悪役聖女セラフィナの秘密(1600字)
# 悪役聖女セラフィナの秘密
「ふん、また怪我をして。本当に情けない連中ね」
銀髪をなびかせながら、セラフィナ・ヴァン・ローゼンベルクは冷たく言い放った。彼女の瞳は氷のように冷たく、口元には常に皮肉めいた笑みを浮かべている。王国屈指の名門貴族の聖女でありながら、その性格の悪さは宮廷でも有名だった。
「でも、セラ、君がいないと僕たちは本当に困る」
パーティーのリーダーである剣士のガレスが苦笑いを浮かべながら言った。彼の腕には深い傷があり、血が滲んでいる。
「当然でしょう?この私がいなければ、あなたたちなんてとっくに死んでいるわ」
セラフィナは鼻を鳴らしながら、杖を振りかざした。途端に温かな光が溢れ、ガレスの傷が見る見るうちに癒えていく。それは普通の回復魔法の三倍はある威力だった。
「うわあ、今日も相変わらず過剰なヒールだね…」
盗賊のリックが呟いた。彼も先ほどまで瀕死の重傷を負っていたが、今では新品同様に回復している。
「文句があるなら治療を拒否すればいいでしょう?」
「いや、そういうわけじゃ…」
実際のところ、セラフィナの回復魔法は異常なほど強力だった。通常の聖職者なら軽傷を癒すのがやっとなのに、彼女は致命傷すら一瞬で完治させてしまう。それどころか、一度は確実に死んだはずの仲間を何度も蘇生させているのだ。
「ところで、セラフィナ様」
魔法使いのエリナが恐る恐る口を開いた。
「なぜ私たちのような平民のパーティーに参加されているのですか?お嬢様なら、もっと格式高い騎士団に入ることもできるでしょうに」
セラフィナの表情が一瞬強張った。
「…別に、退屈しのぎよ。たまたま目についた雑魚パーティーで遊んでいるだけ」
しかし、その答えに嘘があることを、仲間たちは薄々感づいていた。
真実は、セラフィナ自身も完全には理解していなかった。彼女は生まれながらにして強大な聖なる力を持っていたが、同時に呪われた運命も背負っていた。その力は「他者への無償の愛」によってのみ発動するのだ。
つまり、彼女がツンデレで高飛車な態度を取りながらも、心の奥底では仲間たちを深く愛しているからこそ、あの異常なまでの回復力を発揮できるのである。
「まあ、理由はどうあれ、君がいてくれて助かるよ」
ガレスが温かく微笑んだ。
「べ、別にあなたたちのためじゃないわよ!ただ、死なれると面倒だから治しているだけ!」
顔を真っ赤にして言い返すセラフィナ。しかし、彼女の杖からは相変わらず温かな光が溢れ続けている。
その夜、野営地で一人警戒にあたっているセラフィナの元に、ガレスがやってきた。
「眠れないのか?」
「…あなたこそ。傷は大丈夫なの?」
「おかげさまで完璧だよ。君の魔法のおかげでね」
沈黙が流れた後、ガレスが静かに口を開いた。
「セラ、君が本当はとても優しい人だということ、僕たちは知っているよ」
「な、何を言って…」
「悪役聖女を演じる必要なんてない。君はもう十分に僕たちの仲間だから」
セラフィナの瞳に、初めて涙が浮かんだ。
「…馬鹿ね。私が優しいなんて、とんでもない勘違いよ」
しかし、その声は震えていた。
翌朝、パーティーは新たなダンジョンへと向かった。いつものようにセラフィナは毒舌を吐き、仲間たちはそれに苦笑いで応える。
だが、戦闘が始まると同時に、彼女の本当の姿が現れる。仲間を守るために惜しみなく力を注ぎ、誰よりも必死に戦う悪役聖女の姿が。
「死ぬんじゃないわよ、馬鹿者ども!」
その叫び声には、確かに愛が込められていた。
これでも良いんですけど、もっとツンデレ要素を味わいたい(笑)と思ったので、2400字バージョンでも書いて貰いましたw