べても良いのに。
「少食だな。そんな量で持つのか?」
「大丈夫。量が多いと気持ち悪くなるから少ない方がいいの」
小さい時から体調を崩しやすかった。だから良くおとうさんとおかあさんに病院に連れて行ってもらっていた。
「そう言えばもう少しでテストだから日向と円香ちゃんを誘ってお勉強会しよう」
「そうだったな。担任がそんなこと言ってたな。勉強会、菓子焼いてくれるか?」
「うん、もちろんいいよ」
僕の幼馴染の蓮くんは、嬉しそうに笑って僕の頭を撫でた。
「部活に行くけど蓮くんもくる?」
僕の部活は、家庭科部で蓮くんは、帰宅部だ。
蓮くんは、よく家庭科部に遊びに来る。だから僕は、よく誘う。
「今日は、用事があるんだ。チッ…久しぶりに月乃に会えたのに」
「そっか、また今度遊びに来てね」
蓮くんと別れして部活に行く。
「月乃部長、朝ぶりだねぇ」
「あっ円香ちゃんこんにちは」
僕は、家庭科部の部長だ。
円香ちゃんは、部活中僕のことを月乃部長って呼んでる。あと家庭科部の副部長をしてくれてる。僕も円香ちゃんのことを円香福部長って呼ぼうかな?
でもどうして僕が部長なのかな?円香ちゃんの方が良いと思うのに。
部室の家庭科室に行き扉を開く。
「月乃部長、円香副部長、こんにちは」
「久しぶりだねぇ、全員いる様でよかったよ」
「こんにちは。今日は、クッキーを作るから」
「あ!クッキーなんですか、楽しみです!」
「クッキーに飾り付けもするよ」
部活のみんなは、クラスメイトとより話しやすい。みんな同じ趣味だし話が合うから蓮くんとお話しするの同じぐらい楽しい。でも一番楽しいのは、……日向といる時かな。
黒板にクッキーのレシピを書く。
《クッキーの作り方》
1、バターを室温に戻します
2、1に卵黄と砂糖を入れて混ぜます
3、2に小麦粉を入れて1つになるまで混ぜます
4、1つになった生地を冷蔵庫で寝かします
5、寝かした生地をクッキー型でかたどります
6、予熱したオープンでかたどった生地を焼きます
7、チョコや生クリームで飾り付けをして完成です
「部長の字って読みやすくて綺麗ですよね」
「一緒に勉強した時にノート見せてもらったけどぉ綺麗だったよぉ」
「えへへ。ありがとう。でも……日向の方が綺麗な字だと思うよ」
僕より日向の方がもっともっとすごいし努力してるから。
「部長って自己肯定感低いですよね」
「自己肯定感を姉の日向に持ってかれちゃったんだようねぇ」
「あり得ますね」
双子だけど僕は、日向とそんなに似てないけどね。特に性格がね。
「部長、ずっと気になってたんですが。部活で使うレシピって誰が作ったレシピですか?」
「僕の母と僕が作ったレシピだよ」
正確には、僕がおかあさんから料理を教わってそのレシピをいい様に改良したレシピだ。
「えっ!部長と部長のおかあさんすごい!」
「そうだよねぇ。中学の時にご馳走になったけどすごく美味しかったよぉ」
「でも円香ちゃんも一緒に作ったんだよ」
中学に上がってからすぐに円香ちゃんが家にお泊まりに来てその時に夜ご飯を一緒に作ったんだ。その時に趣味が一緒でたくさんお話をして少し仲良くなった。
僕も円香ちゃんも家庭科部志望だったから部活動でもっと仲良くなってお友達になった。
不安だった部活動は、円香ちゃんと先輩が優しくしてくれて楽しかったな。もちろん今も楽しい。
僕と円香ちゃんは、もう3年生だから部活を辞めないといけないんだよね。やだな。
◇◇◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ぐぬぬ!なんで月乃部長みたいに上手くいかないんですか!」
「百合ちゃんのクッキーも十分美味しそうだよ」
「月乃部長が優しいよ〜」
花咲百合ちゃん、僕に1番懐いてくれる後輩でお菓子作りが上手な子。よく突っ走って行っちゃうけど優しくてとっても良い子。
「百合ちゃんや、私たちの部長よ?家庭科部、不動のエースに勝てる奴いるわないよ」
「でも憧れなんだもん!」
「家庭科部にエースなんているかなぁ?」
円香ちゃんの言う通りだよ。家庭科部に運動部と違ってエースなんていないよ?
