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第3話 『三分で語れるほど世界は浅くない』

「さて、わしもおぬしに聞きたいことが山ほどあったんじゃ」


「何だ? 俺はこのあと非常に重要な用事が控えてるからなるべく手短にすませてくれると助かる」


「それはおぬし次第ということになるの」


 またも境内にやってきた、というより連れ戻された俺に対し目の前の少女は上から目線で尋ねてきた。


「おぬしも知っての通りわしはさっき起きたばかり。はっきりいって今、世界がどうなっているかなど全く分からん。じゃからおぬしの知っている情報を全部吐け」


「それぐらい義務教育受けてれば分かるだろ」


「分からんから聞いておるんじゃ。さあ、早う言え」


 反論しても時間の無駄だなこれは。


 そんなわけでとりあえず今の年と日付、ここが地球という星の日本という国であることを話していたんだが……。


 なんと、それすらも知らないような素振りを見せるのでマジでなんなんだこの子、とか思いながら、そこからは適当になんやかんやで文明が発達したこと、そして現代に至り人々は働いて金稼いで頑張って暮らしている、みたいなことをカップ麺が作れるくらいの時間で話してやった。


 というより俺の知識が浅薄すぎてそれぐらいしか話せなかった。


「これで満足か?」


「全く。説明ヘタクソじゃの」


 否定はしないがそんなストレートに言わんでもいいだろ。


 3分で語れるほどこの世は浅くはないってことだ。


「まあよい。つまりここで何かしようとすれば他の人間のために尽くさねばならんと」


「そういうこった」


「おぬしはどう人に尽くしておるんじゃ」


「俺はまだ高校生だから働いてはいない。将来働くために学校で勉強してんの」


「さっきも言っとったがその学校とはなんじゃ? そこにいけばこの世のことを知ることが出来るのか?」


「5教科プラスα学ぶだけでそんな大層なところではないと思うが……まあ当たらずとも遠からずといったところだな」


 ソラテラスは少し考えこむ素振りを見せる。


「学校、のう……」


「まああれだ、とりあえず分からないことがあったら市役所とかどっかの相談センターみたいなところに行けばいいんじゃないか? 相談ぐらいなら聞いてくれるだろ」


 俺も行ったことはないから分からないが、この後に重要な用事を控えているため面倒事を頼りになる公務員のお兄さん、お姉さん方に丸投げする。


 変人を丸投げしてしまって相談役の人すまん。


 するとやっとソラテラスは首を縦にうむうむ、と三回振って納得したように頷いた。


「よし、じゃあその市役所? とかに行ってみるのじゃ」


「今は開いてないだろうから明日になってから行けばいい。ここを下っていくと街に出るから、まあ、あとは駅前にある地図見たり、通行人に聞いたりしてくれ」


「ふむ、ではしばらく待つことにするかの」


 これでひと段落か? ここから出られるのか?


「あのー、それで俺は帰ってもよろしいですかね?」


「うむ。ご苦労じゃった。礼を言おう」


 ついに謎の神様ごっこが終わった。


 こんな年にもなって二人で何やってんだか。


「じゃあ」


 そんなわけで俺はついに神社から出ることができた。


 長いしめちゃくちゃ疲れた。


 もうこんなことは勘弁してほしいね。


 そしてもはや希望も何もない用事を済ませるべく自転車に跨ろうとすると、またも爆発音のような音と揺れが俺を襲った。

 

 まさかまた爆薬でも爆発させやがったのかあいつ。


 ……面倒だけど、一応見てみるか。


 またまた階段を上り神社、そして奥の方へと歩みを進める。


 するとさっきまで無様にも転がっていた岩が何ということか、元の位置に戻っていた。


 それに探してみたがあいつの姿がない。


「…………」


 俺は何も見なかったことにして全速力でその場から立ち去り学校へと向かった。

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