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第35話 『最強の神器』

「俺がキーパーソンだと? なんでだよ」

 

 そう問い返すと、スサノオが若干悔しそうに語りだす。


「正直俺と筋肉の神じゃオロチは封印できない。封印にはクソ姉貴の力も必要だ。力の全てを使えばやつの進行を止められるがあくまで止められるだけ。決定打をうてない。天羽々斬があればあれ自体強力な力を持っているからオロチを弱らせて封印できたんだが……それがないとなるとあの剣以上の力を持つ神にオロチを何とかしてもらうしかない」


 一拍おいてから、スサノオは話を続ける。


「あの剣の力以上の神となるとこの辺りではクソ姉貴しかいない。だが俺が聞いた話によると、肝心のあいつはここ数日またあの岩に引きこもりやがっているらしい。そしてこれがまた厄介なことにあの岩、外からじゃ絶対に開かないようになってる。そこでお前の出番だ」


 またソラが引き籠った? 


 イベント時に不機嫌になったせいではなく、ゴールデンウィークがとてつもなく暇だったから外部からのノイズが届かない岩に引きこもって思う存分寝たかったということだよな? 


 というかそうであってくれ。


 それよりも俺の出番ということはどういうことだろうか。


 「明らかに俺の出る幕じゃないだろ。お前らでも開かない岩をどうやって動かすんだよ。神の世界がなくなった時でさえソラが気づかないくらいだからどうせ外の音も聞こえないんだろ? どうしようもないじゃないか」


 するとここまで沈黙を貫いていた筋肉の神様が話し出す。


「あの、福井さんって一度だけソラテラスさんと夢の中でお話したことがありますよね?」


「え……なんで知っているんですか?」


「えーと……萌えの神様のおうちにお二人が来られてからこちらで色々とお二人について調べてさせてもらったんですけど、その時に福井さんとソラテラスさんが夢で会ったという形跡を見つけたって感じです」


「色々調べさせてもらった……え? それってどういうことですか?」


「あっ、でももう私たちに協力していただけるということなので必要のないことです。忘れてください」


 いや、忘れるも何も俺たちのこと調べて何しようとしていたんだこの人。


 見た目は怖いが中身は純情乙女だと思っていたから安心していたが、もしかして筋肉の神様って相当恐ろしい神様なのでは?


「えと、それで話を戻すとそれが非常に重要でして――」


 それについて聞き出したかったのだが、話をもとに戻されてしまった。


 まあ、触らぬ神に祟りなしというからここは触れないでおくのが吉か。


「夢で会ったというのは電話で例えるなら連絡先を知っているという状態なんです。僕たち三人は一度もソラテラスさんと夢の中で会ったことがないのでソラテラスさんの夢には入れないんですが福井さんなら入ることができるんです。そして夢の中でソラテラスさんを起こして岩を開けてもらうことができるというわけです」


「なるほど……」


 連絡先を知らなければ電話を掛けることもできない。

 ここでは夢の中には入ることができないということか。


 「ソラテラスさんと夢の中で会ったのは福井さんだけだそうなので福井さんに頼むしかないんです。お願いします!」


 ソラと他に夢の中で話した奴はいないのかと思い聞いてみたが、筋肉の神様曰くソラは俺以外と会った形跡はないそうだ。


 というわけで俺があいつを起こすしかないそうなんだが大きな問題が一つある。


「それに福井さんはソラテラスさんと仲がいいとお聞きしました。そういう方の頼みならソラテラスさんも起きてくれるのではないかな、と思ったんですけど……」


 問題はそこだ。


 今、俺たちかなり気まずい感じになっていて明日、じゃない今日どうやって話そうか悩んでいたんだから俺があいつを起こしに行ったところで素直に起きてくれるかどうか正直分からない。


 下手すれば余計変な空気になるかもしれないし。


 そうするしか方法はないのだろうか? 他に何とかできないのか、と言おうと思ったんだが物事はそううまくいかない。


「ヤマァァァ!!!」


 再び大きな叫び声が響き渡るとともにオロチが木をメキメキとなぎ倒しながら街の方に向かってきやがった。


「悠長に話してる時間はないようだな。各自準備しておけよ!」


 一気に俺たちの間にも緊張が走る。


 俺は萌えの神様に促されてソラの神社に向かうべく自転車に乗せられる。

 筋肉の神様はオロチの叫びにおびえつつ、「大丈夫……大丈夫……」とか言いながら手に人の字を書いて飲み込んでいる。


 そしてスサノオは懐に手を入れた。


「剣がなくてもこれさえあればてめえみたいなデカブツを止めることぐらい造作もない。この神器の力を食らえ」


 神器だと? あの名前がやたら長い剣以外にもそういうものがあるのか。


 スサノオの顔を見る限りかなりその神器とやらに信頼を寄せているようだ。


 はたしてどんな強力な神器を出してくるのか? と思っているとスサノオはスッとその神器を取り出して、


「この『乙女のハートドキドキ! ラブストライク!』に出てくるわが女神、まほうガールまほのもりめるんちゃんのラブラブエボリューションステッキをな!」


「…………」


 はっきり言って不安しかない。

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