「クッキーを袋詰めして余ったクッキーは、部活時間も残ってるからお茶会で食べちゃおうかお茶は僕が入れるね」
「お茶会!やったー!」
「月乃部長が入れたお茶は美味しいからねぇ」
家庭科部で作ったお菓子が袋詰めして余った時や部活時間が残った時にお茶会をする。
僕の入れたお茶は、みんなに好評なんだ。
「部長、蓮先輩呼びますか?」
「蓮くんは用事があって帰っちゃった」
蓮くんは、たまにお茶会にも参加してくれる。
みんなのクッキーをお皿の上に置いて、淹れたてのお紅茶をテーブルに持って行く。
「今日のお紅茶はどうかな?」
「相変わらず美味しいねぇ」
「百合、部長のクッキー独り占めしないでよ!」
「独り占めしてないし!手が勝手に伸びてるだけ」
「クッキーまだあるから大丈夫だよ」
久しぶりにみんなとお茶会すると楽しいな。
日向と蓮くん、円香ちゃんと勉強会する時のお菓子、クッキーにしようかな?
「そう言えば部長って家庭科部唯一の男子ですね」
「うん、そうだねぇ。違和感ないからみんな気にしないんだよねぇ」
「学校1女子力高いと言っても過言では、ない!」
「月乃部長は日向から女子力を持っていたんだろうねぇ」
家庭科部のみんなと解散して僕と円香ちゃんと今日の部活動の内容をノートに書いている。
あ、円香ちゃんをお勉強会に誘わないと
「円香ちゃん、日向と蓮くんとお勉強会しよう。蓮くんはもう誘ったから」
「うん、良いよぉ。楽しみだねぇ」
「お勉強会にはクッキーを焼くから楽しみにしてて」
僕の友達の円香ちゃんは、満面の笑顔で喜んでくれた。
「月乃、迎えに来たよ」
「迎えが来たみたいだねぇ。私たちも解散しようかぁ」
「うん、円香ちゃん。また明日。バイバイ」
日向と帰りながらおじさんとおばさんのお店に向かう。
「久しぶりの部活だったから疲れちゃった」
「今日は、どこの部活に行ったんだ?」
「えっと…陸上部、バスケ部、テニス部に助っ人に行ったの。だからいっぱい動いてすごく疲れちゃった。はぁ〜お腹すいちゃった」
そんなに助っ人に行って日向は、すごいなぁ…僕だったらすぐに疲れて倒れちゃう。次からは、日向のお弁当の量をもっと増やした方がいいかも?
あ、忘れてたけど日向から借りた本返さないと。
「そう言えば日向…これ」
「うん…どうだった?《慈愛のプラネタリウム》」
う〜ん。やっぱり恋愛物の本は、ダメだった。ほんのちょっと吐きそうになったし僕には、真実の愛の意味も浮気する意味もよくわからなかった。
正直に言って日向に嫌われたくないし日向に嘘をつくのも僕は、嫌だし。
「………僕には、理解できなかった」
「そっか。月乃は、あんまり好きじゃなかったか」
僕たちは、双子だけど好きなものが違う。
僕が好きなのは、部屋で本を読んだりお裁縫や刺繍で小物を作ったりお料理やお菓子を作ったりすること。
日向の好きなことは、外で体を動かすスポーツや遊び。
僕と日向は、感性が似てないし違う。
日向は、たまに自分の好きなものをお勧めしてくれる。僕に合わなかったものが多いけれど前にお勧めしてくれた協力ゲームは、僕に合った。
日向と協力するのは、すごく…すごく楽しかった。
「日向、帰ったら協力ゲーム一緒にしよう」
「ええ、もちろん良いわよ!ゲームに私たち双子の絆を見せつけてあげましょう!」
日向ゲームは、機械だから意識は、ないと思うけど。でも今度のお勉強会で蓮くんと円香ちゃんに僕たちの絆を見せつけるのも良いかもね。
「あっ言うの忘れてたけど蓮くんと円香ちゃんは、もう誘ったんだけどみんなでお勉強会しない?」
「あら、良いわね。勉強会は、うちでやる?」
僕の大好きな日向は、勝気に笑った。
