第10話 『面倒くさいことは先延ばしにしがち』
その後、痛みにもだえ苦しむ俺とソラは制裁について口論になってしまったのだが、かなりの大声で言い合ってしまったため気づけば周りから摂氏マイナス18度ほどの冷たい視線を向けられるとともに静かに怒りの沸点に達した司書の人に追い出される羽目になった。
そのおかげでソラのご機嫌はひどく傾いてしまっている。
「おぬしのせいでこっぴどく怒られたではないか! 今まであんなに怒られたことないのに……どう責任取ってくれるんじゃ!?」
「責任も何もお前が時代にそぐわない鉄拳制裁なんてするからだろ。潔く受け入れろ」
「ふん、おぬしが調べるの忘れるからじゃろ。仕方のないことだったんじゃ」
「それにしても暴力はダメだろ。猛省しろ」
「なんじゃなんじゃ。みんなして寄ってたかってわしを叱って。わしは神なのに……最高神なのに……」
見るからにしょんぼりするソラ。
お互いに相手を牽制し合っていたのに二人とも騒ぐとはなんとも情けないな。
しかも結局収穫ナシ。
俺はほぼ調べてないも同然だしソラは頑張ってたみたいだが、神の世界に関する情報は手に入らなかったみたいだ。
分かったのはこの辺に伝わる神の世界に関係のない神話とか、この辺のどこかの山に眠ってるとかいわれている化け物の話とかそんな関係ない話ばかりだったらしい。
完全な無駄足じゃないか、とも思ったが奈良と楽しく話せたので無駄足ではないな、うん。
「しかし情報が全然得られなかったのは痛いのう。また明日も行くか」
追い出された次の日にまた行くってすごいメンタルだな。
てか明日も行くのかよ、明日土曜日だぞ疲れ溜まってんだぞ帰らせてくれ。
というわけで明日の図書館遠征は遠慮してもらうべく話を進めることにする。
「明日行ってもたかが知れてんだろ。今日何も分からなかったんだから」
「サボっとったおぬしにそう言う資格はない」
それに関しては異議はない。
「でも図書館がダメならなんか別の方法考えるしかないよな。どうする? 何か案でもあるか? ちなみに俺は自信を持っていえるがない」
「そこに自信を持たないでほしいのう……。しかし確かにその通りじゃ。どこにあるかも分からん書物を探すのも一苦労じゃし、わしらが知りたいことがそこに書いてあるとも限らん。ふむ……」
悪魔的な証明の半分は解けたんだがその先からどうにも進むことができない数学者のように悩むソラ。
これはいきなり行き詰ってるな。
「じゃあとりあえず俺はネットを使って調べて他の方法を思いついたらお前に言う。お前も何か思いついたら俺に言ってくれ。今はひとまずそれしかないだろ」
するとソラも納得したのか、
「まあそれしかないかの。誰かに助けを求めるにしてもわしが神だと分かったら騒ぎになる危険もあるわけじゃし」
そういうことで一旦今日は解散、というか解散するしかなかったのでまた明日以降頑張っていこーということになった。
別れ際もソラはぶつぶつ何か言いながら帰っていったが、あいつが妙案を思いつくことを祈ろう。
あと全然関係ないがあいつどこに住んでんの? あの岩の中?
まあそれはさておき俺はというと何も思いつかないし、考えてすらいない。
早く帰ることができて休みさえあればオールオッケー。
なんだか問題を先延ばしにしている気がしないでもないがそれは全く問題ではない。
なぜならすべて未来の俺が解決してくれていると心の底から信じているから。
丸投げして悪いが言わせてもらおう。
未来の俺、頼んだぜ。




