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第34話 『叫び声は名を表す』

 交通ルールなどガン無視して無我夢中で自転車を漕ぎ続ける。


 裏山はヤマタノオロチが吐いた炎のせいで山火事が起こり、やつの体重に耐えかねた木が何本もなぎ倒されている。


 あまりに現実味がなくいまだに俺は夢の中にいるのではないか、とさえ思ってはいたのだがさっき頬をつねると痛かったので夢ではないらしい。


 とにかく萌えの神様に言われたとおりにスサノオのアパートに行かなければ!


 出せる限界の速度でアパートに急行するとアパート前の空き地にスサノオと萌えの神様に加えて春とはいえそんな恰好で寒くないのか? パンツ一丁の筋肉の神様がいた。


「遅い!」


 声を荒げるスサノオに対し、俺はあえて平然と答えた。


「これでも随分早く来たと思うんだがな。とりあえず状況を説明してくれ。なんだあの怪物は」


「さっきユニ子ちゃんが連絡してくれたとは思うがあいつはヤマタノオロチだ。俺が昔あの山に封印した化け物なんだが、今になって復活しやがった」


 あの山に封印した化け物? どこかで聞いたような話だな。


 というかスサノオはさも当然のように封印したと言うが……


「俺はてっきりスサノオはヤマタノオロチを封印ではなく退治したと思っていたんだが。神話かなんかで読んだ記憶がある」


「あー……それは……」


 歯切れが悪くなり俺から視線を外すスサノオ。


「スサノオさん。ここは正直に話した方が……」


「僕もそう思います……」


 萌えの神様と筋肉の神様はスサノオに事情を話すよう説得する。


「なんだ? 何かあるなら早く言ってくれ」


 するとスサノオは諦めたように肩を落として俯きながらボソッと呟いた。


「……せなかったんだよ……」


「すまん、もう少し大きい声で言ってくれ」


「倒せなかったんだよ! ヤマタノオロチを! 昔戦ったとき一人でいけるだろ、とか思ってたのに意外に強かったんだよあのデカブツ! でもそれじゃなんかカッコ悪いだろ!? その時の彼女にも『一人で楽勝だから。行ってくるぜ』とか言った手前格好つかないし! だからとりあえず封印しておいて倒したことにしておいたんだよ!」


「……え?」


 相当な理由があるかと思ったんだが真実とは明らかになれば意外にこんなものだ。


 てか、どれだけ彼女の前で見え張りたいんだよ!


 それで見え張ったはいいものの結局嘘がバレるわ、ヤマタノオロチは復活するわ……なんか彼女のことになるとこいつとことん不運だな。


「クソおお!!! なんで今頃封印解けてんだよ! ふざけんなあのデブ野郎!」


 スサノオはやり場のない怒りをヤマタノオロチにぶつける。


 するとそれに呼応するかのようにヤマタノオロチが「ヤマァァァ!!!」とテレビの音量をマックスにしたような大声で叫び散らかす。


「そこに関しては色々突っ込みたいところだがそんな時間もないようだし、とりあえずなんであれが復活したのか聞かせてくれ」


 スサノオに尋ねると代わりに萌えの神様が少し怯えながらおどおどと説明を始めた。


「あくまで私の推測ですが、ヤマタノオロチの封印が解けた理由は多分ソラテラスさんが関係しているんじゃないでしょうか。ソラテラスさんはものすごい力を持った神様です。そんなすごい神様がここ一か月ほどこの近辺にいましたのでオロチさんが反応してしまって封印が解けてしまったんじゃないかと思います」


「そんなことあるんですか?」


「普通の神様ならまだしも最高神が目覚めてしまったのでそういう可能性もゼロではないかな、と。あくまで私の推測なんですけど」


 それを聞くとスサノオは「あいつのせいかよ……」とボソッと呟いてため息をついた。


 しかしもうどうしようもないと判断したのか、気持ちを切り替えたような面持ちで俺たち三人に向かって話し出す。


「復活してしまったものはしょうがない。とりあえずオロチはもう一度封印するしかないが……現状それはかなり厳しいな」


「なんでだよ。倒せはできなかったものの封印は出来たんだろ? 今も昔みたくできるんじゃないのか?」


「あの時は天羽々斬を持っていたからな。あれがあれば俺一人だけでも封印は出来るんだが……なにせ今はただの破片だしな。修理が終わるのも何日か先だし」


 ここであの時剣をぶっ壊したことが仇になるとは。

 まさかここで弊害が現れるとは思いもしなかった。


 だが今のスサノオの言葉を聞いている限り一縷の望みはあるのではないか。


「お前一人だけなら、と言ったな。だったら一人だけじゃなければなんとかできなくもないということか?」


「可能性は高くないがな、このまま黙ってあいつに潰されるよりはマシだ」


 そう言ってスサノオは作戦を話し出したが、その作戦の内容はこうだ。


 まずここら一帯に結界を張るらしいんだが、それはもう張ってあるとのこと。


 さっきから校庭に閉じ込められた時のような嫌な雰囲気を感じていたが、それはもうすでにここが結界内だったかららしい。


 結界の中は現実世界とは違う世界、つまりは別世界ということだからどれだけオロチが暴れまわったところで現実世界には影響はないようなんだが、スサノオも無限に結界を張れるわけはなくこの街と隣の街の境までしか張れなかったという。


 つまりその結界の境をオロチが突破すると……それはもう悲惨なことになる。


 そんな最悪な事態を防ぐために次の作戦として俺と萌えの神様、スサノオと筋肉の神様の二手に別れてそれぞれ別の任務を遂行するということだ。


 スサノオと筋肉の神様コンビは結界内にオロチを留めつつ再度封印するためにスサノオはオロチに攻撃、筋肉の神様は驚くことにオロチを裏山から動き回らないようにするべく押し返すらしいのだが……。


「この作戦に置いてお前がキーパーソンだ。福井武夫」

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