◇◇◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「おじさん、おばさん!こんばんは」
「こんばんは。お久しぶりです。お元気でしたか?」
「日向、月乃、久しぶりだね。いらっしゃい」
「日向ちゃんに月乃くんじゃないか。さあさあ、好きなところ座って。2人とも元気だったかい?」
おじさんとおばさんには、おとうさんとおかあさんが生きていた時からお世話になっている。
おとうさんとおかあさんが亡くなって憔悴しきって泣き続ける僕を慰めてくれたのは、日向と蓮くん、円香ちゃん、おじさんとおばさんだ。
そのおかげで僕は、立ち直ることができた。
「うん、元気だったよ!あと注文とってもいい?私、お子様ランチ超大盛り」
「僕もお子様ランチ少なめでお願いします」
お子様ランチは、量が少ないけど品数が多い。おじさんとおばさんの美味しい料理を他のメニューを頼まなくても食べれる。
お子様ランチ様様だ。作った人に尊みを覚える。
「相変わらず日向ちゃんは、食べるね。お子様ランチの超大盛りは、大人の俺らも食べられないし」
「凹まなくても大丈夫よ?私の胃袋がと・く・べ・つ・に大きいだけだから」
「俺ら、凹んでないぞ!はぁ〜逆に月乃くんは、食べなさすぎだし」
「僕の胃はそんなに多く入りません」
おじさんとおばさんのお店は、知る人が知るお店だ。初めてくるお客さんより常連のお客さんの方が多い。だから常連同士仲がいい。
昔は、この中におとうさんとおかあさんがいた。
「はい、お子様ランチ超大盛りとお子様ランチ少なめだよ」
「わぁ!美味しそう」
「ありがとうございます」
お子様ランチは、少ない。本来は、子供が食べるためのごはんなんだから当たり前だ。でもお子様ランチ超大盛りは、大食い用に作られたメニューで当然だけど少食の僕には、食べれそうにない。
久しぶりに食べるけど、どれも美味しいな。それで日向は……うん…すごい食べっぷりだ。一瞬でお子様ランチ超大盛りが消えていく。
僕の食べる速度が遅いのか日向の食べる速度が速いのかわからないけど僕が食べ終わると同時に日向も食べ終わった。
「日向ちゃんは、相変わらず見事な食べっぷりだな。こっちがお腹いっぱいになるのを通り越して気持ち悪くってきたわ」
「えへへへへ、褒めないでよ」
「褒めてねぇよ!」
やっぱり日向は、面白いな。だからこそ人が集まるのかな?
「…………ふふふ」
「つ……月乃くんが笑った!」
「月乃が笑うのそんなに珍しいの?この子、よく笑ってるけど?」
「そうじゃないって、昔に比べると笑うようになったから嬉しいんだって」
確かに昔の僕は、あまり笑わない子供だった。
おとうさんとおかあさんが死んでからもっと笑わなくなったけど蓮くんと円香ちゃんと関わっていくうちに笑うようになった。
「………………」
「月乃くんの笑顔って可愛いより綺麗だよね」
「あら?わかってるじゃない。私の月乃は、可愛いけど綺麗って言った方が正解なのよ」
「正解って日向ちゃんが決めるの?」
「ええ、だって私が1番月乃のことを想ってるわ」
「……………………………………」
「月乃くんがもっと嬉しそうに笑ってる」
常連さんたちは、大人だけどおじさんとおばさんと同じくらい好き。
「日向ちゃん、月乃くんもう9時よ。2人は、学生なんだから家に帰りなさい」
「えっ!もうそんな時間。よかった宿題なくて」
「お、宿題ないのか?」
「新学期だからまだ宿題ないんです」
「そうか!じゃあまたな」
「うんまた来るわ」
「美味しかったです。さようなら」
お会計をしておじさんとおばさんのお店を出る。
明日のお弁当何にしようかな?卵焼きにしようかな肉野菜炒めにしようかな?
「ねぇ、月乃。勉強会っていつにする?」
「土曜日とか日曜日?」
「あ!良いかもね………え?…車が」
車が勢いよく僕たちに突っ込んでくる。おかしい、信号機は、歩行者が青だったはずだ。運転手は、眠ってる!どうしよう、もう逃げられない。
「日向、危ない!」
「月乃……!」
日向を抱きしめて庇う。
はねられた衝撃で意識が消える瞬間、感じたのは、日向の温もりと匂いだった。
◇◇◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「………………ここ…どこ?」
体の痛みを我慢して起き上がる。
僕は、病院着を着ていて服の隙間から大量の包帯と湿布が見えた。
ベットのそばに点滴スタンドがあり僕の左腕と繋がっていた。
周りを見るにここは、病室のようだ。
そうだ僕は、日向と車にはねられて…日向は、どこ?どこにいる?
日向は、無事なのか?
この病室は、1人部屋ようだし日向は、違う場所にいるか?探しに行かないと!
点滴スタンドを掴んで体の痛みを無視して日向を探しに行く。
足が思うように動かない。壁と点滴スタンドを持ってなんとか歩く。
『次のニュースです。先日、高校生2人が居眠り運転の車にはねられた事件についてです』
「ああ、317号室の患者さんのニュースね」
317号室…僕が寝ていた病室の名前だ。
『車にはねられ高校生の星空日向さんが頭を強く撃ち先日死亡しました。弟の星空月乃さんは、意識が戻らない重症です』
「そうそう、確かお姉さんは、死んじゃったのよね」
「日向さんの最後の言葉は、「月乃を助けて」だったものね。素敵な姉弟愛だわ」
瞳から涙が溢れる。その場に立っていられないほどの地震が起きてるみたいだった。
日向が死んだ?…………ああ、そう。日向、死んだんだ。
じゃあ僕には、もう家族がいないってことか。
蓮くんと円香ちゃんは、ずっと僕のそばにいるわけじゃない。
僕は、ひとりぼっちになってしまう。ひとりぼっちは、嫌だ!
日向は、僕の心の支えで僕の生きる理由だった。日向が生きてるか僕も頑張って生きようって思えた。
日向がいたからお父さんとお母さんの死を受け入れることができた。
日向がもう生きていないなら僕は…僕には、生きる理由がない。
自分の病室に戻って窓を見る
ここは、3階のようだから落ちたら死ねるだろうか?この苦しみは救われるだろうか?怯えずに済むだろうか?
「日向……姉さん、今すぐ行くから」
窓を開けて頭から落ちる。落ちているからか風がの音がする。
地面に衝突する前に僕のお見舞いに来たのかな?蓮くんと目が合った。
「蓮く…ん」
頭を強く打ったからか意識が消えていく。即死までは、行かなかったのだろうか?
でも死ぬのは、そんなに怖くないな。
あ……蓮くんが僕を掴んで何か叫んでる。その隣で円香ちゃんが泣いている。
円香ちゃんもいたんだ。蓮くんの顔ちょっと怖いな。笑ってほしいな。
走馬灯が流れる。そして僕は、やっと自覚した。僕は、大人が…人が…大嫌いだったんだ。
僕と姉さんに酷いことをし続ける人が大嫌いだったんだ。
視界が暗くなっていく。
ああ……案外死ぬ時って何にも思わないんだな。
暗く何も見えない海のような場所。でも海のような寒さは、なく温もりを感じる不思議な場所。
ここで目覚めてから時間が経った。
僕は、病室の窓から落ちて自殺したはずなのに今、妙に変で居心地がいい場所にいる。
時間が悲しみを忘れさせてくれるけどお父さんとお母さんの時と違って姉さんのことは、忘れさせてくれなかった。
「〜♪……早く貴方たちに会いたいわ」
結構、ひんぱんに声が聞こえる。
この女性の声が一番多く聞こえる。いつも聞き覚えがある子守唄を歌う。
聞きすぎて聞き覚えがあると思い込むようになったんだろうか?
この暗くて居心地が良い不思議な場所は、たぶんいやほぼ確実に子宮の中だと思う。
ここが子宮内なら僕は、きっと胎児として生まれ変わったんだろう。転生は、宗教の教えで本のフィクションだと思っていた。
もしかしたら本の話は、実話かもしれないってことか。転生と本は、奥深い。是非とも前世の記憶がある人には、人生を本にしてほしい…恋愛描写がなければ僕が喜んで読もう。
でも矛盾になるかもしれないが僕の人生を描いた本は、誰にも読んでほしくないな。あまりにも情けなくかっこ悪いから。
うん、死んで胎児になったことは、良いとして女性の声が「貴方たち」と言ったこと、たまに誰かとぶつかることから僕は、双子なのだろう。
僕にとって姉さんは、唯一無二だ。僕は、新しい双子のきょうだいを姉さんのように愛せるだろうか不安だ。
人が嫌いな僕は、今世の家族を愛せるだろうか。
◇◇◇・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
僕たちは、今世の母親から産まれ産声をあげた。
今世でも僕は、双子の弟らしい。今世の片割れは、兄のようだ。姉だったら仲良くなる確率が上がって愛せてかもしれない。
でも僕は、誰かを姉さんに重ねたくない。
「産まれたの?私たちの可愛い子たちが」
お腹の中で散々聞いた……優しい声だ。僕の今世の母親なのだろう。新生児は、目がぼんやりしていて見えないはずだが何故か僕は、目が見えた。
ここは、見るからに地球では、無さそうだ。現代の地球にないものがある。ここは、中世の西洋のような世界だ。
僕の今世の母親は、外国人みたいで綺麗な人で僕の隣には、僕の双子の兄がいる。
「はい、奥様。元気な双子の兄君と妹君です」
は?僕は、弟じゃなくて妹…とんだ冗談は、やめてくれ……いいや出産という冗談を言える空気じゃないな。
女ぽいって前世からバカにされたけどまさか本当女性になるとは、誰が想像できるか。
外から走る音がする。
すごい足の速さだ…姉さんと同じくらい足が速いかも。
ドアが「バァン」と大きい音を立てて開いて男性が入ってきた。
足を上げてるし蹴って開けたのかな?すごい音だったから相当強い力で蹴ったのだと思う。
よくドアが壊れなかったな。
「フルール、産まれたのか?私たちの子が」
「はい、旦那様。頑張った甲斐があって可愛い双子が産まれました」
母親が「旦那様」と言ってたし2人の会話を聞く限り、ドアを蹴って開けた男性が僕の今世の父親だろう。
そして父親が呼んでいたフルールは、母親の名前だろう。フランス語で花と言う意味だ…確かに母親は、名前負けしない花みたいな人だ。
月乃は、名前負けしていた。僕に綺麗で美しい月は、似合わない。僕は、夜を照らす神秘の光には、なれない。
明るかったのが急に暗くなってきた。
「皆既日食?あら急に何でかしら?」
皆既日食、この世界でもあったのか。予兆がないのになるものかと思ったがここは、違う世界だ。法則が違ってもおかしくは、ない。
僕は、前世から星や星座が好きで本もいっぱい持ってた。
お父さんとお母さんが生きていた時は、よく望遠鏡を持って星空観察に連れて行ってくれた。姉さんは、途中でいつも寝ていたけど。
理科の星の単元は、成績がいつもより良かった。
「うぅうわぁぁぁぁん」
急に双子の兄が泣き出した。
どうしたのだろうか?と悠長に考えていたら突然、首の後ろが冷たくなった。
冷たくて凍傷してしまいそうだ。体に冷たさが真冬の氷水に使っているように広がって寒い。
痛くて涙が溢れる。死んだ時もこんなに痛くなかったのに
「うぅうわぁぁぁぁん」
あ……視界が暗くなる。死んだ時と同じ感覚だ。生まれたばかりなのに死んでしまうのだろうか。
『可愛い子。今度は、大好きな人と幸せになってね』
『おやすみなさい。今は、ゆっくり休んでね』
続きは、検討中です。




